自然観察大学室内講習会(第2回)を開催しました。
2003年2月15日、自然観察大学第2回室内講習会を開催しました。今回はクモとアブラムシがテーマです。第1回の講習会と同様、お二人の先生の日頃からの経験をまじえた解説に、単なる名前覚えに終らない、面白い多くの話を聞くことができました。
講習会の様子

 クモのくらしとかたち
 身近にいながら気味が悪いと嫌われることの多いクモも、多様な生活を送っているおもしろい生き物であることが、多くの写真とともに紹介されました。その中から、2,3紹介しましょう。
浅間先生 講演中の浅間茂先生
●コガネグモ
コガネグモは環境の良い草原を好む、美しいクモです。なぜ、草原を好むかというと、餌になる虫が多くいるためです。少し前まではよくみられたのですが、条件の良い草原が減ってきた現在、その数は激減しています。
背中には黄色と黒の特徴的な模様があります。黄色と黒の模様というとハチの模様を思い出しますが、これらは警戒色あるいは警告色と呼ばれるもので、他の生き物に対して危険だとか、まずい生き物という宣言をしていると言われています。
こがねぐも
X字状のかくれ帯上にいるコガネグモ成体
 
●ギンメッキゴミグモ
見沼観察会で観察されたギンメッキゴミグモです。金ヶ崎の斜面林の周りに張られた鉄線網をかけていた銀色のクモです。クモは普通、頭を下にしているのですが、ギンメッキゴミグモは頭を上にして網に止まっています。
ぎんめっきごみぐも
頭を上にして止まるギンメッキゴミグモ
●擬  態
肉食であるクモにもは鳥などの天敵がいます。また、餌を取るために背景に姿を溶け込まるように擬態をしています。ゴミグモは網に脱皮殻などを付けて、自らの姿を巧みに消しています。コケオニグモは地衣類上にいるのですが、ご覧のとおり背景によく溶け込んでいます。キハダカニグモは名前のように木の肌にいるとその姿がよくわかりません。トリノフンダマシは名前のように鳥のフンによく似ています。
一方、餌となる虫に近づくために背景に溶け込む擬態をするクモもいます。ワカバグモは名前のとおり、餌を待ち伏せるために若葉にそっくりな色をしています。
擬態 ゴミグモ
ゴミに擬態したゴミグモ
擬態 コケオニグモ
地衣類上のコケオニグモ
擬態 キハダカニグモ
木の胴部で見つけたキハダカニグモ
擬態 わかばぐも
若葉上のワカバグモ

 アブラムシのくらしとかたち
 休憩の後は、見沼観察会でその単純にして複雑な生活史がたいへんおもしろかったという声の多かったアブラムシの講習会です。アブラムシのいろいろな話があった中から2,3紹介しましょう。
松本先生講演中の松本先生
●セイタカアワダチソウヒゲナガアブラムシ
1990年代初頭、千葉県立中央博物館からの問い合わせで調べてみると、セイタカアワダチソウに日本国内では見つかっていないアブラムシがいることがわかりました。セイタカアワダチソウは北アメリカ原産の植物ですが,原産地では数種類のアブラムシが寄生していることが報告されていて、その中のどれか、または新種なのか論議されました。最終的に精査の結果、原産地のセイタカアワダチソウに見られるアブラムシと同一種ということがわかり、日本新記録のアブラムシとなったわけです。その後、調査をした結果、鹿児島県から福島県まで広く分布していることがわかりました。いわゆる侵入種ですが、おそらく戦後、セイタカアワダチソウについて国内に入ってきたものと思われます。和名がついてなかったのでセイタカアワダチソウヒゲナガアブラムシとしました。アブラムシの和名は、寄主植物名に続けて、形態的特徴そして最後にアブラムシと続けることが一般的です。そのため、セイタカアワダチソウヒゲナガブラムシのように長い和名がついてしまうのです。
アブラムシ無翅型
セイタカアワダチソウヒゲナガアブラムシの無翅型
アブラムシ有翅型
産子中のセイタカアワダチソウヒゲナガアブラムシ有翅型
●アリと一緒
アブラムシを別名でアリマキもと言います。漢字では蟻の牧、つまりのアリの牧場という意味です。アリがアブラムシの出す甘露を占有するために、アブラムシを飼っているように見えたのでしょう。クチナガオオアブラムシの仲間は特に長い口吻(こうふん)を寄主植物に差しこんでいるため、天敵からうまく逃れることはできません。しかし、アリがいると天敵が寄ってきません。つまりアリはアブラムシのボディガードとして働いていることになります。しかし、種によっては、アリが甘露を出さなくなったアブラムシやアブラムシが増えすぎると、アリがアブラムシを食べてしまう例も見つかっています。自然の出来事はそう単純ではないようです。
アブラムシとアリ
ヨモギヒゲナガアブラムシとトビイロケアリ
甘露をもらうアリ
イチゴネアブラムシから甘露をもらうトビイロシワアリ
●虫こぶをつくる
アブラムシの中には寄主植物に虫こぶをつくるものがいます。虫こぶをつくる虫はハエなどいくつかいますが、アブラムシもそのひとつです。アブラムシが出すある種の物質によって、寄主の細胞が膨れてできます。虫こぶの中はかっこうの巣となっています。寄主植物のさまざまな部位にできます。サクラの葉のヘリ、エゴノキのシュート、ケヤキの葉の表面などに見られます。
虫こぶ ヌルデシロアブラムシ
ヌルデにできた虫こぶ(ヌルデミミフシ)(左)と虫こぶの形成者(ヌルデシロアブラムシ)(右)
サクラにできる虫こぶ サクラにできる虫こぶ
サクラにできる2種の虫こぶ:サクラハチジミフシ(形成者はサクラコブアブラムシ)(左)とサクラトサカフシ(右)(形成者はサクラフシアブラムシ)
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2002年度 室内講習会
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