2002年  第1回
2002年5月18日(土)、自然観察大学〔第1回〕がさいたま市見沼田んぼで開催されました。
前日からの雨が当日の集合時まで続き、参加者ならびに事務局を不安にさせましたが、出発時には雨も上がり、その後は一度も降られることなく観察を終えることができました。
挨拶 駅に集まる参加者
観察内容は雑草・植物、野鳥、昆虫などの多岐にわたり、観察ポイント以外にもさまざまな種類の生物・植物をみつけることができました。それらの名前を知り、覚えていくことももちろん重要ですが、自然観察大学では生きもの形やくらしを考えていくことを重点においてみました。また今回参加者の多くが教育関係者ということもあり、実際に野外で観察指導することを想定した解説をしていただきました。ここで観察内容の一部をご紹介します。
解説を聞く 解説を聞く
 常緑樹と落葉樹
一般に常緑樹は葉の寿命が長く、春が落葉の季節です。反対に落葉樹は葉の寿命が短く、秋には落葉してしまうため、夏緑樹ともいわれています。
しらかし ムクノキ
常緑樹(シラカシ)と落葉樹(ムクノキ)
常緑樹は葉の寿命が長いため、葉に濃淡のばらつきがあります。出たばかりの若い葉は淡い緑色をしていますが、成熟した葉は濃い緑色です。反対に落葉樹は樹全体が同じように淡い色から濃い色に変わっていきます。
しらかしの葉 ムクノキの葉
常緑樹の葉(シラカシ)と落葉樹の葉(ムクノキ)
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 高木と低木(斜面林にて)
植物はその高さによって生活する階層が異なります。低木は低木どうし、高木は高木どうしと空間を分け合っているのです。
斜面林 クヌギ アオキ
斜面林の高木(クヌギ)と低木(アオキ)
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 シロダモの葉は3年分あった
常緑樹の葉の寿命は1年とは限りません。シロダモの枝で見てみました。今年のびた枝、昨年の枝、一昨年の枝というのが分かりますが、どれにも葉がついています。一昨年の葉はとても濃い色で汚れも目立ちます。
しろだも
シロダモの葉(3年分)
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 アブラムシ (セイタカアワダチソウヒゲナガアブラムシ)
セイタカアワダチソウやギシギシなど身近な植物を注意してみると意外なほどたくさんのアブラムシがいて、よくみるとさまざまなくらしがあることが分かります。親と子、ハネ(翅)の有無、多くの植物に無差別につくアブラムシと寄生する植物を選ぶ種など、観察ポイントをご指導いただきました。
アブラムシ
セイタカアワダチソウについたセイタカアワダチソウヒゲナガアブラムシ(親と子)
アブラムシが寄生した植物で増えると、宿主となる植物が枯れてしまいます。そうするとコロニー(群れ)内にはハネ(翅)を持ったアブラムシ(分散型)が登場し、新天地を求め外へと脱出していくのです。新しい宿主にたどり着いたアブラムシは翅をもたない子虫を産み、どんどんと増殖していきます。これを増殖型といいます。
アブラムシ無翅 アブラムシ有翅
セイタカアワダチソウヒゲナガアブラムシ(羽のないものとあるもの)
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 鳥の巣箱
観察ルートに巣箱がありましたが、残念ながら巣箱の中に野鳥は入っていませんでした。巣穴の大きさに2種類ありましたが、このちがいによって入る野鳥の種類が異なり、大きい方はムクドリなど、小さい方にはシジュウカラなどが入ります。巣箱は3mくらいの近接する位置に取り付けられていましたが、鳥にも縄張りがあるため巣箱の間隔は10〜15m以上離したほうがいいとのことです。
しじゅうから
巣箱 ムクドリ シジュウカラ
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 さまざまなクモの巣

クモは網を作るものが6割、作らないものが4割います。網の形もさまざまで、ゴミグモのような放射状の巣を作るものもあれば、クサグモのように棚網を作るものもあります。観察時は雨上がりということもあり、クモが保全のために巣を壊してしまっていましたが、奇しくもその保全方法もまたクモによって異なることが観察できました。

クモは環境によって生息する種類が異なります。クサグモやコクサグモは木々の枝の間に、ゴミグモやオニグモは生垣の間や木柵の間などに巣を作り、ズグロオニグモは橋の欄干など風通しのよい場所に巣を作ります。作る場所によって捕獲される餌もまた当然異なりますが、クモの巣が多い場所とはすなわち、そこに餌となる昆虫も多く集まるということでもあるのです。

おにぐも
オニグモ
くさぐもの巣 ごみぐもの巣
クサグモの巣
糸は粘らず、巣に着地した虫に襲いかかります。
  ゴミグモの巣
中央に食べかすを集め、その中でじっとして外敵から自分の姿を隠しています。
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内容的には予想を上回る充実した観察会でしたが、当初の予定を1時間ほどオーバーしてしまい、参加者の方には大変ご迷惑をお掛けしてしまいました。
数々の反省を踏まえ、第2回はさらに充実したものになるよう、スタッフ一同努めてまいりたいと思います。

2002年度 野外観察会
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