自然観察大学 室内講習会(第2回)を開催しました。
2004年2月15日、自然観察大学の第2回室内講習会を開催いたしました。
ここに講演内容の一部をご紹介いたします。

第2回室内講習会 概要
2004年2月15日(日)13:00〜16:30
テーマ1 野鳥のくらしとかたち −カラス−(講師:唐沢孝一)
テーマ2 植物の方言名(講師:川名興)
テーマ3 雑草写真の撮り方(講師:廣田伸七)
野鳥のくらしとかたち −カラス−
  講演中の唐沢孝一先生
都市鳥、とくにカラスの第一人者として高名な唐沢先生の、とても興味深く楽しい講演でした。
ニュースなどで話題になった、線路に置石をするカラスについては、なぜそんなことをするのか諸説ふんぷんだそうです。線路に石をぶつけてその音を楽しんでいるという説や、線路に敷かれた石の隙間に餌を隠す際に、どけた石を線路に積み上げているという説。カラスが“音を楽しむ”というのは意外でしたが、講習会では滑り台で滑って遊ぶ映像や、仰向けになってゲレンデを滑り降りるカラスの写真が登場し、カラスにも「おもしろがる」感覚があるのではないかと考えられていることが分かりました。
ハシブトガラス
植物の方言名
  講演中の川名興先生
川名先生は植物を中心とした生物全般の方言を長年研究されています。失われつつある方言名の、興味深い講演でした。
植物の方言の由来は、形によるものや、それを用いた遊びによるものなどに分類されます(下表参照)。例えばイタドリの方言名であるスカンポとは、食べると酸っぱいことから命名されており、ヒガンバナのカマワレとは、釜が割れるほどの毒であることに由来します。
千葉県内の主な植物方言のほか、千葉県特有のオジイ方言や南西諸島の方言についても講演していただきました。
植物方言数のチャンピオン
植物方言数と命名の領域   松田ほか(1972) 『日本植物方言集(草本類編)』 八坂書房より 川名(1999)に加筆
  種名 全国 千葉 千葉県内の主な方言 領域
1 イタドリ 529 9 スカンポ、ウシノスカッボ 遊び(食)
2 ヒガンバナ 418 4 カマワレ、ジャンボンバナ 民俗
3 カタバミ 223 6 ショッペショッペ 遊び
4 オキナグサ 221 0 (ウバノアタマ、ウバノシラガ) (形態など)
5 サルトリイバラ 218 5 カゴバラ、マンジュッパ 民俗
6 オオバコ 208 10 ゲーロッパ、スモートリグサ 遊び
7 スミレ 201 4 スモートリグサ 遊び
8 スイバ 189 3 スカッポ 遊び(食)
9 ツユクサ 185 5 ガチャガチャバナ、ホタルグサ 遊び
10 ギシギシ 165 2 ウマノスカッポ 遊び(食)
*栗田子郎(1998)『ヒガンバナの博物誌』によると、松江幸雄『日本のひがんばな』に1090の呼び名がある。
   
雑草写真の撮り方
  講演中の廣田伸七(全農教会長)
全農教発行の日本原色雑草図鑑や帰化植物写真図鑑などで長年撮影に携わった廣田が、図鑑用写真という特殊な撮影のノウハウを紹介しました。
図鑑用写真の撮り方5つのポイント
1. 美人を探せ(正常な草を探す)
 
雑草は、やせた土地などでは姿が貧弱になり、他の草などと密生する場合は徒長ぎみになり、その草本来の姿とは変わった形になります。撮影の際は、その草の特徴がよく分かる美しい姿のものを探して撮影することが大切です。
カワラハリコ
密生しているもの   1株だけで生育しているもの
2. 八頭身がすき(草全体の姿を写す)
 
多くの図鑑の写真は花や実を強調したものが多いのですが、それでは草全体の形や、葉の形やつき方、茎の伸び方等の特徴的なことが分かりません。草全体の姿や雰囲気が分かるよう表現する必要があります。
フランスギク
花のみを強調したもの   葉・茎・花の様子がすべて分かるよう表現したもの
3. ライバルは消せ(目的の草だけを撮る)
 
雑草は単独で生えることは少なく、他の雑草と一緒に生えています。写真の中に他の雑草が入っていると、それを知らない人が見た場合は、どちらが調べている雑草なのかが分かりません。撮影する際には、他の草を取り除いて1株だけを残すか、単独で生えているものを探して撮影するようにします。
オオアブノメ
オオアブノメの手前にヒロハイヌノヒゲが写っている   周囲の草を取り除いて1株だけにしたもの
4. バックは単純がいい(目的の草を浮き立たせる)
 
雑然と生育した雑草をそのままの状態で撮影すると、目的の草を撮影したつもりでも、背景の雑草がうるさくて目的の草がよく分からなくなります。背景を単純にするよう、裸地の水田や単独で生育している個体を探し、裸地や川の水面、もしくは人工的にバックを作って撮影するとよいでしょう。
コヌカグサ
雑然と生育した状態を撮影したもの   バックを単純にしたもの
5. エクボを探せ(草の特徴を表現する)
 
イヌホタルイとクログワイのようにどちらも円柱状の茎をしているものは、茎だけを見ただけでは区別がつきません。両者の違いを写真で分からせるには、クログワイの茎基部にある膜質の鞘を表現する必要があります(イヌホタルイにはこれがない)。写真だけでその草だと分かる写真を撮影するには、種の特徴を知り、それを積極的に表現する必要がありますが、そのためにはまず撮影者自身が各々の草の特徴やポイントを知っている必要があります。
イヌホタルイ(左)とクログワイ(右)
上の写真からは両者の区別がつかない
ここがポイント!   ここがポイント!
2003年度 室内講習会
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