(第2回)を開催しました。
2006年2月12日、自然観察大学では2005年度第2回室内講習会を開催しました。
「鳥たちの夜の生態」
―夜鳥生態入門−
鳥は夜、どこでどのように眠るのか。木の枝に止まって眠るのになぜ落ちないのか。カラスやムクドリなどはなぜ大群で集団ねぐらをとるのだろうか。わかっているようでいて意外と分かっていない夜の鳥たちの生態について、非常におもしろみのあるエピソードを交えて説明いただきました。おかげさまでとても楽しい講演の時間になりました。唐沢先生の講演受けてから、都会にいる普段なにげなく飛んでいる鳥たちをいろんな思いで見上げるようになりました。
以下に講演内容の一部をご紹介します。
講演中の唐沢先生
(1)鳥の眠りの特徴はなにか
昆虫や魚類にはまぶたがないので、外見上は睡眠と覚醒の区分がはっきりしない。観察しにくい。それに対し、哺乳類や鳥類では姿勢やしぐさから眠っている状態かどうかがある程度観察できる。また、眠りにはレム睡眠とノンレム睡眠とがあるが、鳥の場合はレム睡眠(筋肉の緊張が失われる)が少ないので高所から落ちにくい。足の構造も枝から落下しないよう体を支えている。カモメなどでは、左右の脳半球を交互に眠らせ、脳全体が眠りに入らないようにしている。
眠りに入るヒドリガモ
(撮影
平野伸明)
(2)どこで眠るのか
枝葉の茂みの中、巣箱や木の穴など(シジュウカラ)、橋げたやビルの外壁(ハクセキレイ)、水辺や水面など(カモ類)、雪の中(ライチョウ)など、種類によっていろいろである。アマツバメ類では空中を飛翔しながら短時間の眠りをとるという。
シジュウカラ:天然の樹洞を繁殖のための巣や
夜のねぐらとして利用する
(「野鳥博士入門」より)
(3)単独か群れか
シジュウカラやキツツキ類では単独で夜を過ごす(単独ねぐら)。カラスやハクセキレイ、ムクドリ、スズメなどでは集団ねぐらをとる(集団ねぐら)。ただし、スズメのように繁殖に参加しない個体群では集団ねぐらを、繁殖する縄張りをもっている個体では単独ねぐらをとるなど、同じ種でも一定ではない。集団でねぐらをとることにより、防寒や防衛にも役立っている。コリンウズラではコンパクトリングといって頭を外側に向けて円陣をつくって寝るため、どの方向から天敵が接近しても察知することができる。
集団で移動するムクドリ
(「野鳥博士入門」より)
(4)ハクセキレイの集団ねぐらの事例
東京やその周辺の都市環境では、ビルの外壁の看板やネオン、窓のサッシ戸などに群れをなしてねぐらをとることが知られている。新宿駅のルミネや渋谷駅近くの建物などについて紹介した。また、冬季、工場やゴミ焼却炉から発生する余熱を利用した事例等も取り上げた。
銀行の看板で夜を過ごすハクセキレイ
(撮影
唐沢孝一)
詳しくは下記を参考にしてください。
■唐沢孝一著『ネオン街に眠る都会の鳥たち』(朝日新聞社)
■唐沢孝一著『校庭の野鳥』(全国農村教育協会)p.36-37(「鳥たちの夜」)
■唐沢孝一著『野鳥博士入門』(全国農村教育協会)p.44-45(「ねぐらを調べる」)
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「昆虫のくらしとかたち」
―翅−
昆虫類は身を守るため、食料を確保するためなどそれぞれのくらしに合わせて適応し、繁栄しています。
今回はその中から翅に焦点を当て、昆虫がどのようにくらしとかたちを適応させているのかをお話いただきました。
山崎先生お手製の紙で作る翅模型も配布していただき、参加者のみなさまにお土産としてお持ち帰りいただきました。先生のたくさんの経験と知識を写真と一緒にダイレクトに伝えていただき、未知の世界を見るようなとても新鮮な思いのする講演となりました。
以下に講演内容の一部をご紹介します。
講演中の山崎先生
翅の適応の一例
(1)ケラの例
ケラは柔らかい土を左右に押して掘り進む。柔らかい翅を扇子状にたたみ体も折れ曲がりやすく、トンネル内の生活に適応している。他にキクイムシ、アリ、ジガバチ、糞コガネなども小空間を押し広げたり、穴を掘り進んだりする。
ケラ
(撮影
山崎秀雄)
(2)オオヒラタシデムシの例
オオヒラタシデムシは地表徘徊性。体は薄く、落葉の間などの隙間を歩く。
ミミズ・アオムシ・ネズミなどの死骸を食べる。後翅は普段先端方向に3つに折りたたんでいる。
オオヒラタシデムシ(右側は前翅をはずした状態。後翅がたたまれ、格納されているのがわかる)
(撮影
山崎秀雄)
(3)エンマムシの例
エンマムシは主に動物の軟化腐敗物に生じたウジを捕食する。ゲル状の中に入るため水生昆虫と同じように密閉性がよい。腐敗物を探して飛ぶため後翅が発達している。
エンマムシとエンマムシの後翅(右)
(撮影
山崎秀雄)
昆虫類の中で前翅の変化の著しい甲虫類。翅が硬いだけでなく、頭部や胸部なども硬いことが甲虫と呼ばれる理由である。全身を硬くして体の保護、防水などに役立てる。
翅と体を硬くしたため生活圏が拡大し、昆虫類の中でも一番種類数が多くなったのだろう。
(4)トンボの例
トンボ目は翅をひろげたままか、後方に合わせる。いつでも飛行でき、早く飛ぶために適応しているが、開いたままの翅は破損しやすく、隙間などには入りにくい。
ミヤマアカネ
(写真提供
全国農村教育協会)
(5)バッタの例
バッタ類は後足で跳ね上がり、すぐに飛べる。その上前翅が硬いのでかじが取りやすく急降下、急旋回ができる。後翅は前翅より面積が大きく扇状にたたまれる。
ショウリョウバッタ
(撮影
山崎秀雄)
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2005年度 室内講習会
第1回の報告
第2回の報告