2005年
第1回
2005年5月15日(日)
場所:さいたま市見沼たんぼ
2005年5月15日(日)、埼玉県さいたま市の見沼田んぼにて、今年も自然観察大学がはじまりました。雨模様の天気にもかかわらず、今回は過去最高の参加者を記録致しました。講師陣、スタッフとも嬉しい悲鳴をあげております。観察内容は植物・野鳥・昆虫など多岐にわたり、本観察会の目的である「形を見る、くらしを考える、それから名前に近づく」をもとに、生き物をいろいろな側面から観察できたように思います。ここでは当日の模様を、一部御紹介しましょう。
観察会当日に見ることができた生き物のリスト
植物
● 草本
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アコウグンバイ
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カキネガラシ
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グンバイナズナ
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アゼナルコ
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エナシヒゴクサ
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ヒゴクサ
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マスクサ
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ヤワラスゲ
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オオスズメノカタビラ
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カズノコグサ
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カモジグサ
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カラスムギ
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コバンソウ
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カスマグサ
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カラスノエンドウ
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アメリカフウロ
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イタドリ
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カントウタンポポ
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セイタカアワダチソウ
● 木本
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アカシデ
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イヌシデ
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カシワ
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コナラ
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エノキ
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ケヤキ
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マサキ
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マユミ
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アカメガシワ
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アカメヤナギ
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エゴノキ
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シロダモ
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トネリコ
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ヌルデ
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キヅタ
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サルトリイバラ
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コノテガシワ
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ミズキ
昆虫
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クリオオアブラムシ(シラカシの小枝)
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ソラマメヒゲナガアブラムシ
(カラスノエンドウの茎上部)
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ケヤキヒトスジワタムシ(ケヤキの虫こぶ)
(当日の地図の記載はケヤキヒトスジタマワタムシと誤っておりました。訂正致します。)
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ワタアブラムシ
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マメアブラムシ
(カラスノエンドウの茎上部)
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マルカメムシ
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オジロアシナガゾウムシ
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ナナホシテントウ
(成虫・幼虫)
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オオスズメバチ
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コアシナガバチ(雌・巣)
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フタモンアシナガバチ(雌・巣)
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ニホンミツバチ(ハチ・巣)
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ゴマダラチョウ
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クロハネシロヒゲナガ
クモ
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オニグモ
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ギンメッキゴミグモ
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ゴミグモ
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ズグロオニグモ
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オオヒメグモ
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クサグモ
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ジャバラハエトリ
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ネコハエトリ
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ネコハグモ
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ハナグモ
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ヒラタグモ
鳥
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オオタカ
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チョウゲンボウ
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オオヨシキリ
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カワラヒワ
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シジュウカラ
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スズメ
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ツバメ
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ハシブトガラス
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ハシボソガラス
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ハクセキレイ
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ヒバリ
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ヒヨドリ
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ムクドリ
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カルガモ
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カワウ
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キジバト
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コサギ
植物の名前
「カシワ」と「柏」
ポイントの一番目に大きなカシワの木がありました。柏餅の葉の木です。コース途中に、アカメガシワも多く見られました。カシワはブナ科、アカメガシワはトウダイグサ科で両者は近縁ではありません。食べ物を包んで蒸した、大きな葉を持つ木がカシワだったのではないでしょうか。つまり「炊ぐ(かしぐ)葉」です。ホオノキやオオタニワタリにも、古くはカシワの名があったようです。また伊豆大島ではサルトリイバラをカシャンバとも呼ぶそうですが、西日本ではその葉を柏餅の葉のように使うことが、広く行なわれているようです。アシスタントの久保田さんには、愛知県で作られた銘菓、“三喜羅(サンキラ)”(サルトリイバラの別名、サンキライによる)という、サルトリイバラで包まれた餅をご持参いただきました。すぐ近くの畑にはコノテガシワが植栽されていましたが、漢字の「柏」はこのヒノキ科のコノテガシワのなかまを指します。植物の名前はややこしいですね。
鳥のくらし
集合場所の駅前ロータリー、タバコ屋の軒先にツバメの巣がありました。人目の多い場所に巣をつくれば、カラスなどの外敵から身を守りやすくなるのでしょうか。長い歴史の中で、人を利用した営巣のしかたを身に付けてきたようです。今ではかつてツバメがどのような場所に営巣していたのか、分からないそうです。
川沿いのヨシ群落でさえずる、複数の鳥が観察できました。草原性の鳥は天敵に発見されやすいため、地味で目立たない姿をしているようです。その代わりに、存在を示すため種特有のさえずりが進化してきたのでしょう。今回観察できたオオヨシキリ・ヒバリも同様です。オオヨシキリは、雄が先に日本に渡ってきてなわばりを宣言し、後からやってくる雌に「ギョギョシ、ギョギョシ」と特有のさえずりで求愛をします。声のよしあしも雌に選ばれる秘訣です。
かわったかたちの虫
クロハネシロヒゲナガ
全長(体長?)1.5cmほどの小さな蛾で、幼虫はオオスズメノカタビラやホソムギを食草とするそうです。体よりも長い触角を持ち、私たちから見ればかなり邪魔そうに見えます。この長さにはどんな理由があるのでしょうか。雌は雄に比べ触角は短く、もしかしたら求愛の際に一番長い触角の雄がモテているのかも。きれいで派手なチョウに比べ、地味で目立たない蛾はあまり関心を持つ人も少なく、生態も不明なものが多いそうです。どなたかじっくり観察してみませんか。
クロハネシロヒゲナガ♀(左)と♂(右)
(ガの場合の大きさは、開張=展翅した時の両翅と体の幅です。体の長さでしたら体長です。…分野ごとに決まった言い方があります。専門用語ですが、やわらかく言えば業界用語です。)
生き物同士のつながり
どんな生き物も必ず他の種との関わり合いの中で生きています。今回はカラスノエンドウをめぐる生き物のつながりを観察しました。
アブラムシ
カラスノエンドウの茎の先には光沢を持った黒色のマメアブラムシと、黄緑色で頭部と胸部が黒色のソラマメヒゲナガアブラムシが見られました。この季節のアブラムシは雌ばかりの単為生殖で、しかも卵胎生です。その雌たちが次々に幼虫を生んで急速に増えます。様々な大きさの個体がいるのはそのためです。親と幼虫の見分け方は、「幼虫を産んでいるものが親」だそうです。アブラムシには寄主植物の種類にこだわる「こだわり派」と、ほとんどおかまいなしの「なんでも派」がいます。
アブラムシを食べる虫
アブラムシの集まっている近くには、ナナホシテントウの幼虫や成虫がよく見つかります。ナナホシテントウは幼虫、成虫ともアブラムシを捕食します。他にアブラムシの天敵としてクサカゲロウ、ハナアブの幼虫、クモ、アブラムシの体に卵を産み付ける寄生蜂などがいます。アブラムシのことを英語でan ant cow(アリの乳牛)ともいいます。ありにとっては乳牛でしょうか。ナナホシテントウやクサカゲロウ幼虫には、肉牛ということになりそうです。
テントウムシの幼虫
クサカゲロウの幼虫
カラスノエンドウとアリ
カラスノエンドウには花外蜜腺(花以外の部分にある蜜腺のこと)があり、アリはそこに分泌される蜜をなめに来ます。蜜を報酬として与えることでアリを引きつけ害虫を排除させる、という説があります。しかしアリはアブラムシからも蜜(甘露)をもらい、アブラムシを捕食者から保護しているようにも見えます。カラスノエンドウにとって、アブラムシは害虫なのに・・・おかしなことになりますね。
生き物のくらしやそのつながりは、あらゆる面から観察し考えなくてはなりません。奥の深い世界ですね。この話は「校庭のクモ・ダニ・アブラムシ」、「校庭の生き物ウォッチング」で詳しく紹介しています。
今回参加されたkinbayashiさんのホームページに、第1回目の模様を御紹介いただきました。
ありがとうございました。
あわせてこちらもご覧ください。
http://eranthis.com/
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