(第1回)を開催しました。  

2007年12月16日(日)に自然観察大学の室内講習会を開催いたしました。
「昆虫発生学入門:鈴木信夫先生(日本女子体育大学)
「きのこ観察入門:根田仁先生(森林総合研究所)」と2つのテーマで行いました。

「昆虫発生学入門」では、精子・卵の形成、受精、卵割、胚葉性、各胚葉から形成される器官−脳・幼虫眼・筋肉・心臓など−、孵化までの一連の流れを鈴木先生に解説して頂きました。
「きのこは観察入門」では、「きのこはカビ(菌類)の仲間」から始まり「きのこの一生〜胞子で子孫を増やす」、「動物に食べられ胞子を運んでもらう」、「きのこは何を食べているのか」といったようなきのこの生態の話を、後半は自然界におけるきのこの働きについて根田先生より解説して頂きました。

まず、ほんの一部ですが鈴木先生の講義からご紹介致します。

『昆虫発生学入門 受精から孵化まで』
 卵の中で何が起こっているのか? 

鈴木信夫先生
昆虫発生学とはどのような学問なのでしょうか? サブタイトル通り、卵内での受精から孵化までの胚発生の過程を明らかにする学問です(孵化した幼虫が成虫になるまでは後胚発生といいます)。そして、その成果から、昆虫の進化・系統を考察するのを比較発生学といいます。
専門的な分野ですが、その研究成果は、昆虫の進化系統を研究するうえで大変重要になります。
講義中の鈴木先生 “おまけ”で沖縄を採集旅行したときの
昆虫・植物のスライドショーを行ってくれました。
毛翅目 鱗翅目
* この写真はモンシロチョウの鱗粉です。
ガとトビケラは一見よく似ているので、両種並べると「“ガ”ではないか!」と思うかもしれません。が、電子顕微鏡で翅を覗くと、左は毛が生えている、右はうろこ状になっているのがわかります。その翅の形状から、左はトビケラの仲間(毛翅目)、右はガやチョウの仲間(鱗翅目)だとわかります。毛と鱗で大きな差異は無い、ということで両種は近い仲間だと言われています。では、発生は?と比べてみると、系統が反映された初期発生が見られます。
図1 図2 図3
図の引用文献
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『きのこ観察入門 きのこはどのような生物か?』

根田仁先生
この資料は外生菌根をつくる高等植物リストです。
森林生態に詳しい人はお気づきになると思いますが、このリストにある属は全て森林の優占樹種(属)です。きのこと共生し、外生菌根をつくる植物(樹木)をみると、森林の優占樹ばかりです。菌根無しで繁栄する樹木はいません。そのおもしろい例にスギがあげられます。
スギは外生菌根をつくりません。人間があちこち植えるので日本中で見られますが、自然林の中で通常は優占種にはなれません。スギ科の多くの属は、1属1種で、それぞれの分布域も狭く、絶滅危惧種といってしまっても良いのではないでしょうか?
植物リスト
菌根のはたらき
根菌1 根菌2 根菌3
菌根は、きのこにとっても、植物にとっても、メリットがある。
環境の良くない尾根筋や海岸にマツが生息できるのは、菌根を形成して、きのこの助けがあるからなのです。
きのこの視点で自然を見てみよう
きのこ
きのこ
講義中の根田先生 根田先生の講義をもっと知りたい!という方は、
「きのこ博士入門/根田仁著・井沢正名写真をどうぞ。
きのこのことがわかります。
(本文中、根田先生が思わぬところに出現していますよ。)
 

2007年度 室内講習会
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