自然観察大学 室内講習会(第2回)を開催しました。  

今回は2008年2月に行われました室内講習会のご報告です。唐沢先生のサギ類の採餌方法、川名先生の植物観察のお話しです。両先生のお話を参考に野外に出てみると、また面白い発見があるかもしれませんね。では、ほんの一部ですがご紹介致します。

『サギ類の多彩な採餌テクニック』
 サギ類の生態を探る 

唐沢孝一 副学長
講演中の唐沢先生
この日は、最近の鳥の話題紹介からはじまりました。
唐沢先生が手に持っているのは、参加者のSさんが持参した写真です。
1.サギ類の特徴
サギ類は、コウノトリ目サギ科に分類され、世界に約60種、日本では19種が確認されています。小さな頭と長く真っ直ぐな嘴に長い首。そして長い足(脚)が特徴です。また、胸と脇に粉綿羽という粉状にポロポロと取れる羽があり、それを足の指(中趾(ちゅうし)の扁平でくし状の爪)でこすり取り、体にまぶして魚の粘りなどの汚れを体につけない仕組みがあります。
コサギの目
コサギ
サギ類は前方がよく見えるように目から嘴にかけて羽がありません。視野が大変広く後方も見え、前方は両眼視です。黄色は地肌の色で,繁殖期になるとこの部分が色づきます。
2.サギ類の色彩と大きさ
サギ類は、中〜大型で集団生活を(にぎやかに?)おくる白いシラサギ類と、小型で(静かに?)単独行動をする有色のサギ類がいます。
シラサギ類は、コサギ・チュウサギ・ダイサギ(・アマサギ)など、有色のサギ類(私は色サギと呼んでいます)はヨシゴイ・オオヨシゴイ・ササゴイ・ゴイサギなどがいます。
シラサギ類の白色は自然界では大変目立つのですが体を大きくし、集団をつくることで天敵を防ぎます。
色サギは、日中は身を隠して休み、暗くなってから単独で活動をします。また、その体色が保護色や擬態となり、森林やヨシ原などでの単独の生活に適しています。
これらのことなどからサギ類は、体色は目立たない色から目立つ色(白色)へ、大きさも小から大型へと進化していったと考えられます(中村一恵 1994)
ダイサギ ダイサギ
参加者Sさんのダイサギの写真です。
Sさんは東京都の小学校の先生。2月の3日間、職員室の前の池の金魚を狙って、ダイサギが連日やってきたそうです。赤い魚を食べつくしたら、姿も見えなくなったとか。
ダイサギは大きいサギの意味。大型のサギです。
3.サギ類の多彩な採餌法 
さて、サギ類は、時には人をも利用して餌をとり、カラスにも負けない知恵の持ち主です。サギ類ざっと挙げただけでも12種類の採餌方法が挙げられます。
「待ち伏せ」「忍び足」「ホバリング」「追い出し・足ゆすり」「足さぐり」「追いかけ・ダッシュ」「波紋」「疑似餌・投げ餌」「ネオンや街灯の灯を利用」「翼かざし」「飛び込み」「人や他の鳥の行動を利用する」という漁法です。 
これらの漁法はサギ類の「嘴・目・首・足などの体の構造」「食性の広さ」「留鳥であり、四季折々の獲物を捕食する必要性」から、知性のあるサギ類は多彩な漁法を編み出したのだと考えられます。
コサギ コサギ
コサギ
足ゆすり漁法。水底につけた足を激しく振動させ、魚やザリガニなどを追い出します。
<担当より>
今回、あえてサギ類の多彩な採餌法の内容の紹介を簡単にしました。サギ類の多様な生態という事実の面白さがあるのですが、そこに唐沢節がプラスされると面白さが倍増、文字にしてしまうのがもったいないと思ったからです。ぜひ、皆さん、一度唐沢先生の生トークをお聞きすることをお奨めいたします!
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『植物観察入門』
―私の小さな発見―

川名興 先生
植物観察、ちょっと難しく言うとフェノロジー調査。フェノロジーとは、植物季節といい「いつ芽が出た、花が咲いた、葉が落ちた」などを観察、記録します。今回、自分がフェノロジー調査をしていてびっくりすること、不思議に思うこと、発見したことについて紹介したいと思います。
講演中の川名先生
ヤツデの葉柄のつき方を解説中の川名先生。
この画像から「一年でどれだけ伸びて、葉を何枚出したか」「何年分の葉か」が、わかります。
「トウジイは落葉樹だよねえ」と落ち葉を掃いている人に言われました。
トウジイとは、千葉県富津あたりでの「マテバシイ」の呼び名です。あなたが、近所の人にそう話しかけられたらどう答えますか?(と、突如、川名先生は参加者の方に問いかけ、その答えで講義を進めていきます。どんな質問が繰り出されるのか、会場は不思議な緊張感に包まれました。)
落葉樹と常緑樹について小学生に聞くと「一年中葉がある」のが常緑樹で、冬に葉がないのが落葉樹と答えます。けれども、マテバシイの下にたくさんの落ち葉があり、掃いている人がいる。どういうことなのでしょうか?
簡単にいうと葉の寿命が一年以上のものを常緑樹、一年以内のものを落葉樹といい、常緑樹も葉が落ちます。そこで私は、葉の寿命はどのくらいなのかを調べるために、春に伸びた枝や葉に印をつけて観察していきます。この写真は雄花と一年目の果実です。図鑑などにマテバシイの種子(ドングリ)は翌年の秋に成熟する、と書いてありますが、こうやって観察をしていくと、それが本当だとわかりました。
マテバシイの芽吹き マテバシイの芽吹き
マテバシイの芽吹き
川名先生は、近所の生垣のマテバシイの観察をはじめたら、剪定されてしまったとか。
マテバシイの雄花 マテバシイの雄花
マテバシイ(雄花)
マテバシイの実
マテバシイの実(一年目)
<担当より>
この後も川名先生は参加者へ質問を続け、会場を巻き込みながら話をしていきました。
今回取り上げた植物は、ヤツデ、タブノキ、シロダモとヤブニッケイ、エノシマキブシ、ツバキとサザンカ、スイカズラ、トベラ、ボタンボウフウ、ワダン、ヤマユリ、オニツルボ、ハマウド、ヤブラン、ハリギリやカラスザンショウ などです。いつ思わぬ視点からの質問が飛んでくるのかわからず、川名先生の話しを楽しく聞きながらも油断ができない講習会でした。
川名先生が講義中「フェノロジー調査で発見したことは、既に知られていることも多いのですが、自分で観察して発見していくのは、とても刺激的です。」と言われていたのが印象的でした。参加者の方の中にもフェノロジー調査を行っている方々がいらっしゃいました。皆さん、御自分で観察する面白さをご存知なのですね。
今回の講習会も多くの方にご参加いただき、ありがとうございました。
「HPを見て、一度参加してみたかった」という秋田県の方や長野県からご参加頂いた方もおり、うれしいかぎりです。これからも皆様が喜んで頂ける「自然観察大学」を運営してゆきたいと思いますので、よろしくお願い致します。

2007年度 室内講習会
第1回の報告 第2回の報告   ページトップに戻る↑