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生物同士の関わりに注目した観察手法 |
野外授業や自然観察会などでの観察手法のポイント
○生物同士が関わっている現場を意識して探し,じっくり観察する。
○事前解説は最小限に留め,自分自身の目でしっかり観察してもらう。 |
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漠然とフィールドを見てまわるのではなく,生物間の関係を見つけることを意識して観ると,それまで見過ごしていたものに気付けます。指導者は最初から答えを教え込むのではなく,参加者が自分で気付き,発見できるような工夫をして,参加者に発見する喜びや楽しさをより一層感じてもらえるようにすることが大切だとのことです。
生物同士の関わりを観る方法の展開例を2つ紹介していただきました。 |
展開例1「生物同士の関わりを見つけよう」 |
図のような穴埋め形式のプリントを用意し,観察コースを歩きながら,参加者各自で観察したもの同士の関わりを記録してもらうという方法です。生物同士の関わりを意識して探してもらえると同時に,多くの人の目で観察するので,様々な情報が集まります。
今回の講演では,クサフジ(マメ科)の花に来ている3種類の虫(ヒゲナガハナバチ・クマバチ・イチモンジセセリ)の写真を使って,生物同士の関わりを観る疑似体験をさせてもらいました。 |
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どの虫も花の蜜を吸い,花粉を運ぶように見えますが,よく観ると,そうではない関係も見えてきます。ヒゲナガハナバチは花を押し開いて蜜を吸っています。花の中から現れた雄しべ・雌しべの先端がハチの体に接触しており,このハチが花粉媒介に役立つ存在であることがわかります。一方,クマバチは花の元のところに外から鋭い短刀のような口を突き刺し,イチモンジセセリは長いストロー状の口を差し込んで蜜を吸っており,いずれも花粉媒介には役立っていません。花を訪れる虫が必ず花粉を運ぶとは限らないのですね。 |
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展開例2「発見! 生き物たちのネットワーク」 |
「校庭の生き物ウォッチング」の巻末に紹介されている実習の実施例を紹介していただきました。地図に示された観察場所に行って,指定されたテーマの観察を行うものです。
指導者が多人数を相手に一斉に説明するやり方に比べ,少人数に分かれて,間近からじっくり観察してもらえるというメリットがあるそうです。その際,対象をスケッチしてもらうことが,よく観察してもらうための手段として非常に有効だとのことでした。生物同士の関わりを観る観察テーマの好例を参考資料として示していただきました(表)。 |
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オオキンケイギクに来る虫の観察 |
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オオキンケイギクの花に来ていたハナアブ |
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フィールドサインを手がかりとしてたどる生き物同士の関わり |
糞やペリット,食痕・食べ残しなどから食物連鎖をたどることができます。また,植物の種子が動物に食べられて散布される様子がわかることもあります。 |
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モズのペリットです。いったん呑み込んだ食物の中の,消化できない骨などがまとめて吐き戻されたものをペリットと呼ぶそうです。 |
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洗って余分なものを取り除いてみたら,脊椎動物(おそらくカエル)の骨やケラの前脚が出てきました。 |
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写真はキツネとノウサギの食う食われるの関係をあらわしたものです。
枝にはノウサギがかじった痕があり,枝に紐でつながれたケースの中にはノウサギの毛や骨のかけらが混ざったキツネの糞が。生物間のつながりの見えない糸を見せる小さな工夫です。枝の樹皮をウサギがかじり→ウサギをキツネが食べ→キツネの糞が土に還り,植物が利用するというつながりが実感できました。
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食物連鎖の糸 |
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秋に採取したタヌキの糞にはヒサカキやカクレミノの種子が大量に含まれていました。鳥や獣は果実を餌として利用し,植物はそうした動物を種子散布者として利用しています。
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生物の形や色を手がかりとしてたどる生き物同士の関わり |
生物同士が相互に影響を与え合い,絶妙な対応関係ができあがってきたという共進化の視点を踏まえながら観察すると,いろいろな発見があります。花と送粉者との関係はその好例です。
キバナアキギリ(シソ科アキギリ属Salvia)の送粉者は主にトラマルハナバチです。ハチが花に潜り込むと,雄しべが下りてきて,背中に葯がぺたんとつく仕掛けが見事です。一方,ハナバチ類のからだのつくりにも花の蜜を吸い,花粉を運ぶのに適した特徴があります。
園芸用に栽培されている外国産の植物の花の特徴から,原産地での送粉者を推理してみることも大変興味深いというお話もありました。たとえば中南米産のサルビアの仲間では,主にハチドリがその役割を担っています。中安先生はインターネットの検索を駆使してイメージ通りの画像を見つけ出しては楽しんでおり,その現場をご自分の目で直接観てみたいというのが夢だそうです。 |
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キバナアキギリの花の蜜を吸うトラマルハナバチ |
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ハナバチ類の体のつくり
(オオスズメバチは比較のために示したカリバチの仲間) |
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大きく3つの観点から生き物同士の関わりについてのお話をしていただきました。先生ご自身も生き物同士の関わりが見えてくるにつれて,ますます自然のすごさがわかってくるとおっしゃっていましたが,とても奥行きと広がりのあるテーマだと感じました。たくさんの写真や実物をみて,参加者の皆さんも楽しんでいるご様子でした。
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皆さん、楽しんでいただけたでしょうか?
次の室内講習会は約一年後となりますが、野外観察会の準備が始まっております。スタッフ一同お待ちしておりますので、こちらもよろしくお願いいたします。 |