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■雑草のイメージ |
雑草というと厄介者、排除すべきものという意識が根強くありますが、それも雑という言葉から与えられるイメージがあるというのも大きな理由です。しかし、雑という字は
雑 ← 雜 ← 襍 と変化し、衣+集で「いろいろな衣を身に着けている」という意味を表しています。よって、雑草は草を蔑視した言葉ではなく、いろいろな多様性を持っている草という解釈をするべきであると思います。
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■雑草の生育環境を考えよう |
雑草の生育環境条件として、光、温度、土壌といった一般的な環境条件と人の作用(刈り取り、踏みつけ、掘り起こしなど)があげられます。
そこで、今回は主に人の作用が、街なかの雑草のくらしぶりに影響している様子を観察しました。
植え込みや花壇のまわり、植マス空間は人の作用(刈り取りや踏みつけ)が少ない所に生えるのと、グランドといった頻繁に踏みつけが多い所に生えるのでは種類や生え方が違います。踏みつけが多い所にはロゼットで過ごすものや地面を這う雑草が多く、少ない所では茎が立つものが多くなります。同じ種類でも踏みつけが強いと背が低く、踏みつけが弱いと茎を高く伸ばすといった生え方の変化もあります。 |
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■園内のいろいろな場所の雑草をかんさつしよう |
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踏みつけの少ないフェンス沿い周辺
フェンスがあり人の踏みつけが少ない植え込みゾーンがありました。
そこで観察できた雑草の一部を紹介します。 |
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ヤエムグラ:自分の力では立てない寄りかかり型です。茎にはとげが密生し、互いに引っかかって群がって長く伸びます。ここではフェンスに寄りかかり群生していました。 |
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コゴメイヌノフグリ:オオイヌノフグリと同じゴマノハグサ科で、細い茎を長く伸ばし寄りかかって群生しています。小さな白い花を咲かせます。もともと小石川の植物園にあって他ではあまり見られませんでしたが、最近あちこちで見られるようになりました。 |
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フラサバソウ:こちらもゴマノハグサ科で茎が細くなよなよしていて寄りかかって群生します。 |
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コゴメイヌノフグリとフラサバソウはよく似た形で生活型も似ています。ここで2種の見分け方を紹介します。 |
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以上のことに気をつけてみてみれば見分けができると思います。 |
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コゴメイヌノフグリの花 |
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コゴメイヌノフグリの果実:毛が生えます |
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フラサバソウの花 |
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フラサバソウの果実:がくは有毛だが、
果実は無毛です |
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少し踏み込みある道端周辺
園路沿いにはカナメモチの生垣が施してあり、その下にも雑草が生えていました。 |
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ナガミヒナゲシ:淡橙色の花が道沿いに群生しているのをよく見かける雑草です。高さが30〜40cmになり踏みつけが弱いところに生えます。最近各地に急に多く見られるようになった雑草です。それも、その名のとおり果実が長くたくさんの種子で増えるので拡大したのではないかと思われます。
〔「形とくらしの雑草図鑑」P.46
参照〕 |
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ウラジロチチコグサ:踏みつけに強くロゼットを作ります。葉の裏には毛が密生し白くなっています。これも近年拡まった帰化植物です。
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キュウリグサ:葉をもむとキュウリの香りがするというので名がつけられました。ロゼットで越冬して枝分かれの茎を伸ばす型です。高さ10〜30cmになり数本が斜めに立ちます。
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タチイヌノフグリ:オオイヌノフグリによく似ていますが、茎が立つ部分が異なり花も小ぶりです。オオイヌノフグリは畑や田んぼの畦道に多く、タチイヌノフグリは街中に多く見られます。 |
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ヘラオオバコ:ロゼットはオオバコよりは踏みつけに弱いようです。花をつける茎が伸び出していました。 |
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スズメノカタビラ:踏みつけがそれほど多くないのでスズメノカタビラも割合背が高い形で観察されました。 |
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刈り取りのある草っ原周辺
刈り取りのされた草っ原には、それに耐える雑草が観察できました。ロゼットを持つものが多かったです。 |
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セイヨウタンポポ:周りが刈られていても立派なロゼットが残っていました。 |
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ヒメジョオン:まだロゼット状だがハルジオンとの区別はむずかしいです。 |
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ヨモギ:ロゼットを持たない。まだ低いが踏まれないところではこれから伸びるだろうと思います。 |
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踏みつけの強いグランド
今回の観察で人の作用が一番強い場所でした。絶えず踏みつけがあるグランドでは特徴的な形や種類が観察されました。ロゼットを持つもの、地をはって広がるものが多く見られました。踏みつけの多いグランドに生えている雑草は背が低い段階で花が咲くものがありました。生育する草の種類は限られます。 |
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スズメノカタビラ:踏みつけが強いので背が低い状態のものが一面に広がっていました。 |
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オオバコ:非常に多くの数のオオバコが見られました。踏みつけられ地面にへばりついているようでした。 |
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ナズナ:ロゼットで越冬しますが、今の時期はすでにロゼットは消えていました。踏みつけの強いところでは道端や田んぼの畦道に比べて全体に背が低い状態で花が咲いていました。 |
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カラクサナズナ:別名カラクサガラシ。最近増えてきた帰化植物でアブラナ科で葉をもむと独特の香りがします。特に踏みつけの多いグランド中心部では低く広がる形で生えていましたが、グランドの縁のほうでは茎が立ち上がる形が見られ、踏みつけの作用による形の変化が観察できました。 |
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マメグンバイナズナ:短い期間ロゼットの状態で過ごします。今回は茎と葉がのびかけているものを観察することができました。 |
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シロツメクサ:茎が長く這い葉で地面を覆いじゅうたんの様に広がっていました。踏みつけの強いところでは小形になって耐えているようです。白い花が見られました。 |
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ブタクサ:芽生えの形がみられました。 |
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■植えマス調査入門 |
街なかには街路樹がたくさんあります。その根元の周りに狭いですが囲まれた土の面があり、そこを植えマスといいます。植えマスには雑草の群落ができます。その群落を測定して記録する方法を試してみました。今回は2個の植えマスでどんな雑草がどれくらい生えているか調査しました。
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今回は右の表のような結果が得られました。
同じ公園内にある隣通しの植えマスでも種類や被度が違い驚きました。 |
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皆さんも家の近くの植えマスでチャレンジしてみてください!! |
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■雑草は臨機応変、変わり身が早い |
雑草を分類するのに植物の生活様式に目を向けて類型化したのが生活型分類です。しかし実際に「雑草の暮らしぶり」を観察すると明確に類型化できないことが出てきます。同じ種でも生活する環境が違うと生え方(姿、形)に変化が見られます。よって、雑草の生活型は固定したものではなく、環境の働きかけに対応して臨機応変に変化していることがわかります。雑草は生活する環境に適応した姿に変わることのできる変わり身の早い植物なのです。
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<担当者より>
今回は木場公園の中だけでも数多くの雑草が観察することができました。岩瀬先生のおっしゃる雑草の知識をメモしたり写真に収めたりと参加者の皆さんからも熱意を感じました。同じで種類でも生活する環境が違うと変わり身をする臨機応変な雑草が間近で観察できました。いろいろな雑草の姿を見て、雑草と人とのかかわりの深さにも気づかされる有意義な観察会でした。 |
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今回が初めてとなる、テーマを一つに絞った観察会はいかがでしたか。たくさんの方々にご参加いただきありがとうございました。今回の「街なかの雑草を観察する」というテーマのもと、参加者の皆さんも都会の雑草のくらしぶりをうかがうことができたと思います。これからも、このような一つのテーマにしぼった観察会も開催していけたらいいと思います。次回の観察会もよりいっそう充実したものになるように講師、スタッフ一同努めてまいりたいと思いますのでよろしくお願いいたします。 |
今回の観察会に参加してくださった方の感想をこちらに載せています。→ |
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