●菌類の自然界の中での役割 |
カビやきのこ、酵母といった菌類は、自分では栄養をつくれません。【腐生、共生、寄生】という形で他の植物や動物から栄養を得ています。 |
【腐生】落ち葉にカビが生えています。死んだ動植物から栄養を得ることを腐生と言います。菌類は死体を分解し、土に戻す重要な役割を担っているわけです。もしも菌類がいなかったら、森はたいへんなことになるでしょう。 |
【共生1】写真はカラマツの外生菌根です。根の外側を取り巻いているのが菌糸です。菌のはたらきによって、根から吸収した養分がカラマツの全身に効率よくいきわたることが確認されています。菌類はカラマツの根から栄養(光合成産物)を得ていますが、植物の栄養供給を補助するはたらきがあって、成長を促進しているわけです。菌糸は地下で広がり、その範囲は植物の根よりも広がっています。森の地下には菌類の巨大なネットワークがあります。
この菌と植物の共同・共生構造は、農業場面で収量アップに利用されています。 |
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Q:マメ科植物の根粒菌は今の話と関係しているんですか?
A:根粒菌は、実は菌ではなく細菌(バクテリア)によるものです。この話は難しくなるのでここではご容赦ください。
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【共生2】これはブナの幹に着く地衣です。地衣は藻類と菌類の共生です。菌類は藻類から栄養を取得し、藻類は菌類によって生存場所を確保しています。
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ブナの幹に生息する地衣。右は地衣体と子嚢盤(子実体) |
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【共生3】今度はシロアリときのこの共生です。
オオシロアリタケというきのこが白アリの巣に寄生して、シロアリの糞から栄養を得ています。 |
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【共生4】他にも、内生菌(エンドファイト)と言って、植物内で存在していて、植物には悪影響を及ぼさない菌がいます。内生菌がいることによって、捕食者や他の菌を抑制し手植物を守るという関係にあります。 |
【寄生】植物や動物寄生する菌というのもあります。
植物に寄生するものは農業生産で問題になっていて、菌類がなければ農作物(のうさくもつ)の収量は11-14%アップするといわれています。
昆虫に寄生する菌は冬虫夏草やハエカビなどです。昆虫寄生菌と言います。
あるいは菌に寄生する菌生菌というものもあります。
これら寄生菌は、増えすぎた生物を抑制するという役割を担っています。 |
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菌類は、菌だけでは生きていけないですが、腐生、共生、寄生と、生物どうしの仲介者として大切な役割を担っています。
<<菌類は自然界が調和を保つ上で重要な存在!>>
ということです。 |
余談ですが、“森林”という漢字は “木”ばかりで構成されていますが、実際の森林は木ばかりではないですね。“木”“草”それに“菌”が重要な存在です。
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木・草・菌による森林
題字:土屋博之
科博認定サイエンスコミュニケータ
第1期生 |
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Q:マツタケとマツは共生関係と言っていいのでしょうか?
A:難しい質問です。共生とも寄生とも言えます。
腐生 = 相手が死んでいる
共生 = 相手が影響ないかあるいはプラスに作用する
寄生 = 相手にマイナスの影響を及ぼす
とされていますが、共生と寄生ははっきり分けられません。マツはマツタケによって成長が良くなります。しかしその分寿命が短くなる。生き急がされているということですね。
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