2012年  自然観察大学 第1回
2012年5月13日(日)
場所:我孫子市岡発戸
(おかほっと)・都部(いちぶ)谷津
後援:我孫子市
3年ぶりとなる岡発戸での観察会は素晴らしい天候に恵まれ、50人以上の皆さんに参加いただき大変にぎやかな会となりました。
後援を頂きました我孫子市役所の方々、岡発戸で保全活動をされているボランティアの皆さん、そして一緒に観察を楽しんでくださった参加者の皆さん、ありがとうございました。
今回のレポートは、NPO会員の西田さんと斎藤さん、事務局脇本と鈴木で報告させていただいております。
NPO会員の方にご協力いただいて報告するのは今回が初めてです。(ご興味のある方は、事務局までご一報を!)
よろしくお願いいたします。
クモの求愛について熱く説明する浅間副学長

当日に話題になった生き物のリスト

植物
・草本
イタドリ
カラスノエンドウ
オオバコ
クサイ
セイヨウタンポポ
カントウタンポポ
クサイチゴ
ハルジオン
ヒメジョオン
アレチギシギシ
ナガバギシギシ
オオブタクサ
セリバヒエンソウ
ショウブ
ホウチャクソウ
ムラサキケマン
ウラシマソウ
ウワバミソウ
マツヨイグサ
セイタカアワダチソウ
・木本
クワ
スダジイ
アカガシ
シラカシ
シロダモ
コウゾ(ヒメコウゾ)
アカマツ
ニワトコ
ニガキ
ムクノキ
エノキ
イヌシデ
コブシ
コナラ
イヌザクラ
シダ植物
コウヤワラビ
スギナ
イヌスギナ
 

 

動物
・昆虫
トビイロケアリ
ヤマトシリアゲ
クロハネシロヒゲナガ(ヒゲナガガ)
コガタルリハムシ
ムモンホソアシナガバチ
ウシツノカメムシ
チビタマムシ類
コナライクビチョッキリ
キオビツヤハナバチ
メンハナバチの一種
クモの獲物に群がる4頭のシリアゲムシ
(ヤマトシリアゲ)
・クモ
ハナグモ
クサグモ
コクサグモ
ジグモ
アリグモ
・鳥
ウグイス
ホトトギス
キジ
シジュウカラ
コゲラ
カルガモ
・カエル
シュレーゲルアオガエル
ニホンアマガエル
ニホンアカガエル
トウキョウダルマガエル
目の後ろが黒くないことが特徴の
シュレーゲルアオガエル
・その他
ヤマカガシ
アオダイショウ
カタツムリ類
 
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イタドリの花外蜜腺
岡発戸の入り口を過ぎイタドリが群生する傍らで、アリを探してみましょう、と中安先生。葉や茎を目で追っていくと、アリがちらちら、赤紫がかった茎のあたりをいそがしく歩いています。アリの行き先は葉柄の付根のあたりでした。そこには蜜腺があり、蜜が分泌されています。花以外のところにある蜜腺なので花外蜜腺といいます。花の蜜は植物が虫を呼び寄せて交配を助けてもらう、種を残すための戦略だと知られていますが、茎に蜜腺があるのはなぜなのでしょうか。イタドリは都合の悪い虫を寄せつけないために、花外蜜腺の蜜でアリを誘引し、ガードマンとして利用していると考えると納得がいきます。アリは多くありませんでしたがせわしく動き回り、「ガードマン」にいそしんでいました。
蜜が出るというなら甘かろうと少し失敬して口に含んでみましたが、スカンポともいわれるイタドリに酸っぱさは感じたものの、甘みは感じませんでした。酸っぱさはシュウ酸によるもので、イタドリはアリを利用する生物的防衛だけでなく、虫が嫌う物質を利用した化学的防衛も行なっているのです。イタドリはあの手この手で巧みに外敵から自分を守っているのでした。
その近くに生えていたアカメガシワにも、カラスノエンドウにも花外蜜腺があるそうです。
(斎藤)
イタドリの花外蜜腺に群がるアリ
ムラサキケマン
ムラサキケマンの種子が弾けたあと
ムラサキケマンの種子が弾けたあと
「この写真のようなものが、この辺りにあります。どれでしょう。」
という中安先生の言葉から、このポイントでの解説が始まりました。
皆、真剣に探しました。
「これじゃないですか。」
一人の人がムラサキケマンを指して言いました。
「そうです。ムラサキケマンが種子を飛ばした後の果実です。ムラサキケマンの種子を包んでいる果皮は刺激を受けると巻き上がり、その力で種を弾き飛ばします。
ムラサキケマンが種子を散布する方法にはもう1つあります。
黒い種子の端に白い部分がありますが、アリはこの部分をくわえて種子を巣へ運んで行きます。アリは種子を食べませんが、この白い部分に惹きつけられるようです。この白い部分は種子の付属物で、エライオソームと言います。アリを利用して種子を運ばせる植物は、この他に、ホトケノザ、スミレ、カタクリなどがあります。」
ゲンノショウコの種子が弾けた後は、お神輿の屋根の形に似ているということで、じっくり見たことがありましたが、ムラサキケマンをじっくり見たのは初めてだったので、巻き上がった種子の果皮の形が面白いと感じました。
(西田)
谷津の全景、成り立ちと斜面林
今回の観察地は谷津(やつ)と呼ばれる地形です。浅間先生より、谷津がどのようにして形作られたかについての説明がありました。
谷津という名称は千葉県に独特のもので、関東地方に多くみられる地形です。他の地域では谷戸(やと)や谷地(やち)、または、単に谷(たに)とよばれています。
主に丘陵の斜面林と、谷あいの低地から成り立っており、以下のような原理で形成されたと考えられています。
1. 氷河期に海面の後退によって陸地となり、河川(水の流れ)で地表が削られて谷ができる。
 
2. 間氷期に海面が上昇し、谷に海水が入り込む。海底となった谷には堆積物が積もって平坦になる。
 
3. 再び海面の後退が起こり、陸地となる。
谷津の成り立ちを解説される浅間先生
かつて、この房総半島は三浦半島と陸続きになっていた時期があり、その時に渡ってきた動物が、再び海で隔てられ島となった房総半島に隔離されたために、固有の形態を持つようになった種の分布が見られるそうです。普通ヤマカガシの首の部分は、毒があるぞという警戒信号を示すため黄色ですが、房総では青みがかった灰色のヤマカガシなどの地域個体群も見られるそうです。
(西田)
日本の緑
谷津の斜面林は新芽による緑色が明るく輝いています。“緑色”といっても、斜面林を構成する樹種により、その色は様々です。今年は例年より一週間季節が遅れていて、今が一番、“緑色”がきれいな季節です、と、岩瀬先生。しかし、それはひと月もすれば、新芽も成葉の濃い緑となり、あまり区別がつかなくなってしまいます。新緑の“緑色”は豊かですが、その色は移り行き、次回の観察会にはずいぶん変わっているでしょう。この美しい緑は、一年にいっぺんだけのこの時季のみ見せてくれるものなのです。
新芽による様々な緑色を見ることができる谷津
岩瀬先生の言葉とともに遠景を見やると、深い緑も交えたさみどり色(早緑色)のグラデーションがみずみずしく、輝いて見えます。そういえば日本人には花見や紅葉狩りはあっても、緑を見る行事はありませんね。
(斎藤・西田・脇本)
シロダモの葉の交替
岩瀬先生の解説に真剣に聞き入る参加者の皆さん
歩道に突き出したシロダモの枝を使って岩瀬先生の解説が始まりました。
「上に向かって伸びている枝の一番先には、白っぽく垂れた葉がかたまって出ています。これは、今年の春に出た葉です。その枝をたどって行くと、また、かたまってしっかりした葉が出ています。これは、去年の春に出た葉です。さらに、其の枝をたどると、同様に葉がついています。これは、2年前に出た葉です。シロダモは年に1回枝を伸ばすので、葉がかたまって出ている箇所を数えていくと、この木が何年前の葉までつけているかが分かります。
シロダモは常緑樹です。常緑樹は葉が落ちないと思っている人がいますが、春が落葉の時季です。新しい葉が出てから古い葉が落ちるので、葉がなくなる時がありませんが、葉は落ちます。葉の寿命は1年のもの、2年のもの、3年のものなど樹種によっていろいろです。落葉樹は春に新しい葉を出して、その年の秋には落としてしまうので葉の寿命は半年ぐらいです。」
また、シロダモを「兎ん耳(うさぎんみ)」と呼ぶ地域もあると、川名先生からお聞きしました。
垂れ下がっているシロダモの新緑(葉)は、毛が生えていてとても柔らかくてウサギの耳を連想させるようです。
(西田)
踏みつけに強い雑草
轍がはっきりとした散策路で、川名先生がしゃがみ込み、足元の草を取り上げて説明を始めました。
轍の間に生えていたのはオオバコとクサイ。これらの種類は、普通の植物では生えることが困難な「踏みしめられた道」にも生えることができます。また、近年ではもともと見られなかった亜高山帯の登山道などにもその勢力を伸ばしているといいます。
これらの理由について、川名先生は以下のように説明されました。
1. オオバコ、クサイともに、繊維が強く踏みつけに耐えることができる。
2. オオバコの種子は水分を含むと粘液をだして、容易に他のものにくっつくことができる。
3. これらの理由により、登山客の靴に取りついて亜高山地帯まで到達することができた。
轍の間に生える雑草を観察する
ちなみに、ある高山では、オオバコが生えている=人が通った道ということから、道迷いによる遭難者の命の危機を助けることにも一役買ったそうです。
(脇本)
タンポポ
道端のタンポポを囲み、岩瀬先生の説明が始まりました。
カントウタンポポ
セイヨウタンポポ
雑種のタンポポ
「この、谷津沿いの道にあるのはカントウタンポポです。この道は昔ながらの道なので、昔から日本にあるタンポポが数多く見られます。カントウタンポポと外来種のセイヨウタンポポの違いは、総苞外片(花のがくの外側の部分)を見ると分かると言われていましたが、最近の研究によるとそうもいえなくなっています。
今までは、総苞外片が、外側にめくれているのがセイヨウタンポポ、総苞(がく)にしっかりくっついているのがカントウタンポポでしたが、総苞外片がめくれていないような、めくれているような雑種のタンポポが見られるようになりました。
(西田)
ニワトコ
花が咲き終わったニワトコには、子房がふくらみ始めた青い小さな実がついています。畑の傍らのニワトコを囲み、川名先生よりお話しいただきました。
ニワトコは、農業にかかわる樹、農村と密接な関わりをもってきた植物です。それは芽吹きの時期と関係がありました。早春、他の植物に先駆けて芽吹きます。柔らかいその葉を地面に敷いて土に鋤き込むと、素早くドロドロになって緑肥になります。クサジイ(草敷)という俗名も持ち、江戸時代には緑肥としてさかんに使われました。
それだけではありません。ニワトコには、薬草としての役割もあり、怪我をしたときに打ち身の薬として使われたとも聞いています。
川名先生とニワトコ
来月はどんな変化が見られるでしょうか…
ニワトコは骨接木とも書きます。人々の生活に活用された植物として、今でもその姿が里山に残っているのでした。
(斎藤)
ウラシマソウの性転換と受粉
やこんもりした林のもとに、ウラシマソウが複数ちょうど花をつけていました。その名の由来は、花から伸びる細長いひょろりとしたものを浦島太郎の釣り糸に見立てたことによるのだそうです。
ウラシマソウの花は「仏炎苞(ぶつえんほう)」と呼ばれる苞の中に雌花か雄花のどちらかが隠されています。仏炎苞を中安先生は「巻きスカート」と表現。なるほど、一枚の布を巻いたスカートを逆さにした形です。
この巻きスカートを使っての雄雌の区別について教わりました。その方法は、
1. 「スカートめくり」で苞をめくって確かめる。
2. 「おさわり」で仏炎苞の元の部分を指で挟んで感触をみる。ぷっくりしていれば雌花。
3. 巻きスカートの付け根の部分に穴があるかどうか。小さな「覗き見」様の隙穴(げきけつ)があれば雄花。雌花はぴっちり隙間なく巻いている。
雄花のスカートの隙穴には、ウラシマソウが子孫を残すための意味がありました。虫媒花であるウラシマソウは、雄花で花粉をつけた昆虫が雌花に移動して花粉をめしべにつけることで実を結びます。雄花の隙穴は実は昆虫の脱出口。苞の中に閉じ込められた虫がさんざん花粉を体にまとったあとに、脱出できるように仕組まれているのです。雌花の苞の中に閉じ込められた場合は、動き回りめしべに花粉をつけたとしても、今度は脱出口がなく中で死んでしまうことが多いのだとか。雌花の中にはたいがい虫の死骸があるのだそうです。
ウラシマソウの雌雄の違いを写真で説明される中安先生
また、ウラシマソウは性転換する植物で、しかも何度も転換することもあるそうです。性別は個体の大きさで決まり、小さいものは雄になります。大きく育った個体は雌になりますが、栄養が十分でないと雌が雄に変わることもあるそうです。栄養状態がいいと雌なのか…と、面白く思いました。
雌花で死んでしまう虫は、疲れ果ててしまうのでしょうか。残酷にも思えましたが「生物は無駄なこと、意味のないことをしない」「生物の他者の利用は、他者のためではない」という中安先生の言葉がとても印象に残りました。他の生物を利用する生存戦略は、思いやりでもない代わりに残酷なわけでもないのです。複雑なようでとてもシンプルな自然の摂理を感じました。
(斎藤)
クモ類
「今回はいつもよりクモ類が少なかった」と浅間先生はおっしゃっていましたが、それでも数種類のクモについて、その生態の不思議を知ることができました。
クサグモと巣
獲物を捕らえるハナグモ
ジグモの巣
(手前と奥にみられる)
棚状の網を作り、落とし穴式で虫をとらえるのはクサグモ。同じタナグモ科のコクサグモとともによく見られ、植え込みの木がこれらの種の巣だらけになっているのもよく見かけます。
ハルジオンの花の中で身をひそめていた緑色のクモはハナグモ。脚を広げて獲物を待ち、知らずに花にやってきた虫たちに飛びかかって仕留めてしまいます。
木の根元に特徴的な管状の巣を作っているのはジグモ。巣は地中にも続き、普段はそこに隠れています。管状の部分に獲物が触れると、地下から飛び出してきて咬みつき、巣に引きずり込んでしまうのだそうです。
何人かの参加者の方から、「子供のころ、この巣をそっと引っ張ってクモごと取り出せたら成功、という遊びをよくやりました」という話を聞くことができました。巣は引っ張られると、途中でぷっつりとちぎれてしまうことが多いようです。地域によっては「ハラキリカンベエ」なんて変わった名前で呼ばれているところもあるそうです。ジグモを棒などで押さえると、自分の顎で腹を切ってしまうと聞きました。
(脇本)
ショウブ
湿地帯に出ると、村田先生からショウブの花の紹介がありました。ショウブの花と言われても、辺り一面緑色。種々紫色の華やかな花はなくどこにあるのか…探してみると、ガマの穂のような黄茶色の花が、やや斜めになった茎の途中から、空を指さすように出ていました。実はよく言われるショウブはハナショウブであって、「菖蒲の節句」のショウブはこちらの地味な花をつける植物です。ショウブはサトイモ科、ハナショウブはアヤメ科で、遺伝子的にもあまり関係がないそうです。
ショウブはその葉の芳香が邪気を払うとされ、節句に軒下に吊るしたり、お風呂に入れたりする伝承があります。葉の端をちぎって鼻に持っていくと、清々しい芳香がからだに渡っていき目が覚めるようでした。アヤメ科のハナショウブの葉には香りはありません。
(斎藤)
ショウブの花
スギナとイヌスギナ
身近で親しみのある植物であるスギナですが、コレもシダ植物です、と村田先生が言われると、何人かの参加者から意外だという声が上がりました。
一面に生えているスギナは、ぱっと見にはどれも同じに見えるのですが、実は2種類のスギナが生えていました。スギナとイヌスギナです。イヌスギナはスギナに比べて湿った土壌を好むようで、谷津の低地は最適の環境のようです。
では、この2種はどのような点で区別できるのでしょうか。
ツクシがスギナの胞子茎であることはよく知られているのですが、そのツクシの生え方がスギナとイヌスギナでは異なっています。イヌスギナでは、スギナの茎の先端に胞子のう穂(ツクシの先端部分)がつくので一目で区別できます。
しかし今回は、胞子のう穂がつく時期ではありませんでした。そのようなときは、茎と枝の分岐部分の葉鞘(茎についている鞘状の部分で、ツクシでいうところのはかま)に注目するとよいそうです。茎の葉鞘の長さと、枝の付け根から最初の節までの長さを比べて、葉鞘の方が短ければスギナ、長ければイヌスギナだそうです。
(脇本)
(全国農村教育協会:
野外観察ハンドブック「シダ植物」
p52より)
クワの花
クワの雌花
クワの樹が数本生えています。雄株、雌株がともにあるようです。それぞれ花の盛りも過ぎ、雌株では、花は青い果実になり始めていました。
クワの雌花は集合花なので、果実はブドウの房のような形に見えます。クワの果実は、それぞれの花のガクの部分がふくらみます。このように子房以外の部分がふくらむ果実を“偽果”といい、子房がふくらむものは“真果”といいます。クワのガク、イチゴの花床のように偽果のふくらむ部分はそれぞれです。
雄株には、雄花の茶色い花ガラがついていました。そんなモノまで自然観察の材料にしてしまう岩瀬先生でした。
(鈴木)
ヤマトシリアゲ
木陰になっている道端の草むらの上にお尻を上げている黒い虫が数頭見られます。鈴木先生に注意を促がされて初めて気がつきました。
ヤマトシリアゲといい、雄のお尻が反り返っているのが特徴です。よく見るとハサミのようなものもついていて、外国では、“スコーピオンフライ”と呼ばれているそうです。
ヤマトシリアゲは交尾のために雄がフェロモンを発し雌を呼び寄せます。雄は雌が食事をしていても交尾を試みますが、雌は全く気にせずそのまま食事を続けているそうです。ちなみにヤマトシリアゲは、傷ついたり死んだ虫や熟した桑の果実などを食べます。
また、ヤマトシリアゲは飛翔力が弱いため、環境の変化などで一度いなくなってしまうと、再び見られるようになるまでに大変時間がかかります。環境を見る目安にもなるようです。
(鈴木)
ヤマトシリアゲ雄
コガタルリハムシ
エゾノギシギシの葉が孔だらけで、見るも無残な姿です。犯人は、コガタルリハムシの幼虫です。
コガタルリハムシの成虫(左)と幼虫(右)
3月始め、ギシギシ類の葉には小さな黒いイモムシがついています。これがコガタルリハムシの幼虫です。幼虫はギシギシ類を食べて育ちます。十分大きくなると地中に潜り、暑い夏は休眠して過ごします。
山崎先生からお話いただきました。
(鈴木)
セイタカアワダチソウとキオビツヤハナバチ
セイタカアワダチソウは、外来種で花粉症の原因などと言われ厄介者扱いですが、どうやら一概にそうもいえないようです。川名先生と田仲先生のお二人によるコラボ解説をいただきました。
休耕田や用水路端に、セイタカアワダチソウの枯れた茎が無数立っています。草刈の跡でしょうか、茎の上部は平に切断されています。この茎を上から覗くと中心に丸い白色の髄があるのが分かりますが、髄の部分が見られない茎も多数見られます。これはキオビツヤハナバチによるものだそうです。
キオビツヤハナバチ成虫。足にはたっぷり花粉をつけています。
(田仲義弘)
卵と花粉餡。餡はたっぷり用意します。
(田仲義弘)
キオビツヤハナバチは8mm程度の小さなハチで、セイタカアワダチソウの枯れ茎の髄を掘り進み、産室に利用しているそうです。茎の中には、髄で仕切りられた幾つかの小部屋が造られます。一つの部屋には1つの白い卵と幼虫の餌となる花粉と蜜で作る黄色い餡が入っています。卵は細長くバナナ型。その長さはキオビツヤハナバチの腹部の長さとほぼ同じ(!)だそうです。キオビツヤハナバチはもともと、産卵にアジサイなど髄のはっきりした植物を利用していたようですが、セイタカアワダチソウが増えたことにより産卵場所の確保が楽になったのかもしれません。
さて、そのセイタカアワダチソウですが、増えた理由に養蜂家が蜜源植物として植えたという説があります。また、近年、微小な花粉を大量に飛ばす風媒花では無いことが分かり(虫媒花)花粉症の原因植物の濡れ衣は晴れたのですが、一度知れ渡った情報を刷新するのは難しいようです。川名先生は、病院で出会った人に、セイタカアワダチソウと花粉症は関係が無いことを話したそうですが、その人は頑と受け入れずセイタカアワダチソウを悪者扱いし続けたそうです。
人の視点で厄介者扱いされたり、思い違いで悪者扱いされたり、と、ちょっと身につまされるコラボ解説でした。
(鈴木)
岡発戸 鳥マップ
今回の観察会は唐沢学長がお休みだったため、浅間先生と中安先生に鳥類のお話をいただきました。
当日は内容盛りだくさんで解説いただく時間を取れませんでしたが、中安先生は密かに「鳥マップ」を作成されていました。
鳥マップとは、「さえずりや縄張り争いなど、繁殖に関係する鳴き声や行動が観察できた地点の位置を地図上に記録」したものです。「このような観察を繰り返すことで、それぞれの鳥の生息環境の傾向や縄張りの範囲がわかってくる」と中安先生。観察の視点として、生物と環境の関係に注意をはらっている中安先生ならではの鳥マップです。せっかくなので鳥マップを紹介させていただきます。
(鈴木)
ギンイチモンジセセリ 〜参加者の方からの報告〜
ギンイチモンジセセリ
(坂部重敬)
後日、アンケートとともに画像も送られてきました。
ちょうど止まっているところを山崎先生から教えていただきましたが、ゆっくり観察する間も無く逃げてしまいました。
ところが、帰り道(解散後)、偶然にも岡発戸の入り口付近で発見!写真に収めることができました。飛び方に特徴があり、とても印象に残りました。
(NPO会員坂部重敬さんのアンケートより)
 
我孫子の谷津ミュージアム〜岡発戸・都部谷津(おかほっと・いちぶやつ)
今年度の観察地の岡発戸は、水田と斜面林が広がる“谷津田”と呼ばれる環境です。
谷津田は、農業と自然と人のくらし(文化)が密接に関わり合ってできた景観です。
我孫子市では、岡発戸に残る谷津田の原風景をそのまま“岡発戸・都部谷津ミュージアム”とし、谷津田を大事に思う方々“谷津守人(やつもりびと)”と協力して、様々な育成活動を行なっています。今年度の自然観察大学の観察会では、我孫子市役所と“谷津守人”の皆さんに大変お世話になっております。
谷津ミュージアム友の会の会報です。一年間の活動がわかります。
田植えなどの農業活動だけではなく、皆さんで管理方針なども話し合って決めているようです。
我孫子市HP→ http://www.city.abiko.chiba.jp/index.cfm/21,0,211,765,html
谷津の田んぼ道の傍らにある掲示板。季節の生き物や、採集・放流禁止などの注意事項が掲示されていました。
今回の季節の生き物情報は、スミレ類4種の紹介です。
6週間たった岡発戸・都部谷津はどのように変化しているのでしょうか?
参加者の皆さん、我孫子市と谷津守人の皆さん、どうもありがとうございました。6月の観察会もよろしくお願いいたします。
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2012年度 野外観察会
第1回の報告

第2回の報告

第3回の報告
テーマ別観察会:アブラムシ
テーマ別観察会:農場の自然観察