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講習会が終わり、さっそく野外での観察会が始まりました。
始めに観察されたのはイヌシデクロマダラアブラムシ。松本先生の「目の高さの枝を丁寧に見ていくとすぐに見つかりますよ」というアドバイスのおかげで、あちらこちらで参加者の皆さんの「見つけました!」という声が上がりました。 |
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先生のヒントを頼りにアブラムシを探す |
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続けて見つかったのは、カエデの葉裏のモミジニタイケアブラムシ。今回観察されたのは「越夏型」の幼虫で、寄主植物内の窒素分が多い春と秋は普通型の幼虫として暮らし、炭素分の増える夏の間は形態を変え、成長を止めて固着生活を行うそうです。
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大勢の客でにぎわうバラ園の横で、一見何の変哲もない道端の木に群がる参加者の皆さん。バラ園のお客さんに不思議な目で見られながら観察しているのは、ニワトコの樹上で行われている食物連鎖です。
ホリニワトコアブラムシとニワトコヒゲナガアブラムシの2種のコロニーが観察されました。各ステージの幼虫や成虫の産仔が見られる一方、アブラムシの何倍も大きい白色のウジ型の幼虫も見つかりました。これはヒラタアブの幼虫で、アブラムシを暴食します。普段は益虫として扱われるヒラタアブも、アブラムシの観察者にとっては悪者の一つです。その他、アブラムシの排泄物に集まるアリや、ヒラタアブと同様にアブラムシを捕食する各種テントウムシなど盛りだくさんの生物が観察されました。 |
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ホリニワトコアブラムシを捕食するヒラタアブの幼虫 |
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モモコフキアブラムシと天敵のテントウムシの卵 |
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後半からは大町自然博物館の金子先生にも合流していただき、湿地の上にめぐらされた木道で観察会が行われました。
最初に松本先生が注目したのは、ヨシの葉につくモモコフキアブラムシ。名前の通り、生活環の中でヨシとモモ、アンズ、ウメなどとの移動を行います。これを寄主転換といい、寄主転換を行うアブラムシは「移住性アブラムシ」と呼ばれています。
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次のエゴノネコアシアブラムシも移住性アブラムシ。初めはエゴノキに寄生し、その側芽が「エゴノネコアシ」と呼ばれる虫こぶになります。その後成長するとイネ科のアシボソ類に移住します。エゴノネコアシはとても独特な形をしており、皆さん一様に虫こぶを割って中の様子を観察していました。
このエゴノネコアシアブラムシは不思議な習性を持っています。虫こぶを作るときに、その内部に入り損ねて締め出されてしまった幼虫は、虫こぶを狙う敵たちに対し攻撃性を示すのだそうです。それらの幼虫を手の上に乗せると、口吻で攻撃するために軽いかゆみを感じるといいます。今回は惜しくも時期が違うため試すことは出来ませんでした。 |
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独特の形状をしたエゴノネコアシ |
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虫こぶだらけのイスノキの葉 |
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最後の観察ポイントでは、イスノキの葉がほぼすべて一様にこぶだらけとなっていました。その犯人はヤノイスアブラムシ。このアブラムシもまた特異な生態を持っていて、通常移住性アブラムシは草本と木本で寄主転換を行いますが、このヤノイスアブラムシはコナラとイスノキという二つの木本で寄主転換を行います。虫こぶを作るのはイスノキのみで、例年この時期ではコナラへ移住してしまっているのですが、今年は気候が不安定なせいか、穴の開いていない虫こぶを開いてみるとコナラに移住する有翅虫が少し残っていました。 |
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今回観察されたアブラムシはおよそ10数種でしたが、そのすべてが全く異なった生態を持っており、この種族の奥深さを実感するには十分すぎるほどでした。筆者にとっても、それまではどちらかというと嫌悪感を持ってしまう昆虫でしたが、今後はコロニーを発見したらルーペでじっくりと観察し、もっとよく調べたいと思いました。とてもユニークで興味深い観察会となりました。 |
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