■ユスリカとその狩人たち
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田仲義弘 先生
狩蜂の行動を長年研究するとともに、写真に収めてきた。インセクタリウム高崎賞を受賞。長年つとめた大妻中学高等学校を退職し、2012年から写真家として活動中。自然観察大学講師。 |
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このレポートで掲載した写真と図は田仲義弘(一部表記したものを除く。禁無断転載) |
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ユスリカをじっくり観察した人はあまりいないと思いますが、ユスリカの蚊柱は見たことがあるのではないでしょうか。蚊柱は婚活する雄のユスリカの集団です。
ユスリカは、見かけは蚊に似ていますが、吸血はしません。不快害虫とされ、しばしば大発生して話題になります。
東京近辺ではアカムシユスリカ、オオユスリカなど数種類のユスリカが知られています。幼虫はアカムシと総称されて、釣りの餌などになっています。 |
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●はじまりはウグイス─ユスリカハンターたちに魅せられる─ |
2月のはじめに、目的の撮影を終えて林内の池のほとりでぼんやり見ているときでした。
ウグイスが林の奥から池の岸に出てきて、何かをしてはまた林に隠れ、それをくり返していました。
何かあると思ってビデオ撮影し、帰宅後にその画像を見てびっくりしました。
ウグイスがユスリカを食べているではありませんか。
いまのビデオカメラは高性能ですね。ありがたいことです。 |
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●セグロセキレイで火が付いた |
11月にセグロセキレイのユスリカ狩りを見ました。 |
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池の中の看板にとまって、飛び立ってはUターンして戻ってきます。あるときは水面すれすれで、またある時は空中で、何かをくわえます。これを延々と繰り返しています。
ウグイスで見た経験から、これはユスリカを捕っているのではないかと考えました。
好奇心に火のついた私は、何日も通って、膨大な画像をコマ送りでチェックしました。それがこの画像です。 |
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池の中の看板にとまるセグロセキレイ |
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水面でユスリカをとらえるセグロセキレイ
このユスリカは、後日アカムシユスリカと判明 |
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水面から飛び立つユスリカをフライキャッチするセグロセキレイ |
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鳥にとってのユスリカは、スティックポテトのようなものではないかと考えています。小さいけどそれが目の前にたくさんいる... 卵をもった雌はなんとたらこ付きです。これを見逃す鳥はいませんよね。 |
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ユスリカハンターにはほかにどんな動物がいるか、ユスリカの種類やその生態はどうかなど、私の興味は広がりました。
ハクセキレイ、キセキレイはもちろん、メジロ、ミソサザイ、ジョウビタキ、オジロビタキ、モズ、ツバメ、エナガ、ヒヨドリ、さらにはユリカモメまでユスリカを食べるのには驚きました。 |
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鳥類以外では、狩蜂のニッポンギングチバチ、アジアイトトンボ、クモ類、二ホンカナヘビが、ユスリカを捕らえるのを確認しています。 |
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●ユスリカの種類と生態 |
ユスリカの種類はどうでしょうか。
東京近郊では下図のように4種のユスリカが大量に発生し、それぞれの発生時期がずれていて、すみ分けているようです。それぞれにおもな狩人たちの写真を貼り付けました。
晩秋から早春の、食べ物の少ない時期に、鳥たちの重要な食料になっていると考えられます。 |
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東京付近のユスリカとその狩人たち |
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オオユスリカとアカムシユスリカの産卵のようすが撮影できたので紹介しましょう。 |
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オオユスリカの産卵
後脚の間に卵塊をはさんでいる |
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アカムシユスリカの産卵
らせん状の卵塊が水中に伸びる |
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【トンボの狩猟行動】 |
トンボの成虫は空中で獲物を捕らえて食べますね。もちろんユスリカを捕らえるわけですが、観察しているうちにその狩猟行動に魅せられました。
テーマのユスリカからそれますが、トンボの狩りの話をさせてください。 |
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ユスリカを捕らえたアジアイトトンボ |
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トンボは愛好家の多い、人気の高い昆虫ですが、意外なことに、トンボの狩猟行動についてはほとんど報告されていないようです。 |
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例によって、獲物を捕らえる瞬間を動画で撮影して、その画像をパソコンで確認します。
鳥のときと同じに一コマずつ送りながら見ていくので、気の遠くなるような作業です。 |
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トンボの脚は6本すべてが前を向いていて、剛毛が生えています。
この脚を網のようにして、獲物を捕らえるのですが、トンボの種類によっていくつかのパターンに分かれるようです。 |
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観察してみると、上からつかむクレーン型と下からすくい上げるザル型の2パターンがあることがわかりました。
さらに、ザル型には飛行中に獲物を見つけた後、いったん下降して回り込む「制空型」と、枝先などにとまって獲物を待ち、見つけると同時に飛び立つ「待機型」があることがわかりました。 |
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イトトンボのなかまは、飛翔力が高くはないので、また違った狩りかたをするようです。 |
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ふだんは枝先にとまっていますが、上空に獲物を見つけると同時に飛び立ち、ホバリンクしながら捕らえます。獲物を捕らえたまま再び元の枝先に戻り、ゆっくり食べるというわけです。 |
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トンボの狩猟行動の観察はまだはじめたばかりです。
もう少し続けて観察して、また報告させていただきたいと思います。 |
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レポートまとめ:事務局
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