ミミズ図鑑
石塚小太郎/著
皆越ようせい/写真
全国農村教育協会
2014年4月20日発行
B5判 168ページ
定価(本体4,800円+税)
出版社からの紹介 http://www.zennokyo.co.jp/book/kagak/mmz.html
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『足元に未知のものがたくさんある』
 一読させていただいた率直な感想、『足元に未知のものがたくさんある』と思った。分かったこと、分からないことが沢山紹介されていて、この図鑑には生命現象解明の宝の山が見え隠れする。全国に分布するミミズという地味な分野を長年掘り下げたパイオニア研究、その成果をこのたび集大成し刊行された著者と写真家両氏に深甚なる敬意を表したい。
 私事で恐縮ですが、これまでミミズについては教科書的なことや経験的なことしか知らなかった。ところがこの本では基本的な名前を調べることから始まり、生態、採集法、解剖などについて素晴らしくきれいな図と写真で詳細に解説され、新しい発見が非常に多い。ぜひ、興味ある方々は手に取ってご覧になることをお薦めしたい。
 さてミミズについて何を知っているか、改めて思い起こしてみると、近年、雨の翌朝、芝生に囲まれた舗装道路を歩くと、道路に出て死んでいるミミズに気づき、なぜだろう、かわいそうだなと思う。子供の頃はたらいから石けん水を流したあとに、やはりなぜかミミズがピンピンはねていた光景を思い起こす。さらに魚釣りではミミズにたいへんお世話になった。例えば、乾燥した土手のイネ科の叢生株の下にいた大きなウタウタミミズ、これはウナギ、コイ、ナマズなど大きな魚の釣り餌に、家庭排水のまわりの湿った土、掃きだめや堆厩肥のなかにいた細長いシマミミズはフナ、クチボソの釣り餌に、時にはザリガニがかかり悔しい思いをしたのを思い出す。農作物の害虫としては水田にいるサクラミミズが知られている。イネの根のまわりの土を柔らかくするためイネが倒伏したり、モグラがミミズを求め畦に穴をあけて水田にはいるので漏水の原因になったり、さらに稲株の近くにできるふん堆がバインダーの刃を傷めるなどの例が報告されている。最近の大型コンバインによる収穫では被害は少なくなっていると思う。
わが国初の『ミミズ図鑑』、その構成は次のとおりである。
第1部 ミミズの名前を調べるために
  第2部 ミミズの解説(57種の解説と識別法)
  第3部 ミミズの生態、生息場所、繁殖行動、生活史
  第4部 採集法、標本作成法、解剖法、標本保存法
  資 料 フトミミズ科の分類に重要な形態、記入種リスト、参考文献
 これらが網羅され、研究者にはたいへん参考になる。自然観察者でも土壌生物に関心のある方々には大いに参考になる。また、学校や市町村、国の図書館、自然学習館などでもぜひ参考図書として整備され、多くに人々の眼に触れるようにしていただきたい。
自然観察大学講師 平井一男

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