全農教 観察と発見シリーズ
新・雑草博士入門

岩瀬徹・川名興・飯島和子/共著
全国農村教育協会
2015年4月27日発行
B5判 200ページ
定価(本体2,300円+税)
出版社からの紹介 http://www.zennokyo.co.jp/book/hakase/Dr_z.html
ルーペと本書を持って野外に飛び出したくなる、
すばらしい手引き書
2001年に出版された「たのしい自然観察 雑草博士入門」をベースに、その後の新知見やよりわかりやすい写真と解説を追加した。新たに飯島和子氏を著者に加え、より充実した本になっている。
本書は次の4章から構成されている。
第1章では雑草の繁殖の仕組みをつかむため、花から実への変化の様子をわかりやすく書かれている。実際に自分でルーペを覗いた時のような臨場感溢れる写真が多い。ガガイモやオッタチカタバミの種子散布の写真には、撮影の苦労が感じられる。
2章は雑草のくらしを踏まえての葉、茎、根の特徴を紹介している。「踏まれてもがまん強い草」ではオオバコの葉を用いた遊びから、踏みつけに対する強さへの理解を深められるように工夫している。
雑草を掘って根の形を実際に確かめるのも、本書の特筆すべきところだろう。
ロゼットを形成する雑草は似ていて紛らわしいが、「親あて」というゲーム感覚から理解ができるように配慮されている。
じっくり観察することにより、生活に適応した植物の体を理解できるように書かれている。
第3章では、前2章の内容を踏まえ、身近で類似している植物を区別できるように適切な写真で示している。掲載している種類数は少ないので、図鑑として用いるにはもの足りないと感じられる人もあると思うが、詳しく観察するためのガイドブックとして種類を絞ったのであろう。本書は一般の植物図鑑を使うための、橋渡しとして活用できる。
第4章は雑草のくらしと人との関わりを調べる手掛かりとして利用できる。また、学校での自由研究を行うためのヒントも得られると思われる。
本書を眺めていると自然に「ルーペと本書を持って、野外に飛び出していこう」と行動を起こしたくなる本である。親子で、また先生と生徒で、本書に書かれていることを実際に野外で確認しているうちに、いつの間にか雑草への興味が自然に身についていくと思われる。雑草は邪魔な草とか草取りの対象となる植物という概念を払拭してくれることだろう。
著者はそれぞれ長く雑草の観察・研究に精力を傾けられ、愛情を注いできた。
岩瀬氏は高等学校で、川名氏は小・中学校で、飯島氏は短大で教壇に立たれていた経験があり、全員が我が自然観察大学で熱心なフィールドワークを続けておられる。その現場で得られた手法が随所に生かされている。
難しい専門用語は極力避けて書かれているが、専門用語は欄外に説明を書いてもらうと、より内容を深めようとする方にプラスになったと思われる。
全体を通して、著者と編集者の息のあったチームワークによってできた素晴らしい野外観察用の手引き書である。
 NPO法人自然観察大学講師 村田威夫
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追記:自然観察大学では、本書を使った観察会を実施しました。
そのレポートが次でご覧いただけます。
 → http://sizenkansatu.jp/15daigaku/index_t1.html

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