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                                  | 雑草が面白い
 その名前の覚え方
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                                  | 盛口満著
 新樹社
 2015年5月発行
 四六判 255ページ
 本体1,600円+税
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                      |  こんな面白い本はめったにない | 
                     
                      | 著者の盛口氏が、知りたい雑草を求めて探す、という内容の本である。 それらしいものを見つけてはスケッチ(このスケッチがすばらしい)し、図鑑などにあたって同定していく。著者にとっての新発見である。本書では、その感動のようすが生き生きと語られている。
 盛口氏は雑草は専門外だそうで、知らないことは知らないと正直に書いている。それがユニークであり、すがすがしい。
 かつて埼玉の高等学校で教えておられたころの話や、現在勤務されている沖縄大学での学生とのやり取りなどをまじえ、人と雑草の関係が浮き彫りにされている。このあたりは読みながら考えさせられることが多かった。
 以下、印象に残ったことなどを、3点だけ紹介させていただく。
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                      | 本書はイネ科の雑草が中心になっている。 これは著者がイネ科好きということであろう。
 栽培作物とその原種(雑草)との関係を文献などによって調べ、それによってまだ見ぬ雑草を探し求めてゆく。それらしい雑草を発見しても軽々に結論づけることなく、スケッチを繰り返しながら近縁の種と比較し、確信を得てゆく。その過程が興味深く読める。しかも、ようやくたどり着いた目当ての雑草が、じつは身近にあったという落ちまでついていたりする。
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                      | 二つ目はオヒシバとメヒシバの項での次のような記述である。 「僕(盛口氏)は毎月1回、館山の実家に一人暮らしをしている母の様子を見に帰っている。土曜日の朝に沖縄を発ち、東京を経由して館山に戻り、途中夕飯のおかずを買って帰り、一晩一緒に飯を食べ、翌朝1、2時間ほど畑仕事を手伝って沖縄に戻る。…僕の航空チケット代を加算すると、1本いくらのきゅうりなるんだろう…。母の畑にいるときばかりは、雑草は敵役ではあるのだけれど、それでも月々に変化する雑草の様を、まさに身をもって体感するいい機会を与えられているともいえる」
 “泣いてくれるな、おっかさん”である。
 私はすでに父母を亡くしたが、毎月3回、鋸南町の無人の実家に立ち寄ることにしている。南房総市大房岬での定期的な動植物調査の帰りであり、富津市の自宅から車で約50分の距離ではあるが、盛口氏が母のいる実家に通う気持ちは痛いほどわかる。
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                      | 最後は、私たちの本が紹介されていることである。(これが大事) 巻末の「雑草図鑑の紹介」欄に「雑草の名前調べの入門編」として、岩瀬徹・川名興『たのしい自然観察 雑草博士入門』を紹介してくれているのだ。しかも一番はじめにである。ありがたいことだ。
 (最近これを全面改訂し、岩瀬徹・川名興・飯島和子『新・雑草博士入門』となった ⇒ 
                        )
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                      | エピローグのうんこの話が実にいい。伊沢正名氏との交流にからめうんちくと雑草との関係を持たせ、しめくくりとしている。 (伊沢正名氏には自然観察大学で2012年2月に講演をしていただいた 
                        ⇒「生態系の命をつなぐ菌類」)
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                      | 盛口氏に関しては以前から『BIRDER』をはじめいろいろな著作を拝読していた。房州館山の人であり、親近感を覚える(私も館山市の同じ高校の出身である)。 最近話題の『一〇三歳になってわかったこと』(篠田桃紅)にも記されているが、人が生きていくうえで“面白がる”という視点はたいせつだと思う。
 生物を面白がって観察する“ゲッチョ先生”に、ぜひ一度お会いしたいものだ。
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                      | NPO法人自然観察大学講師 川名興 | 
                     
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