浅野貞夫日本植物生態図鑑

浅野貞夫/著
全国農村教育協会
2005年10月5日発行
A4判、636ページ
本体13,000円+税
出版社からの紹介 http://www.zennokyo.co.jp/book/kusa/asano.html
再認識し、感動した『浅野貞夫日本植物生態図鑑』
先日、たくさんの植物細密画(ボタニカルアート)をまとめて見る機会があった。植物細密画教室の生徒さんたちの作品で、細密画に添えて解説文も記し、それら200点余をまとめ出版したい、ついては私からのコメントがほしいというのである。
拝見するとみなさん上手で、ていねいに描かれていた。植物にもかなりの知識をお持ちだろうと思われた。しかし残念ながら、果実と種子を取り違えていたり、細かなところで観察不足と思われるようなものがあった。肝心の植物名が怪しいものもあった。(それらは指摘させていただいた)
細密画と解説文を、私なりにしっかりと見せていただこうと、改めて手にしたのは『浅野貞夫日本植物生態図鑑』(以下浅野図鑑と略記)であった。みなさんの作品と比較してみると、浅野図鑑の図は詳細で、鮮明、正確に描いてあるのに驚いた。
浅野図鑑のすばらしさは本来、芽生えから開花結実、種子散布、越冬芽、地下部など、植物の生態のすべてを一枚の緻密な図に収めたところにある。しかし今回、さきの生徒さんの作品と比較することによって、浅野先生がいかに細部まで観察し、描写されてきたかを再認識した。そしてそれを蓄積されてきたことを思い、改めて浅野先生の図のすばらしさに感動したのである。
浅野図鑑は大型の本(A4判)で1種1ページ、ほぼ全面に図が掲載されている。贅沢な紙面で全体、花、雌しべ、雄しべ、果実、種子、地下部など手にとるように分かる。
本文ページ見本。
下はその一部分。HP画面では図のすばらしさは再現できないと思うが…
浅野図鑑は形態と生態に目を配り、精密な図と生活型記号で表している。とくに地下部の図は生き生きとした稀有の図であろう。日本の植物図鑑の質を高めたとともに、日本が世界に誇るべき、図鑑の金字塔とも言える。
植物の専門家だけでなく、植物画を愛好されるみなさんにも、ぜひお薦めしたい本である。
自然観察大学講師 川名興
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