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ミニ山野草図鑑〈離弁花編〉
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廣田伸七 編
全国農村教育協会
2013年10月19日発行
A5判 254ページ オールカラー
定価(2,900円+税) |
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出版社からの紹介→
http://www.zennokyo.co.jp/book/kusa/mn_sy.html |
待ちに待った「ミニ山野草図鑑―離弁花編―」ができました |
この図鑑を手にして、鮮明な表紙の写真にひきつけられました。さらに、ページをめくって、鮮明な写真の数々に驚かされました。編者の廣田氏は長い間、日本中の植物の写真を撮影されていらっしゃるということを伺い、なるほどと納得しました。
表紙の中央にはハマナスの写真があります。ハマナスは千葉県、茨城県付近が太平洋側の南限ということで、私の住む茨城県内にはハマナス公園も作られていて、なじみのある植物です。この写真を見ると、5枚のやわらかい花弁、多数のおしべ、葉は奇数羽状複葉、小葉は楕円形で表面にはしわやつやが有り、葉脈がはっきりしているなどの様子がよくわかります。非常に鮮明な写真で、花や葉の特徴がはっきりと表されています。 |
「ミニ山野草図鑑」のベースになったという「日本山野草・樹木生態図鑑」では「写真で生態的特徴を知り、描画で構造を見る」という構成になっています。「ミニ山野草図鑑」はコンパクトにまとめられていることから、写真だけの植物も多いのですが、花の拡大写真や描画のついた植物もあり、わかりやすく工夫されています。写真だけの植物についても、写真が鮮明なので、特徴や構造がわかりやすいと思います。
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長い間、植物を研究対象としてきた私は、本棚には大判の「日本原色雑草図鑑」と「日本山野草・樹木生態図鑑―シダ類・裸子植物・被子植物(離弁花)編」を置き、野外には「ミニ雑草図鑑」と数冊の小さな図鑑を持って行くのが習慣になっていました。勤務地が埋立地にあったため、身近な場所での調査には、「日本原色雑草図鑑」と「ミニ雑草図鑑」が非常に役に立ちました。
仕事を離れてからは、茨城県内の農村に移り住んで身近な動植物の観察をし、時間を見つけては、山仲間と県内の山に登っています。農村での観察には「日本原色雑草図鑑」と「ミニ雑草図鑑」に取り上げられている植物が多く、いつも使わせていただいています。高原や山の観察では「日本山野草・樹木生態図鑑」をよく使わせていただくことになり、携行しやすいミニ版の必要性を感じていました。場所によっては採集できないことも多いので、持参して、その場で調べることのできる図鑑が便利です。
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今回、「ミニ山野草図鑑」が発行され、早速、身近な場所で見られる低木類について調べてみました。この図鑑にはイチゴ類が26種掲載されています。それらのうち、観察できたのは、カジイチゴ、ナワシロイチゴ、モミジイチゴ、クサイチゴの4種であることがわかりました。低木類については、花期から果実期までの写真が掲載されていて、どの時期に観察してもわかりやすくなっています。
また、この図鑑には47種のスミレ科の植物が掲載されています。スミレ類の識別はむずかしいですが、生育場所の特徴や花、葉の特徴がわかりやすい写真になっていますので、同定には役立つことと思います。私が筑波山周辺の山に登ったときの記録をみると8種のスミレ類が見られました。名前のはっきりしないものがありましたので、次回はこの図鑑を持参してじっくり観察したいと考えています。 |
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この図鑑に掲載されている植物はいわゆる山野草が多いですが、住宅地でよく見られるナガミヒナゲシ、オシロイバナ、ハゼラン、ヒメツルソバなど逸出種や、高山で多く見られるチングルマ、コマクサ、ハクサンイチゲ、イワオウギなどの植物まで幅広く取り上げられていますので、この一冊で広い範囲の植物を調べることができます。さらに、山野草の近くで見られる低木類が掲載されていることで、樹木図鑑を持たなくてもすみます。樹木図鑑は重いものが多いので、軽い荷物で出かけることができるのは助かります。
最後の索引には「ミニ雑草図鑑」と「ミニ山野草図鑑」の両方が掲載されていますので、2冊セットで携帯すれば、多数の植物について調べることができると思います。 |
「ミニ山野草図鑑」を使わせていただいて、ちょっと残念に思ったことがあります。ページ番号の印刷位置が奥になってしまっていることです。「ミニ雑草図鑑」では外側の中央部に印刷されているので、非常に見やすく、この図鑑の特徴の1つであると考えていましたので。
「ミニ山野草図鑑」は室内では植物写真集として楽しみ、野外観察では図鑑として活用させていただこうと考えています。お気に入りの植物については、写真を眺めているうちに、特徴が覚えられそうです。
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最後に、「日本山野草・樹木生態図鑑―被子植物(合弁花)・単子葉植物編」と「ミニ山野草図鑑―合弁花・単子葉類編」の刊行を楽しみにしています。 |
自然観察大学講師 飯島和子 |
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かがくのとも2013年8月号
いつもとなりに
ねこじゃらし |
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伊沢尚子 文
五十嵐大介 絵
福音館書店
2013年8月1日発行
25×23cm、28ページ
定価 410円(390円+税) |
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出版社からの紹介→
http://www.fukuinkan.co.jp/magadetails.php?goods_id=23088 |
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かがくのともシリーズは5〜6歳ぐらいを対象にしている科学絵本というが、全部で28ページを追ってみて読み応えを覚えた。作者の伊沢さんが少し前から「ねこじゃらし」の絵本に取り組んでいることは聞いていたが、ねこじゃらし(エノコログサ)のような見映えのしない雑草を、どんなストーリーで仕立てるか難しいことだなと思っていた。それが見事な形で表現された。五十嵐さんの絵との呼吸もよい。 |
私は植物の名前を知ってこと足れりというのではなく、生きている形を見る、そのくらしを考える、そして正しい名前に近づく、それを自然観察の基本にしたいと考えてきた(自然観察大学の自然観察会もそんな流れを柱としてきた)。この本は「ねこじゃらし」を主役にして、そんな流れに乗ったストーリーに仕上がっている。
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エノコログサの穂で「ねこをじゃらせばねこじゃらし」「ぼくをじゃらせばぼくじゃらし」の遊びから始まり、外を歩いてねこじゃらしをさがす。あき地や道ばたにあった、たくさんあった。虫めがねで穂を見たら、つぶつぶの間に花をみつけた。どんな咲き方をするかは、作者の細かな観察によっている。
ねこじゃらしにもいろいろな仲間がある。少し変な形のねこじゃらし、ぼくの背よりも高いねこじゃらしにも出会った。これなどは現在の野外で気づく課題でもある。秋には枯れ、春にまた芽が出てあき地はまたねこじゃらしの世界になる。そして人間のくらしに密接につながっていることをしだいに考えさせる。だから「いつもとなりにねこじゃらし」なのだろう。
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伊沢さんはつとにサイエンスライターとして活躍されている。昨年は「カビのふしぎ」という大作もつくった(このコーナーで紹介)。また自然観察大学の学生(NPO会員)として観察会や室内講座にも参加されている。そんな縁も思いながらこの本を紹介した。 |
自然観察大学名誉学長 岩瀬徹 |
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毎日が楽しくなる
「虫目」のススメ
虫と、虫をめぐる人の話 |
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鈴木海花 著
全国農村教育協会
2013年7月3日発行
A5版 176ページ オールカラー
定価(1,900円+税) |
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著者ブログ「鈴木海花の虫目で歩けば」: http://blog.goo.ne.jp/mushidoko64/
出版社からの紹介→
http://www.zennokyo.co.jp/book/ykhb/mzb.html |
ひょんなことから本書の紹介を書かせてもらうことになった。この本にはいろいろな因縁があるようだ。
たとえば、本書に紹介されている高橋敬一さんである。高橋敬一さんの庭でゴモクムシダマシ(コウチュウ目、ゴミムシダマシ科)が茨城県産として初記録された。私は調査・採集して再記録をする価値があると考えて、今年初めに高橋さんにお願いした。そのときに鈴木海花さんのブログを紹介いただいたのである。読んでみると、虫以外にもいろいろと書いてあり、ほかの虫好きのブログとは少し違うという感じがした。
この人は虫に興味があるだけでなく、「虫屋屋(むしやや)」もやっているな、と思った。虫屋屋とは虫に興味のある人に話を伺うのが好きな人。○○屋とは虫好きの間でよく使われる言い方で、昆虫に興味を持つ人を虫屋、興味の中心がコウチュウならコウチュウ屋、その中でカミキリムシをもっぱらにすると、カミキリ屋、ガだとレピ屋(レピドプテラ=チョウ目)、チョウはチョウ(蝶)屋という。これと同じである。(ちなみに私はコウチュウ屋、ゴミムシダマシ屋である) |
前置きが長くなった。表紙カバーを見ると虫のエッセイかと思うが、オビは虫のきれいな写真が並ぶので写真集かとも見える。カバーを外せばエッセイ、中身は自然関係、人、旅行記… 図書館の分類ではさぞかし悩ましいことであろう。今はコードナンバーに従うのかもしれないが。
中は縦書き、算用数字は縦書きの新聞方式。フォントは小さいので、引き締まっている。版面の天地18cmのうち、文章は上の9.5cm、下は写真7.5cm。1行30字は読みやすい。写真は図鑑でないので鮮明でないものもある。写真の下には全て説明が付いているが、写真の中に2つ以上の異なる種類がある場合は、その区別が付くようにしてもらいたい。本文はどこからでも読めるので、興味のあるタイトルや写真のある部分を読むこともできる。これが、この本の特徴かもしれない。 |
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この形式をみると、読者の皆さんも自分で記録をしてみようという気になるかも知れない。デジカメ時代、まずはPC上で気軽に写真日記を付けてはいかがだろうか。冬になり屋外に出る機会が少なくなったら、見栄えを考えてきちんと作りなおすこともできる。
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著者はカメムシが好きなのは綺麗だからという。触らなければくさい臭いは出さない。オオキンカメムシ類のように全てが綺麗なわけではないが、拡大して見ると気づかなかったきれいな部分が見えてくる。
日常の観察のほかオオトラフコガネ、ルリセンチコガネ、○○さんに会いたいなど、目的を持って行動し、その時に派生することも逃さず観察・記録している。
好きなカメムシの図鑑を作った人々を訪ねる。また、夜間採集をする人、ゴキブリを飼育する人など昆虫に携わる人々を訪ね歩く。虫屋屋の本領発揮である。
出会った虫との感激の物語、食べ物、景色など、興味の対象はじつにさまざまである。それを遺憾無く発揮しているのが、虫屋屋の部分と、奈良の春日山のルリセンチコガネ探索、石垣島探訪、北海道旅行であろう。 |
著述業、会いたい虫を訪ね、自然を探索し、イベントの主催、それらをブログで紹介するなど、よほどまめでなければできない。そのうえ、主婦で母親である。一人で何役もこなす著者を、海花さんご自身で観察し、エッセイに記していただきたいものである。
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なお、鈴木海花さんはNPO法人自然観察大学の会員。われわれの同志でもある。 |
自然観察大学講師 山崎秀雄 |
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野外観察ハンドブック
「水辺の生きもの」
―トンボ・カエル・メダカの世界― |
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浅間茂・田中正彦・柄澤保彦・岩瀬徹 共著
全国農村教育協会
2013年5月25日発行
A5判 160ページ
定価(本体2,400円+税) |
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出版社からの紹介→
http://www.zennokyo.co.jp/book/ykhb/mzb.html |
関東地方南部には、平坦な台地が浸食され谷の入り組んだ地形が発達している。こうした地形は谷津(やつ)とか谷戸(やと)とよばれ、斜面林と湧水、湿地、水田などが一体となり里山の自然として親しまれてきた。本書のタイトルは「水辺の生きもの」だが、湖沼や大きな河川、海洋などは対象とせず、谷津の水系にくらすトンボ、カエル、メダカなどに焦点をあてている点が特徴的である。 |
本書の構成は、水辺の植物、トンボ、カエル、メダカの4編からなる。
「水辺の植物」は、トンボやカエル、メダカなどのすみかや餌、繁殖の場所として位置づけられ、水辺の生きものウォッチングには欠かせない。抽水植物、湿地や休耕田の植物、水草、外来植物、水辺の樹木など、水辺を代表する約40種類の植物に加えて、谷津田で絶滅が心配されているミズオバコやイチョウウキゴケなど6種類にも触れている。
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トンボ編では、水域に生息する主要トンボを水草や樹木の生え方、水田や河川の構造の違いなどにそって紹介する。さらに、トンボ特有の大きな複眼、餌の採り方、飛び方、縄張り争い、交尾や産卵など、よくある質問についてもQ&A形式で分りやすく解説している。また、トンボの特徴や分類のしかた、羽化、越冬、渡り、寿命、交尾・産卵・ふ化の様子を取り上げ、トンボの文化史では神話や童謡、唱歌など幅広く紹介している。 |
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カエル編では、身近にみられる12種類を紹介。さらに、アズマヒキガエル、ニホンアマガエル、ニホンアカガエル、シュレーゲルアオガエル、ウシガエルについてはその生活史(繁殖、越冬、幼体、移動など)を詳説した。トウキョウダルマガエルの背中線や体色の個体変異、カエルをめぐる食物連鎖(網)、カエルを取り巻く環境の変化、カエルと人のくらし(文化)など、カエルの生活や生息環境全体についてとり上げている。 |
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メダカ編では、1999年に環境庁(現在は環境省)のレッドリストにメダカが指定された背景や宇宙メダカ等の話題を取り上げ、メダカの生息する風景の意義に触れている。さらに、世界のメダカ・日本のメダカ、メダカの生活史、メダカとカダヤシ・グッピーとの違い、メダカの生息環境など、メダカを通して水域の環境全体が理解できるよう編集さている。また、メダカと共に生きる魚として、タモロコ、モツゴ、フナの仲間、タナゴの仲間、ドジョウの仲間、ナマズ、トウヨシノボリなどを取り上げ、谷津の淡水魚全体の理解へとつなげている。 |
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最後に、著者ら4氏による座談会形式で、トンボやカエル、メダカの立場から谷津の自然やその保全について意見を交わしている。長年にわたり、千葉県内の谷津や湿地で具体的な保全活動や環境教育を実践してきた著者だけに、釣人の問題、水田や水路の管理・構造の問題、農薬や外来魚(ブルーギルなど)など、話題は幅広く具体的であり、谷津や水辺の生物に関心のある人はもとより、環境問題に関わっている多くの人にとって参考になる内容となっている。 |
自然観察大学学長
唐沢孝一 |
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「ざっそうの名前」
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長尾玲子/作
福音館書店
2013年4月15日発行
19×22cm 32ページ
定価1,155円(本体1,100円) |
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出版社からの紹介→ http://www.fukuinkan.co.jp/book/?id=1471 |
最近、雑草を書名にした本をよく見かけるようになった。雑草に関心をもってきた者としては嬉しいことだが、中身はいろいろで、中には「雑草」を適切にとらえていないようなものも、なきにしもあらずである。 |
この本は正しく庭の「ざっそう」を見ている科学絵本である。しかも5才から小学校初級向きとしてあるのがいい。夏休み、太郎くんがおじいちゃんの家にスイカを持って遊びにくる。おじいちゃんは、ヒメジョオンのわきの水道でスイカを冷やしておこうというが、太郎はヒメジョオンが何のことかわからない。それが自分で生えてきたざっそうで、ちゃんと名前があることを聞いて驚く。
それからカタバミ、トキワハゼ、ツユクサなどと教わりだす。とげとげの葉っぱはオニノゲシ、地面に葉っぱがくっついているのがオオバコと、おじいちゃんの話は的確だ。アサガオに似ているヒルガオ、どっしりしているオヒシバ、やさしい感じのメヒシバ、木にからみついいるヤブガラシ、臭いドクダミやヘクソカズラ、夕べの花がしぼんでいるマツヨイグサなど、次つぎに出会う。ぼくはおじいちゃんのまご、この草はキツネノマゴ、好きになっちゃうな、と太郎くん。たくさんのざっそうの名前を教わってから食べたスイカはおいしかった。楽しかった、秋や春もまた見よう、と約束した。 |
作者の長尾さんはすでに刺繍絵本で定評があると聞く。雑草を観察し、やさしさのある絵でストーリーができている。このようなおじいちゃんが増えたら、世の自然観は変わるであろうと思った。
季節的に多少無理があるかなと思う種が二、三あるが、本のねらいからすれば許容の範囲であろう。 |
自然観察大学
名誉学長 岩瀬 徹 |
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「身近な
雑草の芽生え
ハンドブック」
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浅井元朗 著
文一総合出版
2012年12月20日発行
新書判 120ページ
定価1,470円(本体1,400円+税) |
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出版社の紹介→ http://bun-ichi.seesaa.net/article/145876443.html |
このような本が出版されて、雑草の芽生えが植物の世界で少しずつ地位を得ているのかな、と感じています。芽生えは植物にとっては非常に大切な時期ですが、小さく、目立たないことから、今まであまり重視されなかったように思います。
この本の大きな特徴は、芽生えの大きさにこだわっていることです。実物大が比較できる芽生え一覧や写真には1mm,5mm,1cm,3cmのスケールバーが記載されています。これらの工夫は実際に野外で観察するときに非常に役に立ちます。大きさがわかることで見つけやすくなります。本書はさらに、芽生え→幼植物→成植物→花と各生長段階の写真が掲載されています。芽生えの名前がわかっても、どのような植物かがイメージしにくいときに便利です。このような工夫は実際に雑草の調査・研究にたずさわった著者自身の必要性から生まれたのではないかと思います。 |
長い間、植物群落の二次遷移の研究をしている私にとって、雑草の芽生えの同定はどうしても必要なことです。研究を始めた20数年前には芽生えの図鑑のようなものはほとんどありませんでした。研究をされている方のスケッチが唯一の資料でした。そこで、調査開始前に、調査地周辺で見られる植物の種子を採取、播種し、芽生えから開花までの様子を写真やスケッチで記録しました。それでも、調査を開始してみると、わからない芽生えが多く、写真、スケッチ、マーキングなどによって、生長してから同定した種がかなりありました。 |
その後1995年に、浅野貞夫氏の「原色図鑑 芽生えとたね−植物3態−芽生え・種子・成植物」(全国農村教育協会)が出版されてからは、この図鑑の芽生えの描画と各生長段階の写真を毎日眺めていました。この図鑑の特徴は、種ごとの芽生えが精密な描画と説明文で書かれているため、各器官の特徴をつかみやすいことです。それでも、なかなか覚えることはできませんでした。そこで、図鑑の記載と実物を比較することになります。しかし、この本はA4判で厚さも約2cmあるため、持ち歩くには適していません。身近な場所での観察には携帯して比較しましたが、少し離れた場所での観察・調査のときには、芽生えを採取する、写真を撮る、スケッチするなどして比較しました。 |
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その点で「身近な雑草の芽生えハンドブック」は持ち歩くのに非常に便利です。芽生えの現場に持って行って比較できます。芽生えはいたみやすいため、生えている状態で比較できることが同定には重要なことになります。
これからは、芽生えの調査にはこの小さく軽い浅井氏のハンドブックを携帯して、生えている状態の実物と比較し種名を知り、帰宅してから浅野氏の大きな図鑑の描画でじっくり形態を調べるという方法がいいかなと考えています。
日々、活用させていただいているハンドブックですが、残念なのは、私の遷移調査地の先駆種として最も多かったコスズメガヤの記載がないことです。埋立地の調査地には非常に多かったのですが、農耕地ではあまり見られないのでしょうか。
「あとがき」で著者が述べているように約20年間の研究生活で撮りためた写真をまとめたとのこと。毎日の小さな記録が長く続くと、特に、生物の世界では大きなものとなることを、この1冊は教えてくれています。 |
自然観察大学講師 飯島和子 |
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