春限定の湧き水
今年は春らしからぬ寒い日が続く。4月はじめに、今年5月から開催する観察会予定地の野川公園を訪れたが、前回話題となったクマノミズキの芽は硬く閉じ、寒さにやられたためか黒褐色を呈していた。
4月6日、手がけている図鑑用の取材で千葉県の某所を訪れた。この日は春爛漫であった。このときのクマノミズキはちょうど新葉が開きはじめたところだった。
枝を切ると、水滴が出てきた。
切るとすぐに湧き出てきて、あとからあとから滴り落ちてくる。
写真だけ見るとどうということのないものだが、ご指導いただいた先生によると、『この現象は、芽吹きの時期、気温が20度を超えるような暖かな日の昼間だけに起きるので、運がよくないと観察できません』との由。春限定の湧き水だ。
クマノミズキから滴る水(4月6日、千葉市)
許可をいただいて切っています。
静止して見える樹木が、内部ではさかんに活動している証しだろう。事前にそのことを聞いていれば、もっと気合を入れて撮ったのに、残念だ。切り口もささくれ立っている。
クマノミズキはミズキと近い仲間で、水が出るから『ミズキ』が語源だともいわれているようだ。そうだとしたら、かつて命名した人の観察眼には敬服させられる。
その場に居合わせた数人が、かわるがわる水滴を飲んでみた。ほのかに甘い感じがした。
花期のクマノミズキ(2007年6月、三鷹市都立野川公園にて)
【注】むやみに枝を切らないように。今回は許可をいただいて切っています。
報告:事務局O