2003年 自然観察大学 第3回
(その1)
前回と打って代わって、第3回観察会は快晴のもと開かれました。前回から3ヶ月半たち、生き物たちの世界にも変化はありました。当日はいろいろな生き物と遭遇しましたが、その一部を紹介いたしましょう。
集合
 
 木の実を探す
春から夏にかけて見てきた斜面林の樹木にも実ができています。
ツリバナ:赤い落下傘を付けたような実ができています。赤い部分は仮種皮と呼ばれて2個の種子を包むようになっています。実に見える部分は、果実ではなく種子で、おいしい果肉はありません。だまされる鳥もいそうです。
コブシ:前回の観察会で見られたゲンコツのような果実から赤い種子が現れています。コブシは多数の果実がかたまって着き、それぞれに種子ができます。これを集合果と呼びます。
ツリバナの果実
ツリバナの果実
コブシの果実
コブシの果実(赤いのは果皮が割れて現れた種子)
 エゴノネコアシアブラムシ

エゴノキにたくさんあったバナナ型の虫えいはほとんどなく、あってもひからびています。中のエゴノネコアシアブラムシはどこにいったのでしょうか。第2回の観察会のあと、7月中旬、エゴノキの虫こぶから翅(はね)をもったアブラムシがイネ科のアシボソに移住します。夏の暑い間は木よりも草のほうが、餌である植物の栄養状態がよく、住み心地が良いのでアシボソで夏越しするのです。晩秋にはまたエゴノキに戻り、そこで雄と卵を産む雌が生まれます。このように季節により、異なった植物間を移住することを寄主転換といいます。
エゴノネコアシアブラムシ
アシボソで見られたエゴノネコアシアブラムシ
(2003年10月4日)
エゴノキの虫えい エゴノネコアシアブラムシ
エゴノキの虫えいと、虫えいの中のエゴノネコアシアブラムシ(同6月14日)
 ツリフネソウをめぐって
ツリフネソウの花は変わった形をしています。がく片の1個が大きな筒型で、後部が細い渦巻きのようになっています。ここを距(きょ)といいます。距には蜜があってトラマルハナバチがこれをなめにきます。そのとき背中にツリフネソウの花粉がつきます。別の花に行ったとき、この花粉がその花の雌しべにつくという仕組みです。一つの花では雄しべと雌しべの熟す時期がずれているので、他の花どうしの受粉がうまくいくことになるのです。クロホウジャクというガの仲間もやってきますが、これは吻が長いので花の外から蜜を花粉媒介には役立ちません。
ツリフネソウには写真のような虫こぶも見られます。これはホウセンカコブアブラムシの寄生により作られました。さらに、アブラムシを目指してヒラタアブが集まってくるなど、ツリフネソウをめぐる、いろいろな虫たちの環ができています。
ツリフネソウで見られた生き物たち ツリフネソウで見られた生き物たち
ツリフネソウで見られた生き物たち(田仲義弘原図)
●ツリフネソウとさや
ツリフネソウの花が咲いていました。この花は水辺を好むためこの公園でも多く見られます。花の脇にある刮ハはふくれ、十分に熟しています。これにそっとさわってみてください。瞬間的にさやが割れて、中の種子がはじけ飛んでしまいます。ツリフネソウははじけることで種子を散布しているのです。
解説する講師
ツリフネソウを見ながらを、ポスターで解説。
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 ニオイタデ(どこからにおいがするの)
ニオイタデが赤い小さな花をつけています。ニオイという名前から、においがするはずです。そして分かったのは、ニオイタデの茎には毛と腺毛が密生していますが、この腺毛から出る粘液がにおっているということです。けっして葉からではありませんでした。
まずは試してみましょう、これが自然観察の第一歩です。ちなみに、ニオイタデが見られるのは千葉県では、この公園だけだそうです。
ニオイタデ
ニオイタデ
 オオハキリバチの巣
バラ園の休憩所にある飾りの柱をよく見ると、土の塊りがありました。スズバチの巣です。スズバチはすでに羽化し、その時に開けた穴が開いています。その捨てられたスズバチの巣を再利用している蜂がいました。オオハキリバチです。「ハキリバチ」と言う名前は付いていますが、オオハキリバチは葉は切りません。この巣を見ると、入り口が松ヤニで固められていますが、松ヤニを使うのがオオハキリバチの特長です。
スズバチの巣
オオハキリバチ オオハキリバチと巣
(参考)
(田仲義弘原図)
オオハキリバチが再利用するスズバチの巣
 
10月に入ってまもないこの日は、どんぐりには少々早かったようです。このホームページを作るころにはちょうど良くなっているかもしれません。「校庭の樹木」から、ドングリの頁を載せておきます。参考にしてください。
どんぐりくらべ
どんぐりくらべ
どんぐりくらべ(校庭の樹木より)

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2003年度 野外観察会の報告
第1回目 第2回目
第3回目
(その1)
第3回目
(その2)
第4回目