2003年 自然観察大学 第4回
第4回自然観察会は場所を変えて、東京湾に面した葛西臨海公園の野鳥園での開催です。葛西臨海公園は、荒川と旧江戸川に挟まれた東西2kmの埋立地につくられた海に面した公園ですが、埋め立てられる前は、多くのシギやチドリ、カモ類が群れる干潟だったようです。埋め立て後はいろいろな樹や植物を植え、平成6年に野鳥園が開園し、最近では野鳥スポットとしてよく知られていますが、「・・埋め立て前の干潟やそこに生きる海辺の動物、渡り鳥の素晴らしさはとても言葉では言い表せません」と講師の唐沢先生の解説がありました。
折からの台風21号による雨の観察会となりましたが、野鳥観察舎を利用するなど野鳥のいろいろや、環境と植生などを観察しました。
地図1 地図2
地図3 地図4
公園の案内板
 ホルトノキ
野鳥園の入り口にホルトノキがあり、緑色の果実を着けています。樹木にとって野鳥は果実を運んでくれる大切な媒介者です。しかし、歯のない鳥は果実を一口で飲み込まなければならず、木はあまり大きな実を着けても野鳥が飲み込めないので運んでもらえません。でも、鳥はラグビーボールのような細長い実なら飲む込むことができます。例えば、果実を食べるヒヨドリは野鳥の中で比較的大きな部類に属しますが、12mmくらいの果実を飲み込むことができ、短径が12mm以下の果実なら運んでもうらうことができます。
ホルトノキの果実
ホルトノキの果実
 ムクドリとナンキンハゼ
ホルトの木での解説が終わる頃、後ろのナンキンハゼの木にムクドリが30〜40羽の群れで飛んできました。ムクドリのように群れて餌をとるタイプの鳥では、群れのサイズは餌の量や分布のしかたに関係する、そんな教科書のような事例が何ともタイミングよく観察できました。
ムクドリ
ムクドリ(唐沢原図)
 いろいろなカモ
野鳥園の淡水池ではたくさんのカモが休んでいます。強い風が吹き、雨が降っているこの日はカモ達もこの池に避難してきているのです。この日は、キンクロハジロ、ホシハジロ、ヒドリガモ、オオバンなどがいました。
淡水池1 淡水池2
池に避難してきたカモの群れ
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 カモの餌取りと足の位置
上から、潜って餌を採るカイツブリの仲間、同様に潜る海ガモの仲間のスズガモ、逆立ちして水底の餌を採る淡水ガモの仲間のカルガモ、陸上で主に餌を採るガンの仲間です。足が後ろにあるほど、水を蹴りやすく潜水を得意としますが、地上ではバランスが悪く、歩くのは得意としません。野鳥は体の形に合わせた餌の採りかたをしているのです。
ハジロカイツブリ カルガモ
スズガモ シジュウカラガン
足の位置(野鳥博士入門・より)
 カモの羽の模様
カモは一般的に雄が派手な羽毛を持ち雌に求愛します。でも、派手な羽毛は天敵に見つかりやすいという不利があります。このため、日本に渡って来るときは、雄も雌の模様によく似た地味な模様をしています。これをエクリプス羽といいます。日本にやって来ると、すぐに換羽を始めます。これは繁殖地での短い夏を繁殖に有効に使うために、越冬中の日本で雌を探してつがいを形成しておく必要があるのです。1〜3月になると、求愛行動なども観察されます。
カモの羽1 カモの羽2
カモの羽3 カモの羽4
カモの羽5 カモの羽6
コガモの換羽(野鳥博士入門・より)
 セイタカシギとタシギ

雨のなか、海に近い汽水池に移動です。汽水池では、セイタカシギが観察されました。足の長い特徴的な形をしています。10羽前後の群れでさかんに餌を採っています。一方、隣の杭の上にはタシギが休んでいます。こちらは1羽。野鳥の中には群れる習性持つものと、単独で行動するものがいます。野鳥にとって餌を採ることがもっとも重要ですが、単独と群れ生活でどのような違いがあるのでしょうか。

セイタカシギ
餌を探すセイタカシギ
 公園の植物

人工海岸にはイソギクが黄色い花を咲かせています。この植物は関東南部に分布していますが、すこし離れたところではハマギクが白い花を咲かせています。しかし、ハマギクは茨城県より北に分布するもので、東京湾には生息していません。埋め立ての際に、移植されたものです。また、大きな葉を広げたハマオモトは南方系の植物です。海の底であったこの公園には元からの植物がありません。どれも移植されてきたものです。結果として、北のもの、南のものが入り乱れてしまったのです。

イソギク1 イソギク2
海岸に咲くイソギク
最後に
解説する講師1 解説する講師
野鳥の観察法を写真を使いながら解説
今回で2003年の自然観察大学・観察会は終わりです。市川市の動植物園とここ葛西臨海公園での計4回の観察会ではいろいろな植物・昆虫・クモ・野鳥など、身近な生き物を見てきました。最後は、皆勤賞の方々に修了証の授与式です。自然の見方がもう一歩深くなることをお祈りいたします。

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2003年度 野外観察会の報告
第1回目
第2回目 第3回目
第4回目