2003年 自然観察大学 第2回
(その1)
第2回観察会はあいにく雨の中での観察会となりましたが、雨天ならではの生き物も姿を見せ、なかなか充実した観察会となりました。観察会の様子は何回かに分けてご報告いたしましょう。
観察会の様子
傘さしての観察会
著者の近況
唐沢孝一先生
 「カラスはどこまで賢いか」が文庫化されました(中公文庫)。中公新書の内容を増補改訂されたとのことです。著者紹介の欄に「自然観察大学・副学長」とあります。
浅間茂先生・中安均先生
 両先生による「校庭の生き物ウォッチング」(小社刊)が完成しました。いろいろな生き物を総合的に取り上げ、生き物同士や環境との関わりを様々な視点から解説したものです。
地図1 地図4 地図7
地図2 地図5 地図8
地図3 地図6 地図9
 カワセミの構造色
 前回、最後に姿を見せたカワセミが今回も姿を見せてくれました。しかし、その姿をゆっくり見せてくれることはなく、輝く姿を残してすぐに飛び立ってしまいます。
 カワセミのこの輝きは、羽毛の構造によって発せられたもので、羽毛に色があるわけではありません。これを構造色と呼びます。晴れた日にはきらきらと輝き、曇った日には灰色がかりますが、こうした色はタカなどの天敵が上空から見ると、背景の水面に紛れて見えにくくなる保護色となります。
カワセミ
輝くカワセミの羽毛(「野鳥博士入門」より:平野原図)
ミドリシジミの翅

 構造色は昆虫でも見られます。観察会終了後に講師の先生方と歩いて見つけたミドリシジミは翅を開くと、中からきらきらと輝くきれいな緑色が現れます。普段は翅を閉じて保護色となる地味な茶色の面を見せていますが、ときどき翅を開き美しい緑色を見せてくれます。美しい緑色は私たちの目は楽しませてくれますが、ミドリシジミはなぜ天敵に目立つようなことをわざわざするのでしょうか。講師の田仲先生の解説によると、雄が雌に示す求愛行動だということでした。
ミドリシジミ
翅を広げたミドリシジミ
 林の構造
 動きのないように見える林を長年見ていくとその変化に気づきます。岩瀬学長はこの公園を長年観察されてこられましたが、この公園が作られた30年前は斜面にはマツがずいぶんとあったがだんだんとなくなり、その後には雑木林が形成されてきたとのことです。
 斜面林は林のつくりを観察するのにとても適しています。斜面の下から見ると、林の中の木は大きな高木とその下に生えてくる低木からなっていることが、立体的に観察できるのです。
 この公園ではイヌシデ、クヌギ、ケヤキなど、落葉樹が高木層を形成します。
 道沿いに林縁を見ていくと、高木の下には、マユミ、エゴノキ、ツリバナ、ムラサキシキブ、イロハカエデ、ヌルデなど、多くの低木が見られ、次の時代の高木層になろうとしています。
雑木林
かつては雑木林は薪炭(しんたん)を取るのに利用されていましたが、今ではどの家庭でも薪(まき)を使うことはなくなっています。そのため、林は更新されることがなくなり、木々は成長を続け大きく育っています。この斜面はやがて極相林に変わっていくものと思われます。
ネット図鑑 斜面林を形成する樹木(「校庭の樹木」より)
イヌシデ
葉を落としたイヌシデ
イヌシデ:カバノキ科。落葉樹。雑木林の中や人家の周辺によく見られる。幹は直立し、高さ15〜20mになる。樹皮は灰褐色で滑らか。太くなると縦に浅い割れ目が走り、特有の模様をつくる。葉は2列互生し、卵形で縁には鋸歯がある。3〜4月、雄花序は長い穂となり、前年の枝に多く垂れる。
イヌシデの葉
葉は互生する
イヌシデの幹
樹皮は灰褐色で滑らか
クヌギ
大きく生長したクヌギ
クヌギ:ブナ科。落葉樹だが、冬まで多くの葉を残す。雑木林の主要な樹種。幹は直立し、10〜15m。樹皮にはふぞろいな深い割れ目が多い。葉は互生し、クリの葉に似て長い。葉の裏に初め毛があるが、すぐになくなる。4月花を付ける。雄花序は前年の枝の上部から出て、穂を垂れる。秋には平たいどんぐりを付ける。
クヌギの葉
長い葉を付ける。2度目の新葉
クヌギの幹
樹皮には深い割れ目がある
ケヤキ
生長し独特の樹形となる
ケヤキ:ニレ科。落葉樹。巨樹、名木とされるものが多い。幹は直立し、15〜20m、時に30mにもなる。太い枝がよく広がり、独特の樹形となる。樹皮は灰白色で平滑だが、古くなると薄くはげ落ちる。葉は2列互生。葉の縁には円みを帯びた鈍鋸歯がある。4月に花を、新しい枝の下部の葉腋に付ける。
ケヤキの葉
葉には鈍鋸歯がある
ケヤキの幹
樹皮は滑らか
葉が互生に付く
エゴノキの花
エゴノキ:エゴノキ科。林内や林縁部に多く見られる。幹は直立し、上部で枝を広げる。高さ5〜8mまで成長する。樹皮は淡黒褐色で平滑。葉は互生し、卵形で先の方がとがる。全縁か低い鋸歯がある。5〜6月、今年出た短い枝の先や葉腋に花序を出し、白い花を付ける。果実は卵円形で灰色緑色。
エゴノキの幹
淡黒褐色の樹皮(緑の部分は地衣類)(川名原図
 トンボの季節
 今回の観察ではトンボがずいぶんと飛んでいました。一番目に付いたのがノシメトンボです。翅の先端に黒い斑があり、全体に茶色をし、あまり赤くありません。でもアカトンボの仲間だそうです。学校ではプールでよく見られる種類だそうです。
 湿原を巡る周回路の脇では、オニヤンマがじっと草に止まっていました。大きく堂々とした姿はトンボの王様といわれています。羽化直後で翅が乾くのを待っているのでしょうか、じっと止まったの状態でした。黒い体色に黄色い斑紋は警戒色といえるのでしょうか。
 その他にも、シオカラトンボもさかんに飛び回っていて、6月はトンボの季節といえます。
オニヤンマ
翅が乾くのを待つオニヤンマ
 エゴノキのこぶ
 エゴノキの枝に小さなバナナのようなものがぶら下がっているのが見つかりました。これはアブラムシが寄生することにより形成された虫こぶです。ネコの足のような形をしているところから、エゴノネコアシと呼ばれます。これを作るアブラムシはエゴノネコアシアブラムシです。前回、エゴノキではエゴノツルクビオトシブミが観察されましたが、いろいろな生き物が観察されます。
エゴノネコアシ
虫こぶのエゴノネコアシ
エゴノネコアシアブラムシ
虫こぶを割ると中にエゴノネコアシアブラムシが見られる
雨の中、クロコウガイビルが巻き貝の仲間を食べているのを見つけ、ウシガエルの独特の鳴き声が聞こえ、講師の川名先生はアオダイショウを手にとって見るなど、盛りだくさんの観察会でした。ここではとても紹介しきれませんので、第2弾を近日中にアップロードします。ご期待ください。
アオダイショウ
アオダイショウに触れてみる

ページトップに戻る↑
2003年度 野外観察会の報告
第1回目 第2回目
(その1)
第2回目
(その2)
第2回目
(その3)
第3回目
第4回目