2006年  自然観察大学 第1回
2006年5月14日(日)
場所:我孫子市岡発戸
(おかぼっと)
後援:我孫子市
新緑の5月、2006年度自然観察大学の第1回観察会が開催されました。
天気は、雨のち曇り。雨露に洗われた緑美しく、虫たちが姿を現すには程よい気候となった観察会、当日の模様をほんの少しご紹介しましょう。
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観察会当日に見ることができた生き物のリスト

植物
● 草本
カントウタンポポ
セイヨウタンポポ
セイタカアワダチソウ
ヒメオドリコソウ
オオカラスノエンドウ
カラスノエンドウ
スズメノエンドウ
ムラサキケマン
セリバヒエンソウ
オランダミミナグサ
ミミナグサ
ウラシマソウ
ショウブ
● 木本
サルトリイバラ
イヌシデ
クヌギ
コナラ
シラカシ
エノキ
ムクノキ
シロダモ
ニガキ
アカメガシワ
ヌルデ
アオキ
エゴノキ
ニワトコ
アカマツ
スギ
鳥類
ダイサギ
チュウサギ
コサギ
ウグイス
オオヨシキリ
ハシボソガラス
スズメ
ハクセキレイ
ツバメ
ヒヨドリ
ムクドリ
オオタカ
サシバ
キジ
コジュケイ
キジバト
コゲラ

軟体動物

ヒダリマキマイマイ

 

昆虫
セイタカアワダチソウヒゲナガアブラムシ
ニワトコヒゲナガアブラムシ
ホウセンカヒゲナガアブラムシ
クヌギミツアブラムシ
ツマキチョウ
ヤマトシジミ
イチモンジセセリ
ギンイチモンジセセリ
クロハネシロヒゲナガ
ホソオビヒゲナガ
スジモンヒトリ(ヒトリガの幼虫)
ヒゲナガハナノミ(ジョウカイボン)
トウキョウヒメハンミョウ
モモブトカミキリモドキ
エゴツルクビオトシブミ
ヒメクロオトシブミ
コナライクビチョッキリ
ヒラタアオコガネ
イチモンジカメノコハムシ
ジンガサハムシ
サラサヤンマ
アワフキムシの一種
クロヒラタヨコバイ
ヨコヅナサシガメ
セミの幼虫
アリジゴク(ウスバカゲロウの幼虫)
キゴシジガバチの巣
キボシアシナガバチ
コアシナガバチ
フタモンアシナガバチ
キオビツヤハナバチ
ムカシハナバチの一種
ヤマトシリアゲ
クモ
オオヒメグモ
シロカネイソウロウグモ
アシナガグモ
オオシロカネグモ
ゴミグモ
ヤマシロオニグモ
アズマキシダグモ
クサグモ
ハナグモ
ワカバグモ
イナズマハエトリ
ネコハエトリ
両生類
シュレーゲルアオガエル
ニホンアマガエル

本年度訪れたのは、千葉県我孫子市岡発戸(おかぼっと)。利根川と手賀沼の間に位置する谷津(やつ)です。関東出身でない人にとっては、馴染みの薄いこの言葉。谷津とは、大昔、海退時(寒い時代)は谷が形成され、海進時(暖かい時代)は海になって土砂が堆積し、そして再び海退が起こり、「斜面に囲まれた低地」になった場所のこと。斜面に低地が囲まれるので、低地に集まる水の流れは滞り、底は湿地になるというわけです。その場所を利用してできた水田を谷津田といいます。
そして、ここ岡発戸の谷津で、20年計画の野外博物館「谷津ミュージアム」事業が開始されて、はや4年。我孫子市と我孫子市民が、昭和30年代の豊かな農村環境の復元を目指し、「谷津守人」として復元活動に取り組んでいます。現在水田は、手賀沼の水を潅漑用水として利用しています。
さて、どんな生き物に出会えたでしょうか。
風景1 風景2
斜面林の緑
新緑が大分伸びてきた落葉樹と落葉の季節を迎えた常緑樹。常緑樹の落葉は、新しい葉を出し古い葉を落とす。常緑樹の葉は、寿命が長い。
 観察が2倍 楽しくなる方法
「これはクリですか? クヌギですか? 」
クリだかクヌギだか、はたまた・・・・・・ 葉っぱを裏返すと、そこには黄緑色をしたアブラムシが居ます。その名はクヌギミツアブラムシ。
アブラムシの大部分は、自分たちの寄生する植物が決まっている“寄主特異性”のこだわり派。植物が分かればそこに寄生するアブラムシの見当がつき、逆にアブラムシの種類が分かれば、宿主の植物の目星がつくというわけです。
小さなアブラムシを見つけるには、植物の新芽、変形している葉、共生関係にあるアリが集まっている植物、アブラムシの天敵のテントウムシやハナアブ類の幼虫などを探すことがポイントだそうです。
ところで、アブラムシは子どもを産むことができるって知っていましたか?これには、卵から孵る時間がかからない分、子どもが早く成長し、早く繁殖活動に参加することができるという利点があるのだそうです。一体、どうやって繁殖しているのでしょう?アブラムシの興味深い生態。詳しくは、『改訂 校庭のクモ・ダニ・アブラムシ』をご覧ください。
アブラムシ1 アブラムシ2
ニワトコヒゲナガアブラムシ
触角が長いのでヒゲナガの名が付いた。これからコロニーが大きくなりエサが少なくなるので、翅(ハネ)をもった分散型のアブラムシが出現、夏にはニワトコから消える。翅のない増殖型は、子どもを産む。卵ではなく子どもを産むことで、早く成長させ、数を増やすことができる。
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 性転換をする!?不思議な花
性転換をするという不思議な花に出会いました。花の時期は終わりかけていましたが、薄暗い斜面に沿って、自生していたのが、ウラシマソウ。
この花は、栄養状態が悪く株がまだ小さい時には雄花を、月日を経て成長して大きくなると雌花をつけます。時にはその中間、雌雄同株だったりもします。
参考文献:「写真で見る植物用語」
ウラシマソウの自生している様子
ウラシマソウ3
ウラシマソウ2
ウラシマソウ1
雄花 雌花
雌花(左)と 雄花(右)
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 蜂のお母さん奮闘記!
観察ルートの途中、石垣に目を懲らして見ると、フタモンアシナガバチの巣がありました。梅雨前は巣作りの季節。まだほんの小さな巣が、お互いに干渉しないよう等間隔に並んでいます。
巣の作り方、繭の色、巣の形はハチの種類によって様々。また、天敵であるアリの襲撃を防ぐため、巣と石垣を繋ぐジョイント部分に、母蜂が忌避物質を塗り込めているものもあります。
秋、交尾した雄は死んでしまい、春、一頭だけで巣作りを始める雌。枯れ木の皮を削り取り、唾液でこねて作った巣はまさにパルプそのもの。お母さん蜂の奮闘は、生まれた子ども達が成長して働き蜂として手伝ってくれるようになる6月中旬頃まで続き、その後は産卵に専念するとのことです。ちなみに、雄が現れるのは、7月末〜8月頃とのことです。
参考文献:「校庭の昆虫」
観察会の様子1 観察会の様子2
石垣の周りで説明を聞く参加者
「巣作りの途中で雨が降り、湿ってカビが生えてしまうと、その巣はもう使われることはありません。」

アシナガバチ1

アシナガバチ2

フタモンアシナガバチ
元々は草原性で、草の茎に横向きに巣をつける。針は産卵管の発達したもの。雄は刺さない。
アカマツの実の説明風景
岩瀬先生1
岩瀬先生2
新枝に雄花穂と雌花穂がついていた。
雄花穂 雌花穂
アカマツの雄花穂(左)と 雌花穂(右)
雄花穂と雌花穂は、大体別の枝につく。
本などでは雄花穂と雌花穂が同じ枝についている姿が紹介されることが多いが、それはむしろ珍しい。
参考文献:「写真で見る植物用語」
セリバヒエンソウ
清楚に美しく咲くセリバヒエンソウ。
外来種。
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 豊かな自然の象徴、シリアゲムシ

2004年12月の室内講習会で紹介したシリアゲムシ。満を持し、ここ岡発戸で自然観察大学に初登場です。
シリアゲムシは林縁部にいることが多いそうなので、岡発戸の斜面林の道沿いは最適の棲家ですね。
シリアゲムシの雄は、ハサミ状になった尾の先端で雌をつかんで交尾をします。
また、シリアゲムシの仲間のガガンボモドキは、交尾の際、雄が雌にプレゼントすることが知られていますが、大きくて美味しいエサほど効果が高いようです。
今回観察できたヤマトシリアゲは、そこそこ自然が残っている場所なら見られることがあります。でも、一度自然が失われると、いくらその場所に自然を復元しても、飛翔力の弱いシリアゲムシは周辺の生息地から飛んでくることができません。ということは、岡発戸には、昔からの自然が残されているのではないでしょうか。次回以降の観察会も楽しみです。
シリアゲムシについて詳しくは、こちらをご覧下さい。2004年度 室内講習会

ヤマトシリアゲ雄 ヤマトシリアゲ雌
ヤマトシリアゲの雄(左)と雌(右)。名前の通り、お尻が上がっている。雄のお尻の先は、ハサミ状。
スジモンヒトリの幼虫1 スジモンヒトリの幼虫2
其処彼処の葉に、ヒトリガの一種スジモンヒトリの幼虫が死んでいました。
何らかの病気にやられてしまったのではないかと推測されますが、ただ今原因を究明中です。
判明したら、またお知らせします。
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 クモの網の秘密
クモの網は、横糸が粘り、大きな虫が来ると、横糸だけが切れる作りになっています。網を張り替える時は糸を食べてしまいます。早い時では30分後にはその食べた糸は消化され、再び糸いぼ(腹部の後方にある器官)から出して網を作り直します。このように、クモはリサイクルの達人です。ちなみに、ジョロウグモだけは、9月を過ぎて大きな網を張る頃には、全部の網でなく網の半分だけを作り直します。
アシナガグモの網1 アシナガグモの網2
アシナガグモの網
クモの網が多いか少ないか?クモの網は、昆虫数の豊かさをはかる指標。
オオヒメグモ2
オオヒメグモ1
オオヒメグモ
クモは、餌の取り方もさまざまです。例えば、不規則網を張るオオヒメグモの網。粘球がついているのは、土や壁に付着している糸の5mm上の部分にいくつかだけです。その粘球部分に虫がベチャッとつくと、糸が切れてエサはつり上げられるので、網全体が壊れることはありません。
ところで、九州ではコガネグモの雌同士のクモ合戦が有名ですが、観察会では、ネコハエトリの雄同士のクモ合戦の話題で盛り上がりました。この遊びは、横浜や房総で行われてきました。
クモの張る網の形や求愛の仕方などは、種により様々。身近にいるいろいろなクモを観察して比べてみると面白いですね。
参考文献:「改訂 校庭のクモ・ダニ・アブラムシ」
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 釣れた!トウキョウヒメハンミョウ
地面に点々と開いた、直径2〜3ミリの穴。これはいったい何でしょう?
正体はトウキョウヒメハンミョウの幼虫の巣。幼虫は顎が発達しており、穴の中で待ち伏せしながら獲物が来るとパッと捕まえて、穴の中へ引き込むのだそうです。この時、回りながら引き込むので、穴のまわりの土が削れて角が取れています。
細い枯れ枝や草などを巣穴に差し込み、幼虫をおびき出して釣るハンミョウ釣りは、昔ながらの遊びだったそうです。ここで、講師の一人が釣りに成功。噛み付いた瞬間に引き上げる・・・・・・ このタイミングが難しい。「私は子供のころ輪ゴムの切れ端で釣りました。」「ニラを入れると、いやなものだから顔を出すことが多いですよ。」などなど、その後しばらくハンミョウ談義に花が咲き、皆さんハンミョウ釣りに興じていました。もちろん、釣った獲物(?)は、元の場所へリリースしました。
ヒメハンミョウの幼虫の穴1 ヒメハンミョウの幼虫の穴2
トウキョウヒメハンミョウの幼虫の穴
トウキョウヒメハンミョウ1 トウキョウヒメハンミョウ2
トウキョウヒメハンミョウ成虫
ムラサキケマンの果実が熟していた。指で触るとクルッと弾け、種子が飛び出るのが面白い。種子に付属する突起に、種子散布の媒介をするアリが好む物質を含む付属体(エライオソーム)が付いている。 ムラサキケマン 種子を運ぶアリ
参考文献:「写真で見る植物用語」
水辺から数メートル離れたフェンスで羽化したばかりのサラサヤンマに出会った。
サラサヤンマ1 サラサヤンマ2
※写真は、生物部の生徒さん達と参加してくださった
  中央学院高校教諭 秋山信さんからご提供いただきました。
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突然ですが、ここでクイズ。
Q.何という鳥でしょう?
1 ケンケーン
2 ホーホケキョ
3 ケケシケケシ
正解
1 キジ。雄は求愛のためにとさかの部分が鮮やかな赤色になるそうです。
2 ウグイス。斜面林の藪の中から声がしました。
3 オオヨシキリ。湿原の葦原に1羽で鳴いていました。
このほか、空を見上げると、雨が上がり気温が上がって発生した上昇気流に乗って、低空や中空を盛んに飛び交わりエサを採るツバメや、上空を旋回するサシバなども見られました。
チュウサギは、田植えを終えた水田に入ってエサを採っていました。
コサギ、チュウサギ、ゴイサギの見分け方や、嘴の構造とエサの種類の違いについて観察してみるのも面白いですね。
シラサギ1 シラサギ2
稲田にシラサギが立っていました。
参考文献:「野鳥博士入門」
予定の時間を大幅に超過して観察会終了。長時間お付き合い頂いた皆さん、ありがとうございました。時間配分の点など反省し、次回以降、考慮させて頂きます。
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 番外編
観察会後は、草むらで仲良く昼食を取り、解散となりました。
おつかれ様でし…た……!?
一人、また一人・・・・・・ と、谷津の奥地へと消えていく人たちがいます。
「ちょっと一周してから帰ります。」
3時間にわたって歩き通したにも関わらず、元気よく観察を続ける講師や参加者の方々、素晴らしいです。
そのうちの一人、田仲先生が日暮れギリギリまで粘って撮影に成功したのがこの一枚。
コナライクビチョッキリ1 コナライクビチョッキリ2 コナライクビチョッキリ3

コナライクビチョッキリが
切り取った揺りかごと、
その上で交尾中の雌と雄。
皆様、本当におつかれ様でした。
本年度の観察会は、予想を遥かに越える参加のお申し込みを頂き、抽選の結果、ご希望に添うことが叶わなかった方々には、大変申し訳ありませんでした。
また、全三回の観察会全てにわたり、我孫子市から特別にご後援を頂戴し、様々なご協力を頂いております。ここに感謝申し上げます。
 

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