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ギンナン (岩瀬徹学長)
第1回、2回と続けて紹介したイチョウです。 |
5月にイチョウの下に落ちていたのはたくさんの雌花、6月には一方がやや大きくなっている胚珠でした。そして今朝、拾ったのは熟して色づいている“ギンナン”です。
今朝拾ったギンナンの柄の先をよくみると発達しなかった胚珠の痕跡が見られます。以前、胚珠は2個ついていると紹介しましたが、拾ったものの中には痕が2個あるものもあり、一概にそうはいえないようです。
ギンナンは、胚珠が熟したものなので、果実のようにみえますが種子です。臭いのきつい果肉の部分は種皮にあたります。 |
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“ギンナン”を拾い集めた後に地面に埋めて外側の果肉のようなものを腐らせてから掘り出したりします。ところがうっかり忘れて、イチョウの芽がでてくることがあるとかないとか。
植物の種子の散布に、動物が一役かっていますが、イチョウに関しては人間が散布しているのかもしれませんね(笑)なんて、岩瀬先生が冗談?をおっしゃっていました。 |
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熟したギンナン。 |
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イチョウの胚珠。胚珠が3個ある。 |
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セミの抜け殻 (浅間茂先生) |
「さぁ、皆さん。セミを使った視力検査です。樹の枝にはりついている抜け殻はわかりますか?」という浅間先生の美声?で始まった講義です。
管理事務所前のクスノキの大木についているたくさんのセミの抜け殻を観察しました。
浅間先生が千葉県の梨園で調査したことなどを踏まえてお話ししてくれました。 |
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クスノキには抜け殻がたくさんついていました。
(9/24撮影) |
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■セミの一生
セミは卵を古い枝に産み付けます。卵から孵った幼虫は翌年6月頃に樹の枝より零れ落ち地面にもぐりこみます。地面に落ちたその多くの幼虫が蟻のエサとなります。無事アリから逃れた幼虫は、地面の中で梨の根の樹液を吸って大きくなります。
何年で成虫になるのか、疑問に思い私は梨園の園主さんにお願いして1m×1mの範囲を掘らせて貰い地中の幼虫の様子を調べてみました。地中の幼虫の大きさは様々ですが、7種類にわけられたことから、成虫になるまで7年かかるのではないかと推察できます。
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■セミの抜け殻を比べよう!
抜け殻からセミの種類とその性別がわかります。今回、浅間先生に解説して頂いた種(抜け殻の特徴)とその概要を紹介いたします。
抜け殻1個だけではわかりづらいので比べてみるとよりわかります。 |
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☆性別 |
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抜け殻の腹部の裏側の先端に注目します。メスには産卵管があるため、その部位に2本のスジのようなものがあります。オスにはもちろん産卵管は無く、ツルリとしています。 |
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☆種類 |
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「ニイニイゼミ」 |
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抜け殻に泥が付いていることでわかります。小型の種類です。他の種と比べると湿った環境を好むことと、殻の構造によって殻の表面に土がつくのでしょう。最近の温暖化により土が以前より乾いているせいか、生息数が少なくなっています。 |
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「アブラゼミとミンミンゼミ」 |
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共によく見られる種類で同じぐらいの大きさです。抜け殻は大型です。
触覚の形で見分けます。2種を比較して太いほうがアブラゼミ、細いほうがミンミンゼミです。また、アブラゼミは頭より3個目のタマ(節)が太くて長いという特徴があります。 |
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「クマゼミ」 |
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アブラゼミやミンミンゼミより一回り大きな抜け殻です。成虫の飛翔能力は高く、近年分布を広げています。 |
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「ヒグラシ」 |
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アブラゼミやミンミンゼミより一回り小さく、濃い茶色の抜け殻です。 |
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「ツクツクボウシ」 |
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ヒグラシと同じぐらいの大きさです。抜け殻の色はシック(人によっては地味?)な薄い茶色です。他の種類と比べるとテカテカしていません。 |
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*「校庭の昆虫」 P149、150に「抜け殻の特徴解説」があります。「抜け殻の検索表」もついてます。→ |
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★突然質問コーナー★
参加者Sさんから、セミの抜け殻についての質問が届きました。その質問に答えて下さったのが山崎先生です。興味深い内容だったので、ここで紹介させて頂きたいと思います。 |
<参加者Sさん>小学校の先生。観察会解散後、お一人で園内を観察してまわられたそうです。
質問:何故ニイニイゼミの幼虫だけ泥を被っているのでしょうか?
私なりに考えてみました。以前、聞いた話では、ニイニイゼミは湿ったところを好むということでした。けれども野川公園をはじめ、ニイニイゼミとアブラゼミ、ときにはツクツクボウシも同じエリアで普通に発生します。従って、ニイニイゼミだけが湿気の多い土地を好んでいるとは思えません。もっとも、アブラゼミ、ミンミンゼミが羽化の為、高い位置まで登るのに対して、ニイニイゼミは比較的じめじめした樹の低い位置で羽化をしているように思います。
都立小峰公園の方のお話では、ニイニイゼミの抜け殻を観察すると、たくさんの毛が生えていることから、それが関係しているのではないかとの事でした。この毛が泥を付着させるのかも知れませんが、それでは「何故ニイニイゼミだけに体毛が多いのか?」という謎も出てきます。
上記のことを踏まえて「湿気を好むために体毛が多くあり、それが泥を付着させている」と、いうこことなのでしょうか? |
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雨を避けるアブラゼミ。翅の色が特徴です。
(野川公園、Sさん撮影) |
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<山崎秀雄先生>
返答:ニイニイゼミのぬけがらをルーペで見ればわかります。毛が生えています。そのため体表に泥が付くのでしょう。土の中では、体に泥を付け水分を保つ必要はないと思います。抜け殻の泥は、羽化の時に「体表が乾かない」「保護色」などの理由が考えられますが、はっきりとはわかりません。土の中の若虫を見ていないのですが、若虫にも泥がついているのでしょうか?
土中で水浸しになったとき、短い毛が生えていると、その回りに空気の層ができるので「水没から身を守る」為とも考えられます。実際はどうなのか、若虫を水に浸けて調べてみる必要があります。
羽化場所は低く、1mを越す場所で抜け殻はあまり見ません。また、アブラゼミに比べ湿った場所に抜け殻があり、おっしゃるとおりです。 |
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ハシブトガラスの羽数と餌の量の関係 (唐沢孝一副学長) |
ハシブトガラスの群れをみながら、群れの羽数について解説したいと思います。
この日は、ハシブトガラスが雨を気にするふうでもなく、広い芝生のあちらこちらに分散して採餌していました。また、7〜8羽が樹の下に集まって何かをつついてもいました。
「餌を何羽で探しているのか」は、鳥の観察の重要なポイントです。群れの羽数は、「餌の量や分散の仕方」に関係しているからです。
カラスが芝生に散らばって採餌しているときは、少量の餌が分散している場合です。逆に、1カ所に群がって採餌しているときは、多量の餌が集中して存在している場合です。一箇所に存在する餌の量が多いほどカラスの群れの羽数も大きくなります。生ゴミが1カ所に多量にあれば沢山のカラスが集まってくる、ということです。 |
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餌の量にみあったカラスの分散状況を説明するのに良い状況があったのですが、皆さんが到着する前に、カラスは一斉に飛び立ってしまいしました。」と、唐沢先生。その後、芝生から電線やテレビアンテナに移動したハシブトガラスの羽づくろいをする行動を目撃できました。 |
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では、単独で餌を探すワシタカ類やモズなどの場合は、餌はどのようになっているのでしょうか?
参加者の方は、当日の唐沢先生の話を思い出して下さい。 |
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ハシブトガラスの雨浴 (唐沢孝一副学長) |
芝生から電線やテレビアンテナに移動したハシブトガラスを観察していると、雨の中でも翼を広げ嘴で羽づくろいをしている姿がみられました。このような雨の日に鳥は、濡れてしまっているようにも思われますが、羽毛は水を弾いているので濡れません。
鳥のお尻には、「尾脂腺」という脂肪分を分泌する腺があり、そこから分泌された脂肪分を利用して防水しています。羽づくろいで、嘴を使い丁寧に羽毛に脂を塗り付けているのです。
また鳥は、羽毛についたゴミや翼に潜んだダニを除去するために水浴や砂浴、日光浴をすることが知られています。朝露や夜露のついた枝葉に飛び込んで露を浴びたり(露浴)と、様々な方法で翼の整備を行います。都会のカラスは煙浴(えんよく)といって銭湯の煙突から出る煙を浴びる行動も知られています。
この日、雨の中で観察した「翼を広げて嘴で羽づくろいをする姿」は「雨に濡れている」というよりは、積極的に雨を利用した「雨浴」ではないかと思います。飛行器官である翼の整備に余念はありません。
(*『校庭の野鳥』p.20参照)。 |
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水浴びをするハシブトガラス。10羽ほどの群れでした。
(野川公園湧き水広場、9/24唐沢撮影) |
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クマノミズキの種子散布 (中安均先生) |
前回(6月24日)の観察会ではクマノミズキの花に集まる虫をテーマにしました。
虫たちは確実に花粉を媒介してくれていたようで、今回は黒く色づき始めたたくさんの実を見ることができました。
実が熟して色づき始めると、鳥たちがそれを食べに集まってきます。果軸も赤みを増して遠くからでも目立つようになり、鳥の目を引きつけるのに役立っているようです。
最も頻繁に実を食べに来たのはハシブトガラスで、そのほかにムクドリ・ヒヨドリ・メジロなどもやってきました。クマノミズキの実は直径5mmほどしかありませんが、ハシブトガラスは太くて大きなくちばしの先端で、一つずつ器用に摘み取って食べていました。
鳥は果実を丸ごと飲み込みますが、硬い種子は消化されずに、糞とともに排出されます。カラスなどは吐き戻す場合もあり、この吐しゃ物はペリットと呼ばれます。こうしてクマノミズキの種子は、鳥によってあちこちに運ばれ、散布されます。
しかし、せっかく散布された種子も、無事に発芽、成長できるものはごくわずかしかありません。特に、この公園のように人の立入りが多く、草刈りが頻繁に行われているような場所ではなおさらです。 |
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中安先生解説中。クマノミズキの果軸が赤いのがわかります。 |
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クマノミズキの実をくちばしの先で摘んで食べるハシブトガラス。
(中安撮影) |
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糞、またはペリット。ほとんどはクマノミズキの種子ですが、一回り大きいミズキの種子も含まれています。
(せせらぎ広場湧水縁台、唐沢撮影) |
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*関連テーマとして「果実食鳥と種子散布(唐沢孝一副学長)」を掲載予定です。 |
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引き続き観察会の様子を紹介予定です。