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●はじめに |
観察とは「くわしく見る」ということですので、近くでじっくり見なくてはいけない、と思っている人が多いのですが、実際は自動車の車窓からでも、屋敷林をはじめ、いろいろな観察を行うことが可能です。もちろん、運転中は注意しなくてはいけませんが…
大事なことは、「自分の眼で観察すること」 世間で言われていること、本に書かれていることでも、実際に観察すると間違いだと分かることがあります。
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●老いたら丸くなる |
左がヤマモモ、右がヒメユズリハの葉です。どちらも、ふちがギザギザしている葉と丸い葉があります。ギザギザしているのは若い葉、丸いのは成長した葉です。年を取ると丸くなるのは、人間と同じですね。 |
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●ヒルザキツキミソウはいつ咲くか? |
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この写真の花は外来種のヒルザキツキミソウです。このような和名がついていますが、実際に昼に咲くのでしょうか。
調べてみたところ、日の出頃に開花した花は花弁の開きを変えながら咲きつづけ、なんと翌日の日没まで咲き続けました。しかも、しばらく観察していると季節によって咲く時間がずれてきたのです。
このように、和名が実際のようすを表していない植物があります。ここでもやはり、自分の眼で観察することの大切さが分かります。 |
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●ハマボウフウは一年中葉があるか? |
ハマボウフウは一年中葉が見られるといわれていますが、実際はどうなのでしょうか。
これについて調べてみたのがこれらの写真です。南房総市富浦町の、同じ場所で撮影しています。
2月は小さな葉が出ており、5月になると白い花が咲いていて、10月になるとまた葉だけになります。 |
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ハマボウフウ(2012年2月24日) |
(川名 興) |
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そして翌年の1月に同じ場所で撮影をしたのがこちら。ごらんのとおり、全く葉が出ていませんね。このように、1年を通して定点観測を行い、撮影し続けることでしか発見できないものは多いです。 |
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●ケヤキの芽吹きはいつか? |
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「ケヤキの芽吹きは毎年揃っている」とよく言われますが、実際はどうでしょうか。この2枚の写真は、おととしと去年の同じ日に撮影したものです。ごらんのとおり、全くようすが異なっていますね。このように、毎年同じときに撮影することでわかる発見があります。今年も忘れないように撮影しないといけませんね。
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●一茶の句のやせ蛙・芭蕉の句の蝉 |
一茶の句の「やせ蛙」は、なんとアズマヒキガエルだそうです。産卵のためにこぞって狭い池に集まるようすを詠んだ句だといわれています。
芭蕉の句の「蝉」は現在ではニイニイゼミだといわれていますが、歌人の斉藤茂吉ははじめアブラゼミだと主張していたそうで、研究者と大論争になったといいます。 |
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●オオキンカメムシはどこで越冬するか? |
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川名先生がビニール袋で持参したオオキンカメムシ |
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写真のカメムシはオオキンカメムシで、毎年千葉県の大房岬で集団越冬しているのを観察することができます。普通は常緑樹の葉裏で越冬するといわれていますが、注意してみてみると、落葉樹の葉裏でも越冬しているのを観察することができます。ただ、越冬中に葉が落下してしまうので、その場合はあわてて別の木の葉裏に移ります。葉の裏にいるのは紫外線を避けるためで、風が弱く日当たりのよいところに集まるようです。 |
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●まとめ |
私がこれまで自然観察を行ってきて、大切だと思ったのは以下の4点です。 |
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自分の眼で観察すること(ただし過信はしないこと) |
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「証拠になるな」と思った時は写真を撮ること |
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定点観測は有効な手段であるということ |
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書籍などほかの観察記録を参考にすること |
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これらを心がけながら、ぜひ皆さんも実践してみてください。 |
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