2016年  自然観察大学 第3回
2016年10月2日(日)
場所:東京都立野川公園
毎日のように雨が続くなか、気持ちのよい絶好の晴天に恵まれた観察会でした。
気温も高く昆虫類は活発に活動し、満開のキバナコスモスでは、蜜を求めて、ツマグロヒョウモンなどが多く飛来していました。
キバナコスモスを吸蜜するツマグロヒョウモン雄。
背景は自然観察大学の面々。

(写真:山崎秀雄)

担当講師については【講師紹介】をご覧ください。
植物については、村田・金林・飯島・中安の各先生に適宜分担していただいたため、このレポートを作成いただいた方の名前を記しました。

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三たび、イチョウの観察
毎回イチョウの花から種子への変化を観察してきました。前回の6月にはかなり大きな球形した緑色の実が見られました。
(本来は種子ですが、わかりやすくするため実と表現しました)
今回は、黄ばんだ実になっています。木の下には実が落ちてツブされ、独特の臭いを発しています。
さて実の中では大変なことが起こっています。
5月に受粉して胚珠の中に取り込まれた花粉は、花粉管に変化し、胚珠からの養分を取り入れて生活していました。9月の初旬に、花粉管の中で2個の精子が形成され、やがて花粉管を破って、満たされた液体の中を泳ぎ出します。このころ雌の方では卵細胞が成熟してきています。精子は卵細胞に入り受精をします。
三度目となった、イチョウの観察。

黄色くなったイチョウの実(種子)。

落下したイチョウの実。

このような現象を世界で初めて観察したのが平瀬作五郎氏です。
明治29年、日本が欧米の文化・知識を取り入れるのに夢中になっていた頃に、世界的な発見がなされました。
なぜこのことが世界的な発見かというと、コケ植物とシダ植物では、受精の際に精子が形成されるが、当時の裸子植物と被子植物では受精の際に精子ができないと考えられていました。イチョウの精子形成の発見は、裸子植物がシダ植物から進化してきた重要な証拠の1つとなりました。
(イチョウでの精子の発見後、池野誠一郎氏によってソテツでも精子を発見した。)

イチョウの実は、本当は種子であることを話しました。
外側の肉質で黄ばんだ悪臭を放つ部分は外種皮です。
市販されているギンナンは堅い殻で覆われていますが、この殻が中種皮で、堅い殻の内側にある褐色の薄い皮が内種皮です。食べる緑色の部分が胚と胚乳です。
ところで、前回たくさん見られた実生は、かなり少なくなっています。
刈られてしまったのか、枯れたのか、どうなったんでしょうね。
(村田威夫)
シジュウカラの生きる知恵
シジュウカラをよく見ると、胸の黒い筋が太いものと細いものがいます。太いのが雄で細いのが雌です。
野川公園では、よくエナガやメジロといっしょに行動している姿を観察できます。このように他の鳥と行動を共にする群れのことを混群といいます。千葉県での観察では、エナガ、ヤマガラ、メジロ、コゲラ、センダイムシクイなどと混群を作っているのが観察されています。混群を作る意味は、「鳥の種類によって利用する採餌場所や捕食者に対する警戒方法が少しずつ違うため、違う種類の鳥が一緒にいれば単一種の群れよりも採餌や警戒の効果が増大する」と考えられています。
水浴びをするシジュウカラ雌。

(写真:越川重治)

サクラの下で話をする越川先生。この木にシジュウカラやエナガが来ているはずだったのに…

ところで、シジュウカラは2種類の警戒声を使い分けていることが総合研究大学院大学の鈴木俊貴氏によって解明されました。
巣立ち間際の雛に次の2つのものを見せました(巣箱の前に提示)。
1. ハシブトガラスの剥製
  2. 生きたアオダイショウを透明アクリルケースに入れたもの
その結果は次のようになりました。

1.の時、親鳥は「チカチカ」と繰り返し鳴き、雛は『伏せの姿勢』をとった。

  2.の時、親鳥は「ジャージャー」と繰り返し鳴き、雛は『一斉に巣箱から飛び出す行動』をとった。
巣箱の中に入れない敵と入れる敵で警戒声を使い分け、捕食者に対する回避行動を使い分けていることがわかりました。
シジュウカラのより複雑な音声コミュニケーションについて、鈴木俊貴氏の研究グループによって解明されつつあります。
※ 詳しくはこちらを参照してください ⇒ https://www.soken.ac.jp/news/25972/
(越川重治)
ミズキとクマノミズキ
ミズキとクマノミズキはよく似ていますね。
これまでの観察会でもお話ししました。
葉の付き方はミズキが互生でクマノミズキが対生でしたね。でもなかなか分かりづらいです。また、花の時期ならクマノミズキはミズキより約1か月遅れて咲くので分かります。
今回は少し違った視点からその違いを話します。花のない今の時期ではどうでしょう。
夏が過ぎてすでに樹木は冬芽を作っていますので冬芽を見てみましょう。
これはミズキですが、どのような冬芽でしょう。芽鱗(がりん)という鱗片に覆われていますね。ミズキの冬芽は芽鱗に覆われている鱗芽(りんが)です。
それではクマノミズキを見てみましょう、側芽が対生していますね頂芽とともにミズキに比べずいぶん細いですね。芽鱗が見えず毛に覆われているだけですね、芽鱗に覆われていないので裸芽(らが)といいます。
このように冬芽ができているときには鱗芽と裸芽の違いを覚えておけば容易に見分けられますね。
ミズキの冬芽を切ってみると、中心にすでに花芽が作られていました。
(金林和裕)
ミズキの冬芽。鱗芽。
クマノミズキの冬芽。裸芽。
ミズキの冬芽の断面。
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ウスバキトンボ

あちこちで、あまり羽ばたかずにグライダーのように滑空している、たくさんのトンボがいます。
一見すると、アキアカネなどの赤とんぼのようにも見えますが、ナツアカネやアキアカネに比べると、体色はやや黄色味を帯び、体も大きめです。また、なかなか木の枝などに止まらないのも、アカネの仲間と違う点です。まれに枝に止まりますが、その時は、アキアカネと違って、枝にぶら下がるような格好で止まります。
多数のウスバキトンボが飛んでいるが、写真では見えない。
このトンボは、ウスバキトンボといい、ほぼ全世界の熱帯から温帯に分布しています。
日本では、南西諸島では1年中、成虫がみられるそうですが、関東では5月ごろから、北海道では7月ごろから成虫が観察されます。ただし、10月になると秋の寒さで死んでしまいます。南西諸島の個体は寒くないので、生き残れるようです。
毎年、春になると南西諸島(あるいはもっと南の国)から北に向かってウスバキトンボの大移動が繰り返されます。4月ごろには九州や四国に到着し、そこで産卵します。
ウスバキトンボの成長はたいへん早く、およそ1か月で卵から成虫になるといわれています。羽化した成虫は、さらに日本列島を北上し、数世代をかけて関東・東北、そして北海道へと到達します。
アキアカネとウスバキトンボの翅の比較。

(原図:鈴木信夫)

このように、ウスバキトンボは長距離飛行が得意ですが、その秘密は翅にあります。
例えばアキアカネと比較すると、体の大きさ(体長)に比べて前後翅ともに面積が広く、特に後翅は大変広くなっています。ウスバキトンボの後翅をよく見ると、付け根の後縁部分(肛角部といいます)がものすごく広がっていることがわかります。
長距離飛行には広い翼面積が必要なのでしょう。
(鈴木信夫)
アオギリの果実の成立ちと種子散布
<風で散布されるアオギリの種子>
アオギリの木を見てください。青々とした葉とは対照的な茶褐色のかたまりは果実の集まりです。
舟形に見える部分は果実の果皮で、種子散布期には枯れており、その縁に種子をつけたまま母樹を離れ、回転しながら落下します。
では実際にいくつか飛ばしてみましょう。
果皮に付いている種子の数や位置は一定しておらず、風に乗って数十メートルも飛ばされることもあるし、ほとんど真下に落ちることもあります。また、いったん地上に落ちたものが風に転がされて移動していく場合もあるでしょう。
母樹から飛ばされる距離がさまざまなのも、広い範囲に種子を散布させるためのアオギリの作戦なのかもしれません。
<花も果実も葉が起源 −アオギリを例に被子植物の果実の成り立ちを知る−>
アオギリの舟形の果皮は元をたどれば雌しべの子房壁です。花・果実の構成要素はすべて葉に起源しており、被子植物の雌しべを構成する‘葉’は特に心皮と呼ばれています。
雌しべは1〜数枚の心皮が合わさってできます。アオギリの場合、雌しべは5枚の心皮からなり、それぞれの縁に数個ずつの種子が形成されますが、果実は成熟前に5つに分かれます。」
一枚の心皮に由来する果実としてはサヤエンドウなど、マメ科のものがわかりやすいです。お尻のような割れ目が残るモモやアンズも一枚の心皮に由来する果実です。
果実の断面を見ると、ピーマンやバナナは3枚、オクラは5枚の心皮からなっていることがわかります。
心皮はシダ植物の大胞子葉と相同な器官で、その上に胚珠が形成されます(胚珠は受精後に種子となります)。被子植物では心皮が胚珠を内部に包み込んで子房が形成されますが、裸子植物では胚珠は裸出したままです。
ソテツの雌花(雌しべ)には葉の特徴が残されており、シダ植物の大胞子葉から被子植物の子房への進化の過程を窺い知ることができます。
<アオギリの種子はどんな味?>
アオギリの種子を炒ったものを持ってきましたので試食してみてください。
香ばしくて、ピスタチオに似た味がしませんか? 
(… 意外にいけるとの声あり)
文献によると、アオギリの種子はタンパク質や脂質などの栄養分に富んでいるとのことです。
(中安均)
アオギリの果序。

(写真:中安均)

種子散布期のアオギリの果実。

(写真:中安均)

ソテツの雌花(雌しべと胚珠)。

(写真:中安均)

アオギリの種子を試食。調理は中安先生。

クマノミズキのアカスジキンカメムシ

クマノミズキの葉表にアカスジキンカメムシの成熟幼虫が集合しています。
よく見ると、1葉当たり最多で17頭、ほかに6頭、4頭、2頭、1頭がいます。
孵化後の卵塊の上に集合している幼虫もいますね。
これらの幼虫は、今年6月下旬ころ産みつけられた卵塊から孵化した個体でしょう。前回6月の観察会で成虫が飛翔していたのを観察しています。
アカスジキンカメムシの幼虫は、いろいろな樹木の葉に寄生しています。クサギ、コナラ、クロガネモチ、クマノミズキなどの樹木のあるところで観察できます。
落葉樹に寄生している幼虫は、晩秋になり落葉とともに地面に落ち越冬し、翌年5月以降に成虫になります。成虫は年1回、晩春から初夏に見られます。
アカスジキンカメムシ幼虫。

(写真:平井一男)

カメムシの仲間は半翅目(はんしもく)といわれます。
前翅の半分が硬い鞘状で、残りの半分(カメムシによっては三分の1くらい)が翅状になっているためです。後翅は翅状になっています。
飛ぶときは前翅を開いて、後翅で主に羽ばたき飛翔します。見ていると50m位は直線状に一気に飛びます。チョウのようにひらひら飛びません。
カメムシの胸部(前胸と中胸)は楯板で守られています。また胸部(後胸〜翅基部)と腹部(たたまれた翅を含む)の上部には小楯板(しょうじゅんばん)がありその下の後胸や翅、腹部を守っています。前回見たエサキモンキツノカメムシのハート形の部分ですね。
カメムシ類は、英語ではshield bug(楯虫)ともいわれています。
アカスジキンカメムシの成虫は、腹部背面の全体が小楯板で被われて、翅はその下に収納されています。これはキンカメムシ科の特徴ですが、マルカメムシなども同じように小楯板で被われています。
飛翔するときには小楯板を少し上げて、翅を出して羽ばたきます。
カメムシの仲間は世界で約3,000種知られています。植物の茎葉や果実から汁液を吸うので、稲、野菜、果樹などの農作物を加害する種類も多くいます。英語ではsting bug(刺す虫)ともいわれています。
エサキモンキツノカメムシ成虫。ハート印の部分が小楯板。

(写真:山崎秀雄)

 
アカスジキンカメムシ成虫。腹部背面は小楯板で被われる。
 
アカスジキンカメムシ幼虫。
 
幼虫は腹部背面から臭いを出す(矢印)
さて、カメムシといえばくさい臭いですね。
地域によりへっぴりむし、へっぷたむし、へこきむし、くさむしともいわれ、英語ではstink bug(くさいむし)といわれます。
カメムシの種類によって臭いが異なりますが、臭い成分はCHOからなる青葉アルデヒドという化合物です。いい匂いだと感じる人もいて、パクチーはカメムシ草ともいわれています。
幼虫も臭いを出します。幼虫は腹部背面から橙色系液を浸み出し、それがガス化して臭います。成虫は腹面から同じように液を出します。
いずれも手につくと数日間臭いが消えないことがあります。
(平井一男)
 
ビジョオニグモとジョロウグモ
<ビジョオニグモ>
この網を見てください。何か特徴がありますね。
そうです。円網の一部がかけています。他には…?
網の色に注目してください。金色に輝いています。
ところで、クモはどこにいるのでしょう。
この切れた網の中心部の一本の糸をたどると…
ほらここに、葉を巻いて隠れています。
クモの網と住んでいる所が違いますね。巣は住居のことを指しますから、今後は「クモの巣」と「クモの網」を使い分けましょう。
ビジョオニグモの名前の由来のビジョは美女です。
同じような網を張るクモに、腹部に模様のないアオオニグモというのがいます。こちらは春に見られます。
<ジョロウグモ>
春先には小さかった網が、ほらこんなに大きな網を張るようになりました。
先ほどのビジョオニグモの網との共通点は何でしょうか。糸が金色に輝いていることですね。どういうメリットがあって金色になるのか、よく分かっていません。粘着性のある横糸は金色で、残された足場糸は色が無いですね。
よく見ると、縦に半分、新しい網と古い網に分かれています。ジョロウグモは大きな網を張るようになると、網を半分だけ張り替える事ができるのです。網の目が細かく、大きな網を張るためには莫大なエネルギーを使います。それで半分だけ古い方の網を張り替えるのです。
えっ、古い網はどうするかって。それはもちろん食べてしまいます。
網の中央にいるのが雌です。といっても雌成体でなく、一歩前の亜成体です。
ジョロウグモは雌が大きく、雄が小さいノミの夫婦です。雄は下手に近づくと食べられてしまうので、雌が無抵抗の脱皮の時がチャンスです。
雌が成体になってからでも、餌を食べている時に、交尾する場合があります。
一匹の雌のそばに、雄が三匹います。雄の大きさがちょっと違いますね。大きい雄が雌の近くにいます。近くにいる雄が順位の高い雄です。
徘徊性のクモでハエトリグモなど眼の良いクモは求愛ダンスをします。また、コマチグモやフクログモなどは、亜成体の雌の脱皮の隣に簡単に糸をつづり、脱皮するのを待って交尾します。クモの求愛はさまざまですね。ここに棚網を張っているコクサグモは、催眠術で雌を眠らせてから交尾します。おもしろいですね。残念ですが詳しい話はまたの機会に紹介しましょう。
(浅間茂)
ビジョオニグモの網。金色で欠けた部分がある。

(写真:浅間茂)

ビジョオニグモ。糸で葉を巻いて巣を作る。

(写真:浅間茂)

ジョロウグモの網。金色の横糸とぎざぎざの足場糸。

(写真:浅間茂)

ジョロウグモ雌(左)と雄(右)

(写真:浅間茂)

円網を張るクモを狩る
ジョロウグモやコガネグモといった、クモらしい網(円網)を張るクモ。
見るといつもこちら側に腹を向けているように見えます。
我々に腹面を向けているのは、顎(あご)が腹側に向き、脚を伸ばして獲物を捕らえるためです。獲物がやって来るのも我々と同じ方向からが多いのでしょう。
図鑑に載っている背面を見づらいのが難点ですね。
そんなクモを獲物にする狩蜂にとっては死活問題ですね。獲物を麻酔するときの基本ポーズが、『獲物の背中に乗り、曲げた腹を獲物の胸部腹面にまわして刺針する』だからです。
そこで円網を張るクモを狩るときの行動は次のようになります。
アメリカジガバチがジョロウグモを狩る手順。

(原図:田仲義弘)

1. 円網を見つけたら、クモの位置と体の向きを確認する(腹を見せているか、背中か)
2. ほとんどの場合は腹を見せているので、網のすき間を探して向こう側に廻る。ジョロウグモは中央下に網のない部分があるので、そこを通って網の反対側に回り込む。
3. 向こう側でクモの背中側から近づく。
クモは蜂の行動を予期しているので、網の中央付近に専用の隙間を用意してある。その隙間を通ってこちら側へ。蜂はクモの動きを見て網の下を通ってこちら側に来て、クモに背中側から近づく。これを数回繰り返すとクモは網の行き来をしなくなる。
4. 蜂が背中側に近づくと、クモは落下する。追いかけて蜂も急降下。下草に隠れているクモを探す
5. クモを捕らえると飛び上って、後脚で草に捕まって前・中脚でクモを押さえ込みながら刺針する。その後、麻痺したクモを大顎でくわえて巣まで運ぶ。
オオシロフクモバチやモンクモバチは大きなクモを狩るので、巣まで運ぶときは地上を引きずりますが、狩り方は基本的に同じです。ただ、落下前に巣の上でクモに刺針することも多いようです。
(田仲義弘)
ハナミズキの果実
紅葉のはじまったハナミズキの木に真っ赤な果実がついています。
ハナミズキの花は白色からピンク色の総苞の上にまとまってついていました。そのときの花がそれぞれ果実(核果)になっているため、数個ずつまとまっています。
近くの枝には来春開花する花芽(かが)が見られます。枝の先端につくため、遠くからでもよく目立ちます。

ハナミズキの果実(核果)と花芽。

 

ヤマボウシの果実(複合果)。

(写真:飯島和子)

ハナミズキの花序。白いのは総苞。

(写真:川名興)

ヤマボウシの花序。ハナミズキによく似る。

 

よく似た花にヤマボウシがあります。こちらの果実は球状で、複合果と呼ばれています。切ってみると、中が数個の部屋に分かれていて、それぞれの部屋に種子が入っています。
このように、花の形はよく似たハナミズキとヤマボウシですが、果実の時期になると、識別がしやすくなります。
(飯島和子)
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ヤマガラとエゴノキの種子

5月の観察会では真っ白な花をつけていたエゴノキですが、10月には果実をつけ、種子がたくさん落ちています。
ヤマガラはこの種子を好んで食べます。また、土中などに「貯食」する習性があります。貯食した種子が食べられずに発芽することもあります(貯食型種子散布)。
エゴノキの種子を土中に埋めるヤマガラ。

(写真:唐沢孝一)

5月には花盛りだったエゴノキ。。

(写真:唐沢孝一)

エゴノキの実。

果皮が外れて種子が現れたエゴノキ。

エゴノキの種子はとても堅いのですが、ヤマガラは嘴でこれを割ります。
参加者の皆さんに種子を拾って割ってみてもらいました。歯でかじった人もいましたが、堅さを体験できたでしょうか。用意した石で割ろうとしましたが、種子をしっかり固定しないと転がってしまいました。
割った種子の中から白っぽいものが出てきたので、「これはヤマガラの好物の脂肪分です」と説明し、食べてみました。「ちょっと水っぽかったものの、まずまずの味」と思ったその時、「先生、エゴヒゲナガゾウムシの幼虫が入っています。釣り用の餌に最適ですよ」とのこと。うっかり珍味を味わってしまいました

そんな時、「ヤマガラの声です。上の枝に来ました」との声。
見上げると、果実を足元にたぐり寄せてとり、足指でしっかりと枝に固定し、鋭い嘴でコンコンつつき始めました。

両足で種子を固定し、嘴でつつくヤマガラ。

(写真:唐沢孝一)

ちょうど飛来してくれたヤマガラにみんなで熱い視線。
(唐沢孝一)

ハイイロチョッキリ

シラカシの梢の下には未成熟のどんぐりが多数落ちています。
なかには、どんぐりの付いた小枝ごと落ちているものがあります。
このどんぐりをよく見ると、お椀(殻斗:かくと)の部分に錐(きり)で刺したような孔があります。
これは、ハイイロチョッキリの雌によって開けられた産卵用の孔です。
どんぐりを孔のところで割ってみると、中に卵があります。
この中で孵化した幼虫はどんぐり(子葉)を食べて写真のように成長します。黒い糸状のものは糞です。
成熟した幼虫はどんぐりに孔をあけてから外に出て土の中に入り前蛹となり越冬、春〜初夏に蛹になり、7月ごろに地上に出ます。
シラカシの樹冠下に落ちた小枝。
果実がついている。
果実には産卵のための孔がある。

(写真:山崎秀雄)

落ちた枝はかじられたような切り口。

ところで、なぜ殻斗の部分から孔をあけるのでしょうか。おそらく他の部分では、口吻を差し込む足場としては滑ってしまうからでしょう。
もう一つ疑問がわきます。わざわざ枝を切って落とすのは、どうしてでしょう。
産卵後や産卵空間の損失部分を植物の樹液で補修され、卵や若齢幼虫が妨害を受けないためでしょうか。
余談ですが、下見のときには、この場所でみんなが見ている前で、岩瀬先生の頭の上に切られた枝が落ちてきたそうです。
ハイイロチョッキリは枝を切り落としますが、チョッキリムシの仲間の多くは、産卵後切り落とさずに果柄に孔を開けます。果実は切落とされなくてもしばらくすると落下します。チョッキリムシにとっては落果させることが有利なのでしょう。
(山崎秀雄)
果実を割ると、孔の奥にハイイロチョッキリの卵がある。
別の場所で8月に採取したコナラの果実を割ると、ハイイロチョッキリの幼虫がいた。
※ハイイロチョッキリの産卵から枝を落とすようすは次で見られます
 http://www2.nhk.or.jp/school/movie/clip.cgi?das_id=D0005401434_00000&p=box

オオホウライタケ

地表からオオホウライタケというきのこが発生しています。
乾燥してしまいましたが、雨が降ると水を吸い、胞子を飛ばすことができます。
多くの柔らかいきのこは、1〜2日で腐ったり虫に食べられてなくなってしまいますが、中には数週間から数か月間残って胞子を飛ばし続けるものもあります。
オオホウライタケは落葉を分解して栄養にしています。
落葉をはいでみてください。その下に白い菌糸の層がありますね。
地表に現れる傘と柄とひだからできている「きのこ(子実体)」は、植物に例えると「花」に相当する部分で、この子実体で子孫を増やすために胞子を作って飛ばします。
オオホウライタケを手に話をはじめた根田先生。
オオホウライタケ。1週間前には元気だったが、当日は乾燥してしまっていた。
地表面下に広がったオオホウライタケの菌糸体。
これが本体だ。

一方、この白い菌糸の層は、オオホウライタケの本体です。「きのこ」は「かび」のなかまで、ふだんは、この白いかびの状態で過ごしています。

きのこは、地中や木材の中に菌糸を伸ばし、有機物を分解したり(腐生)、植物の根から栄養をもらい(菌根)、生きています。
あまり目立ちませんが、生態系で重要な働きをしています。
(根田仁)

ヒマラヤスギの球果と雄花穂

ヒマラヤスギが大きな球果と雄花穂を付けています。
このように、秋に花を咲かせ、翌年秋に結実するため、花と球果を一緒に見ることができます。1年間でこのように大きな球果にまで成長するようです。
残念ながら、雌花穂は見当たりません。
球果と雄花穂が別々の木についているので、雌雄異株のように見えますが、雌雄同株です。
6月の観察会では、成長し始めた大きな球果とほとんど成長していない小さな雌花穂が見られたため、開花から結実まで2年かかるのでは? と考えました。しかし、その時にマーキングしておいた雌花穂は現在も成長していませんので、枯死したものだったようです。
大きくなって色づいたヒマラヤスギの球果。
雄花穂を多数つけたヒマラヤスギ。
ヒマラヤスギの雄花穂(つぼみ)

 

前回マーキングした穂。
枯れているらしい。

雌花穂が球果になるまでの1年間の成長を継続して観察したいものです。
特に、球果が急激に大きくなる時期を知りたいですね。
雌花穂は高所につく、結実率が低いなどの理由で観察が難しいです。
みなさんの身近なところで雌花穂がみつかりましたら、ぜひ1年間を通して観察してみてください。ご報告をお待ちしています。
(飯島和子)
クヌギのどんぐり
6月の第2回目の観察会で、花が咲いた当年の秋に成熟するどんぐりと、翌年の秋に成熟するどんぐりがあると話しました。
この木は皆さんがよく知っているクヌギで、2年越しでどんぐりが成熟します。
クヌギは大木になり、枝先などは観察できないことが多いのですが、ここは目の高さに実があり、観察には絶好の木ですね。
さて、枝を見ると丸いどんぐりがあります。これは昨年の春に受粉したどんぐりです。
この枝の先の方の、葉柄の根元を見てください。
冬芽に似た小さな丸いものが見えますか?
少し分かりにくいのですが、これが今年の春に受粉した小さなどんぐりです。
この小さなどんぐりは、来年の春までほとんど成長しないでこのままの形で過ごし、その後成長して秋には丸くて大きなどんぐりになります。
枝を見ると、成熟したどんぐりと小さなどんぐりの間に芽鱗痕(がりんこん)があります。
芽鱗痕の手前、つまり2年目の枝には成熟したどんぐりがあり、芽鱗痕の先の1年目の枝に小さなどんぐりがついているということです。
(金林和裕)
2年目のクヌギのどんぐり。
1年目のクヌギのどんぐり。
小さくてわかりにくい。

今年の第1回から3回まで、すべての観察会に参加いただいた方には、恒例のりっぱな(?)修了証をお渡ししました。
参加いただいたみなさん、講師のみなさん。スタッフとしてご協力いただいたNPO会員のNさんSさん、1年間ありがとうございました。

アンケートで、今年の野川公園で印象に残ったことをあげていただきました。一部を紹介させていただきます。
ヤセウツボがタンポポに寄生している実物を掘り出して観察した…第1回
クモの団居(まどい)…第1回
セナガアナバチのゴキブリを狩る生態。雌雄の産み分けにもびっくり…第2回
「カラスの死骸と集まる虫」は衝撃。日ごろ美しい自然・花鳥風月を観て癒されたいと思っていたのだが…第2回
今年はきのこの話が聞けて良かった…第2,3回
ヒマラヤスギの球果の成長…継続観察
ヤマガラがエゴノキの実を割って食べるシーンが見られた…第3回
シジュウカラの鳴き方の変化に疑問を持っていたが解決できた…第3回
アカスジキンカメムシの臭い。パクチーを思い出した。体験は凄い…第3回
クモの生態の話は毎回どれも面白かった…通年
蜂は蜜を吸うものと思っていたが、狩蜂の生態、その戦略には感服した…通年
生き残りをかけた生物の進化の奇跡を実感した…通年
生物はみんなつながっていること、その関係の中で生きていることがよく分かった…通年
豊富な話題、面白いエピソードに引き込まれた。つい人に話したくなる(得意顔で!?)…通年
「名前だけではない」「身近なフィールドで…」その意味がすごく腑におちた(先生方の魅力もすごい)…通年
ほんと、いろいろありましたね。
2016年は岩瀬名誉学長に参加いただけず残念でした。頭は元気だが足が… とご本人が一番くやしい思いをされています。でも、内緒で下見に参加するなど、徐々に回復しておられます。
2017年の観察会にご期待ください。
レポートまとめ:事務局O


2016年度 野外観察会
第1回の報告

第2回の報告

第3回の報告  
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