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●ミズキとクマノミズキ |
ミズキとクマノミズキはよく似ていますね。
これまでの観察会でもお話ししました。
葉の付き方はミズキが互生でクマノミズキが対生でしたね。でもなかなか分かりづらいです。また、花の時期ならクマノミズキはミズキより約1か月遅れて咲くので分かります。 |
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今回は少し違った視点からその違いを話します。花のない今の時期ではどうでしょう。
夏が過ぎてすでに樹木は冬芽を作っていますので冬芽を見てみましょう。 |
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これはミズキですが、どのような冬芽でしょう。芽鱗(がりん)という鱗片に覆われていますね。ミズキの冬芽は芽鱗に覆われている鱗芽(りんが)です。
それではクマノミズキを見てみましょう、側芽が対生していますね頂芽とともにミズキに比べずいぶん細いですね。芽鱗が見えず毛に覆われているだけですね、芽鱗に覆われていないので裸芽(らが)といいます。
このように冬芽ができているときには鱗芽と裸芽の違いを覚えておけば容易に見分けられますね。
ミズキの冬芽を切ってみると、中心にすでに花芽が作られていました。 |
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(金林和裕) |
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ミズキの冬芽。鱗芽。 |
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クマノミズキの冬芽。裸芽。 |
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ミズキの冬芽の断面。
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●アオギリの果実の成立ちと種子散布 |
<風で散布されるアオギリの種子>
アオギリの木を見てください。青々とした葉とは対照的な茶褐色のかたまりは果実の集まりです。
舟形に見える部分は果実の果皮で、種子散布期には枯れており、その縁に種子をつけたまま母樹を離れ、回転しながら落下します。
では実際にいくつか飛ばしてみましょう。
果皮に付いている種子の数や位置は一定しておらず、風に乗って数十メートルも飛ばされることもあるし、ほとんど真下に落ちることもあります。また、いったん地上に落ちたものが風に転がされて移動していく場合もあるでしょう。
母樹から飛ばされる距離がさまざまなのも、広い範囲に種子を散布させるためのアオギリの作戦なのかもしれません。 |
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<花も果実も葉が起源 −アオギリを例に被子植物の果実の成り立ちを知る−>
アオギリの舟形の果皮は元をたどれば雌しべの子房壁です。花・果実の構成要素はすべて葉に起源しており、被子植物の雌しべを構成する‘葉’は特に心皮と呼ばれています。
雌しべは1〜数枚の心皮が合わさってできます。アオギリの場合、雌しべは5枚の心皮からなり、それぞれの縁に数個ずつの種子が形成されますが、果実は成熟前に5つに分かれます。」
一枚の心皮に由来する果実としてはサヤエンドウなど、マメ科のものがわかりやすいです。お尻のような割れ目が残るモモやアンズも一枚の心皮に由来する果実です。
果実の断面を見ると、ピーマンやバナナは3枚、オクラは5枚の心皮からなっていることがわかります。 |
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心皮はシダ植物の大胞子葉と相同な器官で、その上に胚珠が形成されます(胚珠は受精後に種子となります)。被子植物では心皮が胚珠を内部に包み込んで子房が形成されますが、裸子植物では胚珠は裸出したままです。
ソテツの雌花(雌しべ)には葉の特徴が残されており、シダ植物の大胞子葉から被子植物の子房への進化の過程を窺い知ることができます。 |
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<アオギリの種子はどんな味?>
アオギリの種子を炒ったものを持ってきましたので試食してみてください。
香ばしくて、ピスタチオに似た味がしませんか?
(…
意外にいけるとの声あり)
文献によると、アオギリの種子はタンパク質や脂質などの栄養分に富んでいるとのことです。 |
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(中安均) |
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●ビジョオニグモとジョロウグモ |
<ビジョオニグモ>
この網を見てください。何か特徴がありますね。
そうです。円網の一部がかけています。他には…?
網の色に注目してください。金色に輝いています。 |
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ところで、クモはどこにいるのでしょう。
この切れた網の中心部の一本の糸をたどると…
ほらここに、葉を巻いて隠れています。
クモの網と住んでいる所が違いますね。巣は住居のことを指しますから、今後は「クモの巣」と「クモの網」を使い分けましょう。 |
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ビジョオニグモの名前の由来のビジョは美女です。
同じような網を張るクモに、腹部に模様のないアオオニグモというのがいます。こちらは春に見られます。 |
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<ジョロウグモ>
春先には小さかった網が、ほらこんなに大きな網を張るようになりました。
先ほどのビジョオニグモの網との共通点は何でしょうか。糸が金色に輝いていることですね。どういうメリットがあって金色になるのか、よく分かっていません。粘着性のある横糸は金色で、残された足場糸は色が無いですね。
よく見ると、縦に半分、新しい網と古い網に分かれています。ジョロウグモは大きな網を張るようになると、網を半分だけ張り替える事ができるのです。網の目が細かく、大きな網を張るためには莫大なエネルギーを使います。それで半分だけ古い方の網を張り替えるのです。
えっ、古い網はどうするかって。それはもちろん食べてしまいます。 |
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網の中央にいるのが雌です。といっても雌成体でなく、一歩前の亜成体です。
ジョロウグモは雌が大きく、雄が小さいノミの夫婦です。雄は下手に近づくと食べられてしまうので、雌が無抵抗の脱皮の時がチャンスです。
雌が成体になってからでも、餌を食べている時に、交尾する場合があります。
一匹の雌のそばに、雄が三匹います。雄の大きさがちょっと違いますね。大きい雄が雌の近くにいます。近くにいる雄が順位の高い雄です。 |
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徘徊性のクモでハエトリグモなど眼の良いクモは求愛ダンスをします。また、コマチグモやフクログモなどは、亜成体の雌の脱皮の隣に簡単に糸をつづり、脱皮するのを待って交尾します。クモの求愛はさまざまですね。ここに棚網を張っているコクサグモは、催眠術で雌を眠らせてから交尾します。おもしろいですね。残念ですが詳しい話はまたの機会に紹介しましょう。 |
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(浅間茂) |
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●ハナミズキの果実 |
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よく似た花にヤマボウシがあります。こちらの果実は球状で、複合果と呼ばれています。切ってみると、中が数個の部屋に分かれていて、それぞれの部屋に種子が入っています。
このように、花の形はよく似たハナミズキとヤマボウシですが、果実の時期になると、識別がしやすくなります。
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(飯島和子)
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●クヌギのどんぐり |
6月の第2回目の観察会で、花が咲いた当年の秋に成熟するどんぐりと、翌年の秋に成熟するどんぐりがあると話しました。
この木は皆さんがよく知っているクヌギで、2年越しでどんぐりが成熟します。
クヌギは大木になり、枝先などは観察できないことが多いのですが、ここは目の高さに実があり、観察には絶好の木ですね。 |
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さて、枝を見ると丸いどんぐりがあります。これは昨年の春に受粉したどんぐりです。
この枝の先の方の、葉柄の根元を見てください。
冬芽に似た小さな丸いものが見えますか?
少し分かりにくいのですが、これが今年の春に受粉した小さなどんぐりです。 |
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この小さなどんぐりは、来年の春までほとんど成長しないでこのままの形で過ごし、その後成長して秋には丸くて大きなどんぐりになります。 |
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枝を見ると、成熟したどんぐりと小さなどんぐりの間に芽鱗痕(がりんこん)があります。
芽鱗痕の手前、つまり2年目の枝には成熟したどんぐりがあり、芽鱗痕の先の1年目の枝に小さなどんぐりがついているということです。 |
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(金林和裕) |
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2年目のクヌギのどんぐり。 |
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1年目のクヌギのどんぐり。
小さくてわかりにくい。 |
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今年の第1回から3回まで、すべての観察会に参加いただいた方には、恒例のりっぱな(?)修了証をお渡ししました。
参加いただいたみなさん、講師のみなさん。スタッフとしてご協力いただいたNPO会員のNさんSさん、1年間ありがとうございました。 |
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アンケートで、今年の野川公園で印象に残ったことをあげていただきました。一部を紹介させていただきます。 |
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ヤセウツボがタンポポに寄生している実物を掘り出して観察した…第1回 |
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クモの団居(まどい)…第1回 |
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セナガアナバチのゴキブリを狩る生態。雌雄の産み分けにもびっくり…第2回 |
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「カラスの死骸と集まる虫」は衝撃。日ごろ美しい自然・花鳥風月を観て癒されたいと思っていたのだが…第2回 |
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今年はきのこの話が聞けて良かった…第2,3回 |
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ヒマラヤスギの球果の成長…継続観察 |
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ヤマガラがエゴノキの実を割って食べるシーンが見られた…第3回 |
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シジュウカラの鳴き方の変化に疑問を持っていたが解決できた…第3回 |
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アカスジキンカメムシの臭い。パクチーを思い出した。体験は凄い…第3回 |
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クモの生態の話は毎回どれも面白かった…通年 |
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蜂は蜜を吸うものと思っていたが、狩蜂の生態、その戦略には感服した…通年 |
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生き残りをかけた生物の進化の奇跡を実感した…通年 |
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生物はみんなつながっていること、その関係の中で生きていることがよく分かった…通年 |
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豊富な話題、面白いエピソードに引き込まれた。つい人に話したくなる(得意顔で!?)…通年 |
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「名前だけではない」「身近なフィールドで…」その意味がすごく腑におちた(先生方の魅力もすごい)…通年 |
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ほんと、いろいろありましたね。
2016年は岩瀬名誉学長に参加いただけず残念でした。頭は元気だが足が… とご本人が一番くやしい思いをされています。でも、内緒で下見に参加するなど、徐々に回復しておられます。
2017年の観察会にご期待ください。 |
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レポートまとめ:事務局O
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