2017年  NPO法人自然観察大学
第2回観察会
2017年6月25
場所:都立水元公園

朝まで降っていた雨も出発後には止んで、いつものように盛りだくさんの観察ができました。
お時間のある時に、ゆっくりとご覧ください。

雨の中の開会あいさつ。若干表情が沈んでいるかも。観察会では傘よりも合羽がベターです
植え込みのエノキの実生に点々と見られたアカボシゴマダラ幼虫。雨にぬれても平気? (写真:石井秀夫)
担当講師については【講師紹介】をご覧ください。
写真提供者名はそれぞれに記してあります。記載のない写真は自然観察大学の撮影です。写真などの無断転載はお断りいたします。
林からはみ出た木
集合場所である「かわせみの里」管理センターの建物わきに、ちょっとした樹木群があります。
おもにアカメガシワやハゼノキで、高さは5mほど。これらをわざわざ植えたとも思えないので、鳥に運ばれたか何かで芽ばえ、そのまま刈られることもなく伸びてミニ林となったのでしょう。
アカメガシワは公園内の各所に見られますが、林の外の日あたりのよいところに芽ばえています。ほかの樹木に先駆けて芽生える、パイオニア的な木といえます。
ここでは雄花が終わったばかりで雄の木とわかりますが、ちょっと移動してみましょう。
林縁に大きく枝を広げたアカメガシワ。写真の上部が雄株、下部が雌株
アカメガシワの雌花
アカメガシワの雄花(写真:川名興)
林縁部に枝を広げた大きなアカメガシワがありますね。
しかも上部に雄の木、下部に雌の木とよく見比べることができます。
やはり日あたりのよいところに芽ばえ、林縁の空間を占めていることがわかります。林内には決して伸びられない木のようです。
(岩瀬徹)
ナガミヒナゲシの繁殖戦略は?
ナガミヒナゲシはみなさん知っていると思います。このところたいへんに増えていて、春に道端などで朱色の花が目立ちますね。
この場所には、果実になったナガミヒナゲシがたくさんあったのですが、残念ながら除去されたのか、ほとんど見られなくなってしまいました。
こんなこともあろうかと、自宅(千葉県富津市)のまわりで採集しておきました。
※ ナガミヒナゲシの果実をみんなに配る...
果実が長いですね。それで「長実ヒナゲシ」の名前があります。花茎も長いですね。
よく見ると、上端に小さな格子状の窓があります。風で揺れると、ここから種子がこぼれ出ます。小さな種子ですから、風で散布されやすいのでしょう。いわゆる繁殖戦略ですね。
どうですか、種子が出ないのもあると思いますが、それはもう空っぽということでしょう。
花期のナガミヒナゲシ
(「形とくらしの雑草図鑑」より)
用意したナガミヒナゲシを取り出す川名先生。長い花茎をつけたまま持ってきてくれました
ナガミヒナゲシの実(左)とその断面(右)。中に黒い小さな種子がびっしり
※ めいめいがナガミヒナゲシの果実を振って、種子が出ることを確認してみる。そのとき"ナガミヒナゲシは特定外来生物に指定されました"という声が上がる。
...そういうわけですので、種子を散らさないようにしましょう。果実は、見終わったら回収します。
果実を割ったところの写真があるので、それを見てください。
(川名興)
テントウハラボソコマユバチ
世界中で愛されているテントウムシにも天敵はいます。その一つがテントウハラボソコマユバチ。ここにそのまゆがあります。
孵化した蜂の幼虫はテントウムシの体内で体液を吸って大きくなり、3週間ほどすると腹の先から出て、テントウムシの体の下に潜り込んでまゆを作ります。ここでいま見られるのが、そのまゆというわけです。
昆虫の成虫は一般に生存期間が短く、寄生蜂が成長を完了させることができません。多くの寄生蜂は生育期間の長い幼虫に寄生します。
ところがテントウムシの成虫は生存期間が長く、ナナホシテントウで半年、ナミテントウで4か月ほどです。それでテントウハラボソコマユバチのような成虫に寄生する蜂が現れたのでしょう。
ナミテントウとテントウハラボソコマユバチのまゆ。この時点でテントウムシは死亡している
この蜂、昆虫の生態写真を撮る者には、とても魅力的な題材です。テントウムシの成虫に産卵するからです。
写真を見てください、蜂は腹部を抱えるように下に曲げて、腹の先の産卵管をテントウムシに向かって突き出しています。このポーズでテントウムシを追いかけ、止まれば周囲を回りながら硬い外骨格(鎧:よろい)の隙間を探します。硬い鎧も体を動かすために幾つかの部分に分かれています。各部分は重なり合って隙間を隠すようなっています。しかしある瞬間、針一本の隙間ができることがあります。蜂はそれを見つけると、体を反り返らせ、腹部を前に突き出して、産卵管をテントウムシに突き刺し、卵を体内に送り込みます。
テントウハラボソコマユバチは体長3mmほどで、野外で撮影するのは難しく、採集することもまず無理です。そこでまゆを抱えたテントウムシを探します。まゆが見つかるのは6・7月と8・9月。ここ水元公園では過去に採集したことがあるので、探していました。そして6月23日(金)に見つけました。まゆ+テントウムシが見つかれば、この蜂は雌だけですので、出てきた蜂とテントウムシを同じ容器に入れておけば、すてきな写真を撮ることができます。
田仲義弘:本稿の写真も筆者)
オオヨシキリの繁殖生態
公園のヨシ原ではオオヨシキリが繁殖しています。
オオヨシキリは4月下旬から6月にかけて雄が先に渡来して縄張りを形成し、後からやってくる雌を待ちます。
雌は雄の鳴き声や縄張りの善し悪しなどを基準に、つがい相手を選択します。雄は、早く渡来した個体ほど、また安全で食物が豊富な場所を縄張りにした個体ほどつがいが形成されやすく、時には一夫多妻になることもあります。
ちなみに、蒲生干潟(仙台市)での調査によれば、一夫一妻71.6%、一夫二妻15.8%、独身雄12.6%でした(斎藤隆史1976 山階鳥研報)
オオヨシキリの雄は大声で鳴くので縄張り(テリトリー)を観察するには好都合です。ただし、縄張りの境界や面積は必ずしも一定ではありません。縄張りは雄の個体数(密度)によっても、繁殖の時期によっても変化し、やがて繁殖を終えると解消されます。
観察会当日は、オオヨシキリの繁殖も終盤なので雄が鳴いてくれるかどうか分かりません。
案の定、姿もみえず、鳴き声も聞こえません。そんな時のために、「鳴き声タッチペン」(日本野鳥の会)を用意しました。
パネル写真に専用の「シール」を張り付けておけば、その場で鳴き声を再生できるので野外での観察会や理科教育でもとても便利です。
※ 鳴き声を再生してしばらくすると、ヨシ原の中から1羽のオオヨシキリが現れました。しかも、巣材をくわえて飛び立つシーンも観察できました。
ただし、鳴き声タッチペンの使用は要注意です。
「春から夏にさえずりを再生すると、野鳥の繁殖を妨げることもあるので注意して使用すること」「(野外では)イヤホンを使用すること」(使用上の注意より)
心がけたいものです。
(唐沢孝一)
「鳴き声タッチペン」の声に反応して現れたオオヨシキリ(写真:石井秀夫)
鳴き声タッチペン(日本野鳥の会)
当日用意したオオヨシキリのパネル(写真:唐沢孝一)とタッチペン用のシール(右下)。シールにペンを近づけると鳴き声が再生される
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ヤマモモの果実
ヤマモモの果実が色づいています。
果実は低い枝にもついていますので、近寄って観察してみましょう。果実の表面には突起のようなものが多数ついています。キイチゴ類の実に似ていますが、ようすが少し異なります。
キイチゴ類は果床に果実が多数まとまってついた集合果ですが、ヤマモモは全体が1個の果実で、赤い部分は果皮が液質になり、その表面が粒状になったものです。
ぶつぶつを除いてみましょう。食べてみてもいいですね。
1個のたねのようなものが出てくると思います。表面には多数の毛が見られます。
このたねのようなものが、核にあたり、中に種子が入っています。このことから、ヤマモモの果実は核果と呼ばれます。
ヤマモモは日本と中国の原産で、暖地の山地や丘陵地に自生しますが、公園木や街路樹としてよく植えられています。
雌花と雄花は別の株につき、花は3〜4月に咲きます。
ヤマモモの果実
ヤマモモの果実の断面。中のたねのようなものは核

ヤマモモの雄花穂
ヤマモモの雌花穂
雄花は多数穂状につくので目立ちます。雌花穂はあまり目立ちませんが、熟すと赤い果実が多数つくので目立つようになります。
この果実は甘くておいしいので、ジャムやシャーベットにして食べられます。
人間だけでなく、鳥にとってもおいしい食べ物のようで、よく集まっています。
鳥との関係については、鳥の先生にお話していただきましょう。
(飯島和子;本稿の写真も筆者
ムクドリの家族群とヤマモモ
前回第1回観察会のあと、6月上旬に巣立ったムクドリの幼鳥は、1〜2週間、親鳥の後に付いて、餌をもらいながら餌の捕り方や場所を学習しながら独り立ちしていきます。
ちょうどその頃に果実が熟すヤマモモの木や芝生などにムクドリの家族群が見られます。
ちょっと前まで、このヤマモモの実も食べに来たムクドリの家族群がたくさんいたのですが、残念ながら今日はほとんど見られませんね。どこか別の場所にいるのでしょうか...
ムクドリをよく見ると、色のコントラストのはっきりした個体と淡い灰褐色の個体が見られます。前者が成鳥(親鳥)で後者が幼鳥(巣立ち雛)です。
ヤマモモの果実のたね(核)は、ムクドリにとって少し大きいので、糞からではなくペレット(未消化物の塊)として口から吐き出します。

ヤマモモの果実を食べるムクドリ。上が成鳥(親鳥)、下が幼鳥(巣立ち雛)
ムクドリ成鳥(右)と幼鳥(左)

ヤマモモの果実を食べるハシボソガラス幼鳥
ヤマモモの果実を食べるスズメ幼鳥
ヤマモモの果実はムクドリばかりでなく、ハシボソガラスやスズメにも利用されています。ハシボソガラスは、果実を丸呑みして食べますが、スズメは果肉の部分だけ食べます。
写真はいずれも幼鳥ですが、その特徴はハシボソガラスの幼鳥は口の中が赤く、スズメの幼鳥は嘴の根元が黄色で頬と喉の下の黒色部が薄くなっています。
(越川重治;本稿の写真も筆者
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小水路の水生植物
この水路には、意図的に持ち込まれたと思われる植物も含め、様々な水生植物が生育しています。
水辺から水中にかけて生育する植物を生活形でグループ分けして観察してみましょう。この水路には、意図的に持ち込まれたと思われる植物も含め、様々な水生植物が生育しています。
水辺から水中にかけて生育する植物を生活形でグループ分けして観察してみましょう。
<抽水植物>
水底に根を張り、茎の上部や葉が水面より上に突き出ている植物です。ここではクサヨシ、フトイ(オオフトイ)、ミクリ、マコモなどが見られます。
<浮葉植物>
水底に根を張り、葉を水面に浮かべている植物です。ここではヒシ、アサザ、ガガブタ、スイレンなどが見られます。このスイレンは園芸品種で、日本原産のヒツジグサではありません。
<浮漂植物>
水底には根を張らず、水面に浮かんで暮らしている植物です。ここで群生しているのはオオアカウキクサ(広義)で、シダ植物です。(広義)としたのは外見での識別が非常に難しい数種があるからです。在来種のオオアカウキクサは保護対象の絶滅危惧種、外来種のアゾラ・クリスタータ(アメリカオオアカウキクサ)は駆除対象の特定外来生物に指定されています。この場所のものは外来種の方である可能性が高そうです。
<沈水植物>
体全体が水中にある植物ですが、この水路にはなさそうですね。沈水植物は水の透明度によって生育できる深さが変わり、この場所のように濁った水のところでは生育が困難になります。
この場所ではあまりはっきりしませんが、沿岸から水深が深くなるのに対応して抽水植物、浮葉植物、沈水植物という順の分布帯が形成されます。
(中安均;本稿は写真も筆者
様々な水生植物が生育する小水路。水は流れていない
ミクリ。雄花序の下方に雌花序があり、雌花の方が先に咲く
アサザの花
ヒシとオオアカウキクサ(広義)
コフキトンボ
この水路にシオカラトンボの雄に似たトンボがたくさんいます。
コフキトンボというトンボで、シオカラトンボより少し小型で、腹部も太めです。
よく見ると、同じ場所にミヤマアカネのように翅に帯のある(位置は先端より少し内側)、黄色っぽいトンボもいました。
実はコフキトンボは、雌にだけ2つの型があります。体が灰色で翅に帯のないタイプと、体が黄色で翅に帯があるタイプの2型です。
地域や場所によって、2タイプの割合に違いがありますが、どちらかというと帯型は少数派です。沖縄には、体色は他の地域の帯型と同じで黄色ですが、翅に帯がない帯型の帯なし?! がいるそうです。
なぜ雌に2型が生じるのでしょうか。千葉大学の高橋佑磨助教が、アオモンイトトンボの観察から答を出しています。
アオモンイトトンボの雌にも、雄の体色に似た雄型雌と、雄の体色に似ていない雌型雌の2型があります。そして、これまた地域によってその比率が違います。
コフキトンボを指し示す鈴木先生
コフキトンボ雌の2型(写真:田仲義弘)
高橋氏の観察によると、雌型雌の多い地域では、このタイプを多くの雄が好み、交尾後に産卵しようとしている雌に、他の雄達が頻繁に交尾しようとするので、結果的に産卵が妨害されてしまいます。また、餌を食べようとしている雌も執拗に追い回されます。このような雄の行動をセクシャルハラスメントと呼ぶそうです。セクハラの結果、全体として集団の繁殖力は低下します。
そこで、にわかに注目されるのが少数派の雌です。上記の例の場合、少数派である雄型雌はあまり異性に人気がないため、産卵行動も摂餌行動も邪魔されずに済みます。その分、繁殖力は上がります。高橋氏によれば、数理モデル、野外観察や実験の結果から、雌の2型が半々に存在する(多様性が高い)場合に、集団の繁殖力が最大になるそうです。雄型雌の方が多い集団では、逆に雄型雌がモテすぎて、セクハラを受けて、繁殖力が下がります。
*参照:多様性の適応的進化は個体群のパフォーマンスを高める
コフキトンボでも、このような現象が起きているのかもしれません。注目されるのはいいけれど、注目されすぎるのは面倒なようです。
ところで全く違う話ですが、上述の高橋佑磨氏らが、注目されるための研究発表の工夫も教えてくれています。興味のある方は、「伝わるデザイン」で検索してみてください。
(鈴木信夫)
草はらの地表性昆虫
芝生のように短く刈られた草はらには、地表を徘徊したり隠れ家(休息場)とする昆虫などがいます。
刈り取られた草が積もっている下に休んでいるので、腰を下ろして目を地面に近づけて見ましょう。
そして、枯草をかき分けて、動くものは何でも、これから配るケースに入れてください。
※ 一人ずつにケースを配る。みな、しゃがんで虫を探す。
地表性の昆虫をみんなで探す
マルガタゴミムシやヨツボシテントウムシダマシがいるはずです。
小さい虫がいますね。ケースに入れたら、ルーペで見てください。
みなさん、色々な虫を探してきました。
・ゴモクムシ類:地表を徘徊し動物質を主食とするゴミムシの仲間
・オカダンゴムシ:地表を徘徊し腐植質などを食べる
・ハムシ類2種:いずれも地表を休息の場にする
今日は曇天、時折霧雨が降る中の観察ですが、個体数、種類数ともに多いようです。
1週間前の下見のときは晴天で地表は乾燥して、ごく少数でした。
これらがどこにいたのか不思議ですね。
(山崎秀雄;本稿の写真は筆者と「昆虫博士入門」より
マルガタゴミムシ:主に動物質食。地表徘徊性。地表を生活の基盤とし、昼間徘徊する。早春から出現、出現期間は長い。雄前脚附節は幅広く下面に絨毛を持つ
ヨツボシテントウムシダマシ:腐植物食、地表性。根ぎわや落ち葉下を生活の基盤にする。徘徊は最小限。雄は前・中脛節内側に刺状突起がありその先は弓状に削れる。これは交尾の時雌を確保するためのもの
刈り残された群落
今回のコースに中央広場という広大な区域があります。
広場といっても芝生とかグラウンドとかではなく、大半が半自然草はらといえるようなところです。
ときどき刈り取りが行われるようです。今回の観察会の前にも全面的に刈り取りがなされましたが、その一角にパッチ状に群落が残された部分がありました。刈り残した目的が何であったかはまだ確かめてありませんが、おかげで刈る前の群落のようすを知ることができます。
雑草の話題になるとつい笑顔になる岩瀬先生
それを見ると、オギの優占する群落が多かったと思われます。
オギはススキに似ていますがかなり湿った土地を好みます。この広場の元の姿は湿地ではなかったかと推測されます。
さらに一部にヨシ群落がありました。オギよりもさらに水辺を好みますから、湿地だった可能性は濃厚です。
中央広場の一角の刈り残された植物
オギ(左)とヨシ(右)のすみわけが観察できた
オギはススキのように株立ちせず茎が単立します。それで成長すると群落内にすき間ができます。
そこへ入り込む草があります。セイタカアワダチソウやヨモギなどです。いずれも茎が直立するタイプです。
秋にオギの穂が揃うころセイタカアワダチソウの花も咲くと、白銀色と黄色の組み合わせが見られることでしょう。
少し土地の高いところはクズがはびこりオギを圧倒しています。これも土地の成り立ちを微妙に反映しているのかもしれません。
(岩瀬徹)
ナミヒメクモバチの営巣
6〜8月に、よく伸びたセイタカアワダチソウの50cmほどの高さの葉裏をじっくり探すと、泥の塊が付いていることがあります。
ナミヒメクモバチの巣です。
泥は小さな塊が集まって並んでいますね。
運が良ければ、上か下の端に小さな穴が開いていて、壺のようになっているのがわかるかもしれません。ナミヒメクモバチの巣は、20個ほどの小さな壺を並べてできています。
アシナガバチやスズメバチなどを社会性狩蜂というのに対し、単独で営巣し繁殖するものを孤独性狩蜂といいます。
孤独性狩蜂の巣はシェルターで、ほとんどは地中や枯木の中、岩の隙間に作られますから、私たちが見るのは困難です。
ナミヒメクモバチの営巣は、数少ない観察可能な例です。
ナミヒメクモバチは壺を左官の技術で作ります。コテは腹部末端背面の楕円形の部分。
材料の粘土を水でこねて玉にして、大顎でくわえて運んできます。泥団子を葉に置き、腹のコテで押しつけます。これを数回繰り返して小山ができます。
ここからが本領発揮...
・持ってきた泥団子を壺の内側の縁に置き、後脚で外側から押さえる。
・腹部を曲げて泥団子の内側に持ってくる。
・腹のコテを団子に押し当てながら伸ばしてゆく。
・コテを左右に振ると内側がなめらかな壁の一部ができあがる。
...これを40・50回繰り返して壺を完成させます。
壁の内側からコテを当てるので、内側はなめらかですが、外側は後脚で押さえるだけなので凸凹になります。
凸部分一つが一回の作業でできているので、これを数えれば泥何個でできたのかがわかります。かつて数えたことがあります。
壺が完成し、乾いたら、獲物を狩って運び入れます。
獲物はハエトリグモなどの巣を張らないクモです。
肉の少ない脚は切り落としてしまいます。蜂がクモを運んでいるところを見ると、クモの脚はなく、ひっくり返したクモにまたがり糸イボ(出糸突起)をくわえていることがわかります。
クモを壺にしまうと卵を産み付け壺を閉じます。この作業を何回も繰り返して葉裏の泥の塊ができあがるのです。
みなさんご存知のことと思いますが、壺の中のクモは麻酔状態で、卵が産み付けられています。孵化した幼虫はこのクモを食べて成長するというわけです。
(田仲義弘;本稿は写真も筆者
 
セイタカアワダチソウの葉裏のナミヒメクモバチの巣
泥団子をくわえてきたナミヒメクモバチ
腹部先端をコテのようにして成型する
壺ができると、獲物のクモを狩って運び入れる。このとき獲物の脚は切り取ってある
クモの擬態
今日のテーマは擬態です。ほらここにゴミグモがいます。分かりますか?
縦長にゴミグモ、卵のうとゴミがついています。どこにクモがいるか、なかなか分かりませんね。
これを擬態といいます。捕食者からの目くらましですね。さっきのクモバチのように、クモにもたくさんの天敵がいます。

遠目には分かりにくいゴミグモ(写真:樫聡)
上から順に、ゴミグモ本体、卵のう、ゴミ。近くで見ても分かりにくい(写真:浅間茂)
このフィルムケースの中にアリグモがいます。
先ほど、その木の上にいたのを捕らえました。アリそっくりですね。何が違うでしょうか。
そうです。脚が八本ですね。あっ、飛び出してしまいました。糸を出してぶら下がっています。このように全てのクモは糸を引きます。
ボルネオのアリグモは、あまりにもアリに似せすぎたため、ジャンプができなくなり、虫を捕らえることができなくなりました。それで花粉や蜜を食べていると報告がありました。
日本でもただ1種類だけ、花粉食のクモがいます。それはアシブトヒメグモです。
アリグモとアリ(写真:浅間茂)
ところで、何故アリグモはアリに似せるのでしょうか。アリは昆虫の中のギャングです。そのギャングに似せて捕食者に襲われることから、免れているのです。マツの葉そっくりな、オナガグモもいます。次回に期待しましょう。
もう一つ、雨とクモの関係を話しましょう。
雨が降ると、円網を張るクモは横糸に付いている粘球が粘らなくなり、網の張り替えが必要となります。その際、古い網は食べて、消化吸収され、再び糸として利用されます。網は大事なタンパク質でできているからです。
また雨が降り始めると、水平の円網を張るクモの中には、しずくが垂れるように、頭を下向きに変えるクモもいます。
しかし、前回観察したクサグモは別です。
粘りではなく、棚状の網の上に糸を引き回した迷網部で糸にぶつかり、棚網に落ちた虫を捕らえています。粘球を利用していませんので、雨が降っても網を張り替えることはありません。いや、あまり網を新しく張り替えることなく、糸を引いて網を補修したり大きくしています。だからクサグモの網はゴミが多いですね。
またネコハグモやウズグモなども、粘球でなく細かい糸がからみついて虫を捕るので、雨が降っても粘性に変化はありません。
(浅間茂)
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ラクウショウ
前回の観察会では1945年に中国で発見された生きた化石と呼ばれるメタセコイアのお話しをしました。
この木はメタセコイアによく似ていますが、アメリカとメキシコ原産のラクウショウという木です。
どこが違うのかというと、葉の付き方が違います。
前回も話題になりましたが、もう一度確認しましょう。見本を渡しますのでよく見てください。互生になっていますよ。メタセコイアは対生でしたね。
それから球果もメタセコイアより大きいのですが、比べないと分からないかも知れませんね。
こちらの水際の所を見てください、杭のようなものがいくつも出ています。これはラクウショウの呼吸根で、湿った土地での根の呼吸を助けています。
ラクウショウはヌマスギとも呼ばれ、冠水するような所でもこの根のおかげで生育できるのです。
ラクウショウの名の由来は漢字では落羽松と書き、その通り鳥の羽のような枝ごと落葉するので名付けられました。
この先にメタセコイアの森とラクウショウの森があるので、時間のある方は後でゆっくりくらべて見てください。
池のほとりでラクウショウを観察
メタセコイア(左)とラクウショウ(右)の若い球果。一般にラクウショウの球果のほうが大きい
ラクウショウの呼吸根
(金林和裕)

朝まで降っていた雨も出発後には止んで、充実した観察会でした。
参加いただいたみなさん、写真提供をいただいた方、そして講師やスタッフのみなさん、ありがとうございました。
水元公園の第3回観察会は10月1日(日)です。これまでHPをご覧いただくだけだったみなさん、今度は実際に参加してみてはいかがですか?
(レポートまとめ 事務局O)

2017年度 野外観察会
第1回の報告

第2回の報告

 
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