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秋の岡発戸…… |
今回の目玉は、トンボです。この時期は、通称「アカトンボ」、アカネ属のトンボがよく観察できます。早速見分け方を教わりました。さて、ちゃんと見分けられるでしょうか。(詳しい見分け方については『校庭の昆虫』P.136-137参照。2003年度第3回観察会でも少し紹介しています。)
スタート地点のクリ林にはセミの抜け殻(抜け殻からも雄か雌か見分けられるのだそうです)、ジョロウグモの網など、観察ポイントが目白押し。
この辺りの葉っぱは、どうやらアメリカシロヒトリの幼虫に食べられているようですね。日本では昭和20年に初めて発見されたアメリカシロヒトリですが、蛹が貨物について広がったといわれています。元々は年に2世代でしたが、最近は3世代登場することもあるそうで、岡発戸でも3世代目が発生しているようです。今年は特に発生が多いとのこと。道理で、あちこちに葉っぱのない木が見られるわけですね。 |
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これまでずっと観察してきた斜面林の様子を眺めてみました。
今年は道沿いのサクラやエゴノキなどが早く落葉していますが、斜面林では常緑樹と落葉樹の違いはまだはっきり現れていません。ここは常緑樹の多い斜面林ですが、季節がもう少し進むと落葉樹の葉が色づいてくるのが分かるでしょう。 |
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空き地を覆う雑草たち |
つる草のカナムグラやアレチウリといった雑草は今が花の時期。特にカナムグラは、大量の花粉を飛ばしています。荒れ地には大量に茂るクズが目立ちました。背の高いオオブタクサは、花が終わり果実ができています。オオブタクサは近年、平地から高原まで分布を広めている雑草です。もう少し経つと、セイタカアワダチソウも花を咲かせ始めます。 |
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ヤマガラがエゴノキに飛んできた |
「ジージー」という声が聴こえました。エゴノキに、ヤマガラが実を取りに来ています。
実を、つついて食べたり、谷津の反対側の斜面林へと運んでいったりするのを全員で観察しました。
エゴノキにはエゴサポニンという毒があり、こんな実を食べられるのはヤマガラぐらいです。
ヤマガラがこの毒の実を食べることができるのは、毒を分解できるからではなく、毒が含まれる果皮を除去しているからなのだそうです。こうして、エゴノキの種子散布に一役買っているのですね。 |
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似ている植物を見分けてみましょう |
クワとコウゾ(ヒメコウゾ)が同じ場所に生えていました。冬芽が葉柄の付け根にできています。
「これはクワでしょうか?コウゾでしょうか?」
クワとコウゾはよく似ていますが、冬芽の形と葉の落ちた葉柄のあとから違いが分かります。
ちなみに、和紙の原料として栽培されているコウゾは、ヒメコウゾとカジノキの雑種だそうです。 |
参考:『校庭の樹木』 |
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冬芽と葉柄のあと(左:コウゾ、右:クワ) |
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秋の野花 |
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ツリガネニンジン |
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キツネノマゴ |
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ゲンノショウコ |
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道沿いにたくさん見られたススキは、ちょうど開花期。穂をルーペで観察すると、黄色っぽい雄しべと茶色っぽい雌しべが分かります。ススキの小花は、雌しべの柱頭が先に現れ、雄しべのやくが後から現れるのだそうです。 |
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嬉しい落とし物 |
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石垣のある場所で、アオダイショウの抜け殻を発見。
頭からしっぽまである完全な抜け殻は、まだ湿り気を帯びていて脱ぎたてのようです。
「何メートルくらいあるんでしょう?」
「ちゃんと目の部分も分かりますね。」
「どこから脱ぐんでしょうか?」
参加者の間から自然と声が上がり、この落し物を囲んで話に花が咲きました。
じっくり観察した後は、浅間先生が宝物のようにお持ち帰りになりました。
浅間先生によると、長さは187p。脱皮の際に鱗の間が伸びるので、実物の全長は150p前後と推測されます。ヘビが脱皮をするときは、頭から皮をめくるように脱いでいくので、脱皮殻の内側と外側は反転しています。内側の方が茶色が濃く、これがヘビの体表面と接していた側。目の膜も完全に残っていましたが、反転しているため凹型になっています。
この谷津では、他にヤマカガシ、ヒバカリ、シマヘビといったヘビが確認されているそうです。この日は、田んぼの用水路のコンクリートの隙間からヤマカガシも顔を覗かせました。20年ほど前はマムシもいたそうですが、今は見られないとのことです。 |
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ぶら下がっているのは何? |
ぶら下がっているこの茶色の紡錘形の袋のようなものは、一体何でしょう。
オオトリノフンダマシというクモの卵のうです。
たいていは2〜4個ついているのが普通ですが、5個ついている場所もありました。
この中には200〜400個もの卵が入っています。孔が開いていれば、もう子グモが出のうした後です。
これから、このクモは幼体で冬を越しますが、冬越しの仕方はクモによって様々です。
一方、卵のうのそばでいつもじっとしているのは、母グモです。
このクモは夜中(我孫子周辺では午後11時頃)に1mもある大きな水平円網を張りますが、朝方には畳んでしまうという習性をもっています。網はもちろん食べて再利用します。
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オオトリノフンダマシの卵のう
すぐそばに母グモがいます。 |
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鳥たちの秋 |
10〜20羽のヒヨドリの群れが、西南の方向へ渡っていくのを観察しました。秋の渡りの時期は、山野の果実の豊凶に影響されていると言われているそうです。
また、上空を、カケスが4〜5羽、ゆっくりと飛んでいきます。秋に山地から平地へと移動してきたものと思われます。
秋になると、さまざまな野鳥の山から里への渡りが見られます。
斜面林の頂きやゴルフ場のネットの上などの見通しのよい所では、モズの高鳴きが観察できました。冬場、モズは雄も雌も単独で縄張りをつくります。その縄張り宣言が、高鳴きです。高鳴きをするモズを発見したら、どこかにもう一羽、敵対するモズがいるはずです。 |
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アカマツの変化 |
春から観察してきたアカマツ。枝の先端に冬芽が出ていました。
冬芽は、アカマツでは赤く見え、クロマツでは白く見えます。
冬芽から枝の基部に目を移していくと、今年の雌花穂が若い球果(まつぼっくり)となっています。さらに基部では、前年の雌花穂が大きな球果になっており、秋の終わり、鱗片が開いて種子を散らします。 |
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オオバコは強い! |
道の中央にはベルト状にオオバコ、カゼクサ、チカラシバ、ミチヤナギなどの群落がありました。
踏みつけ、刈り取りの加わる所ではオオバコは小形ですが、道の端の方に生えているオオバコはずっと大形です。オオバコは踏みつけに強いことで知られていますが、刈られたり踏まれないでいるとこんなにも大きく伸びるのですね。 |
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花粉を持たない雄しべ!? |
ツユクサが花を咲かせていました。青い花弁と黄色い雄しべの対照が際立ち、遠くからでもよく目立ちます。意外なことに、黄色く目立つ雄しべには花粉がありません。これは、花を目立たせる役割だけを担っている「飾り雄しべ」と呼ばれるものです。
雌しべに寄り添うようにして、長く突き出して伸びる2本の雄しべに花粉ができますが、こちらの雄しべは地味で目立ちません。
ツユクサには、虫による花粉媒介のほかに、もう一つ受粉のしくみがあります。ツユクサの花は早朝から開き、午後にはしぼみますが、その際、花粉をつけた2本の雄しべと雌しべが巻き上げられることにより、同花内での受粉が起こるのです。 |
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ツユクサの花
短いほうの雄しべは黄色が目立ちますが、「飾り雄しべ」で、花粉がありません。
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出典:『写真で見る植物用語』
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大きくなったジョロウグモ |
幾重にも張られた大きなクモの網。前回まではまだ小さかったジョロウグモの網があちこちで大きくなっていました。網の中に、触肢が膨れた小さいクモがいます。ジョロウグモの雄です。普通、網を張るクモの雄は、成体になると網を張れなくなり、雌を探しに歩き回ります。ジョロウグモの雄は、雌が成体になるために脱皮するときを狙って交接するため、こうして雌の網に居候して機を窺っているというわけです。網に何匹も雄がいる場合は、雌の近くにいるのが優位の雄個体なのだそうです。ジョロウグモの目の細かい大きな網は、張るのに莫大なエネルギーを使うため、9月頃になると、壊れた網は半分ずつ張り替えられます。他のクモでは、そのような光景は見られません。金色の糸を張るクモには他に、ビジョオニグモなどがいます。 |
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ジョロウグモの雌
初夏に比べて、こんなに大きくなりました。 |
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イオウイロハシリグモとそのまどい(子グモが卵のう周辺で過ごすこと)
卵のうから出てきた小さな子グモがたくさん見えます。 |
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小屋の屋根のひさしを覗くと、オオヒメグモとその卵のうが観察できました。 |
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■見つけた! 〈その1〉 |
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クワの枝先の葉に、クワゴ(クワコ)の繭が作られていました。
クワゴはカイコの原種とされるガです。
カイコの繭に比べると一回り小さいですが、糸はカイコのものよりしっかりしていて、野性味を感じました。
この枝には葉身のない葉柄がいくつか残されていましたが、繭を作る前に幼虫が食べたものと思われます。 |
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小屋の壁に、コバネイナゴ(左)とクビキリギスの若虫(右)が仲良く(?)張りついていました。
その足元にいたのは、こちらも仲睦まじいコバネイナゴの雄と雌。 |
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カマキリが菌にやられていました。 |
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面白い花の仕掛け |
中安先生より、興味深いお話がありました。
北半球の温帯に分布するサルビアの仲間(アキギリ属)はハチ媒花で、マルハナバチなどが花粉を運びます。花の中にハチが入り込むと、シーソー型の雄しべの前方が下がり、ハチの体に花粉がつくというしくみです。
サルビア・ガラニチカ(Salvia guaranitica)の花は大きく、その仕掛けが確かめやすいということで、実際にやってみました。花の入口からペンを差し込むと、雄しべの先が下りてきて、ぺたんと花粉がつきます。ただし、この花はハチ媒花にしては花筒が長く、蜜量も多いことから、原産地(ブラジル・アルゼンチンなど)での主な花粉媒介者(ポリネーター)はおそらくハチドリだろうと考えられています。 |
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実際にペンを入れて、実演。 |
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花の色や形は、受粉のしくみと関わっています。少し見てみましょう。 |
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虫媒花は目立つ花弁の色で虫を誘引する。
青〜紫色の花:ツユクサ、ツリガネニンジン、ヤマハッカ、ナンテンハギなど
桃色の花:ミゾソバ、キツネノマゴなど
黄色の花:カラスノゴマ、ヒレタゴボウ、セイタカアワダチソウ(つぼみ)など |
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風媒花は目立つ必要はなく、花弁も発達していない。
ススキ、カナムグラ、オオブタクサ、オオオナモミ、ヨモギ、オオバコなど |
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ひっつく草の実 |
この時期、多くの草が果実をつけていますが、とげ、かぎ、腺毛などをもち、動物などに付着して散布されるものがあります。これら付着型動物散布の種子は、「ひっつき虫」とも呼ばれ、林縁や道沿いに多く生えています。人や動物がよく通る場所に生えることで、種子を運ばせているのです。そして運ばれた種子もまた、同じような場所に落とされます。自ら移動する手段を持たない植物は、いかに広く種子を分布させるかが、子孫を残す上でも重要なのです。 |
今回、観察会で歩き回った私たちも、種子散布に一役買っていたようです。 |
●かぎでくっつく: |
フジカンゾウ、ヌスビトハギ、ミズタマソウ、イノコズチ、ミズヒキ、キンミズヒキ、
オオオナモミ |
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フジカンゾウ |
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ヌスビトハギ |
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ミズタマソウ
白い毛が密生した果実が露に濡れたようすが水玉に見立てられています。 |
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■見つけた! 〈その2〉 |
高い木の葉っぱの上や草むらに、アオマツムシがいました。夕方になると街路樹からうるさいぐらいの鳴き声が聞こえますが、なかなか姿を見ることができないのがこの虫です。雄の背中には薄茶色の模様がありますが、メスは緑一色です。意外ですがコオロギの仲間で、明治時代に中国大陸から入ってきたようです。 |
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アオマツムシの雄 |
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コカマキリ |
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小型で、前脚(カマ)の内側に淡紅色・白・黒のきれいな模様が特徴的なコカマキリを発見。体色は緑色の個体もいますが、ここでは褐色のものが多いようです。
また、沢山の卵でお腹を膨らませたオオカマキリの個体もたくさんいました。後翅の付け根付近が黒褐色なのが特徴です。こちらは、体色は淡褐色のものもいますが、今回は緑色のものが多かったようです。 |
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林の中に、ヨコヅナサシガメの若虫がたくさんいました。
昭和初期に中国大陸から九州に入ってきたとされるこの虫、関東地方では1990年代になって観察されはじめ、徐々に分布を東に広げているようです。体色は黒色ですが、脱皮したての個体は真っ赤な色をしています。 |
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ヨコヅナサシガメ若虫 |
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ヤマトシリアゲの2化目 |
ヤマトシリアゲは、低地では年2回発生します。1化目は体色が黒いのに対して、2化目はベッコウ色になります。そのため、かつてはヤマトシリアゲの2化目のものとはわからずに、誤ってベッコウシリアゲという別種にされていました。第1回目の観察会では1化目を観察しましたが、今回の観察会では2化目のベッコウ型が観察できました。 |
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参考:自然観察大学2004年度
第1回室内講習会 |
ヤマトシリアゲ(ベッコウ型) |
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貴重なカラスノゴマ |
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畦道の脇に、生えていたカラスノゴマ。シナノキ科の中でも日本では数種しかない草本の1種です。
しかも、全国的に絶滅危惧種、千葉県内でも生育の少ない貴重な草です。この谷津にはもともと生育していたようですが、今は保存の手立てによって増えているとのこと。似た種には、あのモロヘイヤがあります。
キツネノマゴと名前を混同してしまいそうですが、こちらはゴマです。 |
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参加者より |
参加者の坂部さんからは、こんなお写真が届きました。 |
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オオミズアオ幼虫 |
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ビロウドハマキ |
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解散後、元の道を戻ると、綿の畑そばに「ビロウドハマキ」がいました。はじめ、左が頭と思い、左端に焦点を当てて撮影したのですが、よく見ると、右側に触角らしきものが見え、「あっ、騙された!」(ツバメシジミのように)と思い、今度は右側に焦点を当てて写真を撮りました。そのときは、何とも思わす自宅に帰ったのですが、夜パソコン画面でみて笑ってしまいました。なんと左も頭、右も頭ではないですか。つまり交尾していたのですね。
(坂部さん談) |
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到 着 |
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ひと通り観察が終わり、コースの終点に到着。皆様、おつかれ様でした。
実はここ、バイオトイレがあるとても先進的な小屋なのです。 |
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最後に、岩瀬学長からエノコログサの話がありました。
このコースで多かったのは、アキノエノコログサとオオエノコロ、それにキンエノコロ。オオエノコロは、エノコログサ(あるいはアキノエノコログサ)との雑種といわれ、近年各地で増えているとのことです。 |
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出典:『雑草博士入門』 |
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たくさん飛んでいたアカトンボ |
さて、トンボはどれだけ観察できたでしょうか。
アカネ属の仲間としては、アキアカネ、ナツアカネ、マイコアカネ、ノシメトンボがいました。秋も深まりずいぶん赤くなっていましたが(特に雄)、なかでもナツアカネは顔・胸・腹、すべて真っ赤でとてもきれいでした。またマイコアカネは顔の青白色が印象的でした(ただし、この舞妓さん、雄なんですが……
)。全体的にはノシメトンボが一番多かったようで、連結飛行をしているペアも多く見られました。
その他、オニヤンマ、ギンヤンマやシオカラトンボもいました。 |
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修了式 |
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全3回の観察会にすべてに出てくださった参加者の皆さんに、岩瀬学長から修了証が授与されました。
そして唐沢副学長からは、こうしていろいろな分野の人と一緒に観察することで、自分の知らなかったことも知ることができるということ、また岡発戸の自然について、農業を営みつつ動植物の豊かなこの場所らしい環境を生かしていっていただきたいというお話がありました。
最後に、後援という形で多大なご協力を頂きました我孫子市役所の方々、岡発戸で保全活動をされているボランティアの皆さん、そして一緒に観察を楽しんでくださった参加者の皆さん、ありがとうございました。 |
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