2018年  NPO法人自然観察大学
第1回観察会
2018年5月20日
場所:さいたま市見沼田んぼ

絶好の観察日和の中、4年ぶりの見沼田んぼでの観察は盛りだくさんでした。
ますます田んぼが減って、さま変わりしていましたが、どんな場所でも観察をたのしむのが自然観察大学です。
お時間のあるときにゆっくりとご覧ください。

担当講師については【講師紹介】をご覧ください。A、Bの2チームに分かれての観察会です。植物については、飯島・村田の両先生に分担していただいたため、このレポートを作成いただいた方の名前を記しました。写真提供者名はそれぞれに記してあります。本レポートおよび本HPの写真などの無断転載はお断りいたします。
都市郊外でのツバメの繁殖
JR東浦和駅に隣接する東浦和パーキング(駐輪場)では、たくさんのツバメが繁殖しています。5月13日の観察会当日には23巣でツバメが出入りしていました。
なぜここでは多数のツバメが繁殖しているのでしょうか。観察会では人数が多いために建物内に入れませんが、建物が置かれている環境や巣を外から観察しながら、ツバメの繁殖条件について考えてみたいと思います。
ツバメは、人や自転車の出入り口や1〜2階のガラス窓から出入りしています。ここでは、東浦和パーキングの社長がツバメのために、始発電車が発車する5時4分より前にシャッターや窓を開け、終電が発車する0時43分以後に閉めるそうです。また、開いた窓にはカラス除けの紐をぶら下げ、巣の下には糞受けの段ボールを敷くなど、ツバメ保護の対策がとられています。こうしたツバメを愛護する人の存在が、ツバメの繁殖にとっては重要です。
また、ツバメのために出入り口を確保してやることは、昔の農家ではよく見られました。神奈川県相模原市の山奥の農家では、ツバメ保護のために玄関の上の板を外し、ツバメの出入り口にしていました。
第1回観察会が行われた16年前(2002年5月18日)には、ツバメは東浦和駅のホームやトイレ前でも繁殖していました。現在は東浦和パーキングの建物内のみで繁殖しています。これは、ツバメの天敵であるカラスによる捕食圧により、駅からより安全なパーキング内にツバメ自身が営巣場所を移動させたと考えられます。
ツバメが繁殖するための条件としては、こうした人によるツバメ愛護の他に、営巣に適した建物があること、巣材の泥や餌(空中を飛翔する昆虫など)が近くの見沼田んぼにあること、などが挙げられます。
(唐沢孝一)
わかりやすく解説する唐沢先生。後方の天井付近にツバメの巣(写真:石井秀夫)
建物内で繁殖中のツバメ(写真:唐沢孝一)
ツバメのために開けた窓、カラス除けの紐(写真:唐沢孝一)
玄関の上のツバメ出入り用の穴(神奈川県相模原市。写真:唐沢孝一)
ギシギシをめぐる虫たち
この時期は、草はらにギシギシが目立ちます。茎を伸ばして果実をつけた穂がありますね。ここで見られるのはナガバギシギシです。
日陰のギシギシには、アブラムシがびっしりとついています。ギシギシにつくのはギシギシアブラムシかマメクロアブラムシですが、ギシギシアブラムシで間違いないようです。
一週間前にはアブラムシがたくさんいたのですが、今日はだいぶ減ってしまいました。アブラムシにとっては時期が遅いせいでしょう。有翅の成虫がいるのは、ほかへ移動するためです。
アブラムシの甘露(排泄物)を求めて、クロヤマアリとクロクサアリが来ていますね。
よく見ると、ナミテントウの幼虫と成虫、それに卵塊、ナナホシテントウの幼虫と成虫、ヒラタアブの仲間の幼虫と蛹を確認できます。これらはアブラムシの捕食者です。
アブラムシは、彼らを捕食したり寄生する昆虫が多く、ほとんどが死んでしまいます。しかし、捕食・寄生されて死ぬ以上にアブラムシは子孫を増やしているのです。
(山崎秀雄)
みんなでギシギシの虫を見る(写真:大野透)
ギシギシアブラムシ「アブラムシ入門図鑑」より)
ナミテントウ成虫(写真:山崎秀雄)
ナミテントウ幼虫(「昆虫博士入門」より)
ヒラタアブの一種の幼虫「昆虫博士入門」より
ナナホシテントウ成虫(写真:山崎秀雄)
ナナホシテントウ成虫(写真:山崎秀雄)
カシワ
水路の橋の側に、ひときわ目立つ大木が見られます。近くによって観察しましょう。
大きな見覚えのある葉をたくさん付けています。端午の節句に食べる柏餅に用いられる葉ですね。カシワです。私たちの見沼での観察会では毎回このカシワの木を見てきましたが、これほど葉が立派に茂っているのは初めてのことです。
枝を見ると、枯れかかった紐状の花序がぶら下がっています。雄の花序です。別の枝先近くには、雌花序が見られます。周りを狭い披針形の総苞片が囲んでいます。これから球形のどんぐりに成長するでしょう。秋の観察会の折にまた観察できればいいですね。
元気なカシワの木。2002年の第1回観察会以来、こんなに元気のよいのは初めてのこと(写真:大野透)
カシワの雌花序。すでにごく若い果実(写真:村田威夫)
<参考>4月下旬のカシワの雄花序(写真:大野透)
柏餅に用いられる葉は、関東から東北地方の多くの地域でこのカシワが使われていますが、西日本ではサルトリイバラが多く使われ、地域によっては広い葉をもつニッケイ、ミズナラ、マテバシイなどを使っています。
カシワは「炊葉(かしぐは)」の意です。古くからカシワのような大きな葉は食べ物を載せる食器として利用されていました。よく見られるアカメガシワも食器として利用され、新芽が赤いのでその名が付いたといわれています。
(村田威夫)
エノキの虫えい
植物の葉などに生物が寄生することによって、植物組織がその部分だけ異常増殖し、こぶのような形になる場合があります。これを"虫こぶ"、あるいは"虫えい(ちゅうえい)"といいます。タマバエ、タマバチの他、アブラムシやフシダニの一部が、おもな寄生生物です。
今回、エノキにできていた虫えいは、エノキハトガリタマフシ(エノキの葉にできた、先がとがった球状の虫こぶという意味)といいますが、本州以南に分布するエノキトガリタマバエというハエ目昆虫が作ったものです。
この寄主はタマバエという名前がついていますが、分類学的にはハエ(短角亜目)ではなく、カやガガンボ(糸角亜目)の仲間です。
エノキの若木。ここに虫えいがびっしりとついていた(写真:大野透)
エノキハトガリタマフシ(写真:大野透)
虫えいを切ってみたら、中にエノキトガリタマバエの幼虫がいた(写真:大野透)
<参考>タマバエの一種の成虫(写真:大野透)
3月から4月に羽化した成虫が、エノキの新芽付近に産卵します。葉の中で孵化した幼虫が摂食時に口から出す化学物質によって、エノキの組織が異常増殖して、トガリタマフシを作ります。1つの虫えいの中で、1匹の幼虫が植物組織を食べて成長します。6月前には虫えいは地面に落ち、翌春、虫えいの中で幼虫は蛹になり、3から4月に羽化します。
タマバエの成虫は口器が退化しているので、寿命は1・2日といわれています。雌雄の羽化とエノキの新芽展開のタイミングが合ってこそ、タマバエの命がつながっていくことになります。
そんなエノキトガリタマバエの幼虫に寄生するオナガコバチがいることも知られています。ちょっとややこしいですね。
(鈴木信夫)
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クワキジラミの観察
公園の川縁にクワの樹木があります。その葉裏にいた白色ろう物質(綿毛様)で覆われたクワキジラミのコロニー(群れ)を観察しました。比較的若い葉のやや硬化した裏面に多数いました。
クワの葉裏に白い紐状のものが(写真:大野透)
紐はクワキジラミの幼虫の分泌した白色ろう物質(写真:平井一男)
クワキジラミはカメムシ目(半翅目)キジラミ科に属します。
成虫で越冬し、春先にクワの新葉に産卵し、5月には孵化した幼虫が多数見られます。
さて、白色ろう物質に粉衣されたような長さ3〜4mmの幼虫は、腹端からは白色ろう物質の2対の紐を分泌しています。その紐の長さが体長の数倍ある幼虫もいました。
風上に向かう幼虫はその紐を上手になびかせて歩いていました。風下を向いた幼虫は紐が風にあおられて歩きづらそうです。
幼虫は柔らかい葉裏から葉液を吸って、腹端から甘露(かんろ)を出していました。葉の周りは吸汁害で裏側にカールしていました。
コロニーの周縁には羽化直後のセミに似た成虫がいました。
甘露にはアリが集まり、幼虫を狙ってろう物質に突入したナミテントウもいました。
クワキジラミ幼虫と脱皮殻(写真:平井一男)
羽化したばかりのクワキジラミ成虫(写真:大野透)
クワキジラミの白色ろう物質にまみれたナミテントウ幼虫(写真:平井一男)
 
このクワキジラミが多発した葉は、吸汁害や甘露にすす病が発生して発育不良になります。
卵や幼虫ついた葉を食べたお蚕様は、発育不全になったり繭が小さくなったりするとの研究報告があります。このクワキジラミはクワとカイコ、両方の有害生物です。
キジラミは漢字で書くと木虱です。シラミというとよいイメージはありません。ケジラミ、コロモジラミなど多数思い当たります。
キジラミ科では在来のナシキジラミや外来生物とされたチュウゴクナシキジラミが知られています。
このクワキジラミは、暖冬の年にはクワ葉に多発する例が多いと見ています。クワ葉上で成虫になった個体は順次分散し各種植物上で見られます。
(平井一男)
ヤノクチナガオオアブラムシの観察
このエノキの幹にアリが作った「蟻道(ぎどう)」があります。エノキやケヤキの少し太めの幹に蟻道が見られれば、その中に8割がた確認できる虫がヤノクチナガオオアブラムシです。
観察会では蟻道を壊してご覧いただければよかったのですが、共生している蟻がすぐにアブラムシのそばに来て、巣にもっていかれそうで根際で観察してもらいました。そのため数人の方しか確認できず失礼しました。
この虫の特徴は右の写真のように体長よりもとても長い口吻をもっていることです。この長い口吻の中に口針がたたみこまれていて、皮目(ひもく)に刺して樹液(師管液)を吸います。
アリが共生しているのは、この虫から余った糖分甘露(かんろ)をもらうためです。
冬の間も根際のアリの牧場で飼われているこの虫は、まさに「ありまき(蟻牧)」としての姿を現していますね。
右の写真は受精卵から孵化して4回脱皮したあとに見られる「幹母(かんぼ)」です。このアブラムシは長生きはせず、命のバトンを手渡しながら世代交代し、1年中この株の蟻道の中で過ごすのが通例です。
エノキの幹にできた蟻道
蟻道の根際のようす
ヤノクチナガオオアブラムシの幼虫。長い口吻
ヤノクチナガオオアブラムシの幹母
ところで今年はサクラがとても早く開花しましたが、いつも見ているこのアブラムシにも異変が起きていることに気がつきました。
上の幼虫と幹母の写真を比べてみると、幼虫の胸部の側面に「翅芽(しが)」が見られます。この幼虫がこれから翅をもった有翅型になるんだよ、という証です。私の経験ではこの虫の2世代目に有翅型が出て分散するタイプになることを見たことがなかったので、少し驚きました。
この話の続きは1年間の生態のあらましを下記の本に紹介しましたので、ご覧いただけると幸いです。
※ 松本嘉幸(2018)「ヤノクチナガオオアブラムシを見たことがありますか」
 千葉県いきものかんさつガイド 80〜81:千葉県生物学会編 (たけしま出版)
(松本嘉幸 本稿の写真も松本嘉幸)
クモの餌の捕り方
この看板の周りを見てください。
いろいろなクモが変わった網を張っています。
クモの網というと円網を思い浮かべますが、ここで見られる網は感じが違いますね。
オオヒメグモ
看板の下に不規則網をはっているのが、オオヒメグモです。付着部分の少し上に粘球があり、ダンゴムシなどがそれに触れると、糸が切れて釣り上げてしまいます。釣り上げ方式で餌を捕らえるんですね。
おや、反対の場所にも網があります。雄が盛んに雌に求愛行動をしています。
あっ離れてしまいました。求愛には時間がかかりそうです。
通船堀の案内板にお手製のカードを貼って、クモの展示パネルに模様替え
求愛中のオオヒメグモ(左雄、右雌)
オオヒメグモの粘球
ヤチグモの仲間
看板の脇に棚網があります。ヤチグモの仲間です。
メガネヤチグモかシモフリヤチグモだと思われますが、幼体なのでどちらか分かりません。
以前に紹介したクサグモと同じような網です。クサグモと違って、塀の隙間などに網を張ります。
網は粘らないのですが、迷い込んだ虫の振動を感じると、トンネルの部分から素早く出てきて、糸をかけて捕らえます。
ネコハグモ
看板の上に、なにやら目の細かい網が被っています。ネコハグモの網です。
この網は糸に粘球をつけるのではなく、細かい糸をからみつかせて捕らえます。からみつき式です。モップでごみ取りするのと似ていますね。
粘球で付着させて餌を捕るクモは、普通は雨が降ると粘着性が弱まり、張り替えが必要です。でもこのネコハグモの仲間(師板糸網を張る仲間)は、雨が降ると逆にごみが流れ、粘着性が増します。
ヒラタグモ
看板の上の方にあちこちに、多角形の白い綿から糸が出ているような網が見られます。ヒラタグモです。
コインのような形ですね。江戸時代の書物では、これを壁銭(へきせん)と記されています。
この綿のような中にクモが潜んでいます。
敷き布団と掛け布団のような網の間にじっとしているクモは、外に伸びている受信糸の振動を感じると、素早く出てきて、獲物を糸でグルグル巻きにして、巣に戻ります。
ちょっとこの音叉を使って、試してみましょう。
 ... 残念、出て来ません。
事前に試みた時にはうまくいったのですが、同じ刺激に慣れてしまったのでしょう。
ヤチグモの仲間
ネコハグモ
ヒラタグモの巣。餌をとるためのクモ網は巣ではないが、この場合は住む場所なので「巣」
(浅間茂 本稿の写真も浅間茂)
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イイギリの花
通船掘沿いにイイギリが生えています。大きな木ですが、下枝が張り出しているので、葉や花が観察しやすい位置についています。
この葉もカシワと同じようにご飯を包んだことから、飯桐と名付けられたそうです。従来はイイギリ科でしたが、今はヤナギ科とされています。
イイギリは雄株と雌株のある雌雄異株の樹木です。この観察コースでは雌雄両方を見ることができます。
初めに見るのは雄株です。先週の下見のときは雄花をつけていましたが、残念ながらほとんど落ちてしまったようです。最盛期にはたくさんの雄しべをつけた2cm径ほどの花が、大きな花序になって垂れ下がるため、よく目立ちます。
イイギリ雄花序(5月11日撮影:大野透)
イイギリ雄花(5月11日撮影:大野透)
イイギリ雌花序(5月11日撮影:大野透)
イイギリ雌花。柱頭が5個のもの(5月11日撮影:大野透)
雌株は少し離れたグランド横の林の中に生えています。雌花は雄花よりも小さいですが、雄花と同じように花序になります。もう花は終わっていますが、雌しべの柱頭が残っている若い果実が見られます。皆さんと観察したところ、柱頭は5個と6個がありました。図鑑などには5個と書かれていますが、ここでは6個が多いようです。この果実は10〜11月に赤く色づきます。秋の観察会で見られるといいですね。
(飯島和子)
 
スズメノエンドウとカラスノエンドウ
広い草地にスズメノエンドウとカラスノエンドウの群落が作られています。
どちらもマメ科の植物で、花は蝶形花、果実はさやの形をしています。
スズメノエンドウは花が終わり果実がついているようですが、カラスノエンドウは少し成長が遅いようで、花と果実の両方が見られます。
まず果実を見てみましょう。スズメノエンドウの果実は茶色で長い柄の先に4,5個ずつつき、中の種子は2個。カラスノエンドウの花の柄は非常に短く黒い果実が茎にくっついて上向きについています。種子は約10個。この果実は晴れた日にねじれて種子が散布され、パチパチという音の聞こえることがあります。
葉はどちらも小さいですが、この葉は羽状複葉の小葉で、先端の方の葉は巻きひげになっています。
カラスノエンドウの葉の基部には托葉があり、花外蜜腺があります。アリは来ているでしょうか。
 
     
   
写真は左からカラスノエンドウ、スズメノエンドウ、カスマグサの花と果実「新・雑草博士入門」より)
名前についてですが、ノエンドウ(野にあるエンドウ)の頭にそれぞれ"スズメ"と"カラス"とつけられたもののようです。
カラスノエンドウは果実が黒いことから、スズメノエンドウはカラスノエンドウより小さいことから名付けられたといわれています。
その間ということで、カスマグサというのがあります。カ(カラス)ス(スズメ)マ(間)グサという意味ですね。
これは両種の雑種ということではなく、大きさが中間ということです。カスマグサはここでは見られないようですが、長い柄の先に4個の種子の入った豆果が2個ずつつきます。
(飯島和子)
 
ヤセウツボ
休耕地の道端には、ナガバギシギシ、ヒメジョオン、ネズミムギ、シロツメクサなどが生えています。その中に、茶褐色の棒状のものが見られます。緑色をしていませんが植物です。ヤセウツボという寄生植物です。
寄生植物は自ら光合成によって養分を作ることができず、他の植物から養分を得ています。
根元を注意深く掘ると、近くに生えている植物の根に自分の根を差し込んで養分を得ているのがわかります。根を差し込まれている方の植物を宿主と呼びます。ヤセウツボはマメ科やキク科の植物に寄生することが多く、ここではシロツメクサに寄生していると思われます。
ヤセウツボがシロツメクサに寄生していた(写真:大野透)
ヤセウツボはヨーロッパから北アフリカが原産地です。昭和50年代に関東地方の市街地の道端で見られるようになった、帰化植物です。
咲き終わった花を一つを取り出して、開いてみましょう。黄褐色の小さい粒々が沢山詰まっています。この粒1つずつが将来黒色の種子に成長します。次回の観察会では成熟した種子が見られるでしょう。
ヤセウツボがセイヨウタンポポに寄生し根が合着している。ヤセウツボには球根のようなものがある(2016年野川公園の観察会で撮影)
ヤセウツボの花(写真:大野透)
  
ヤセウツボの若い果実の断面。黄色い粒はごく若い種子(写真:大野透)
寄生植物ですが、自分の子孫を沢山残すことに専念しています。
1つの花の中にどのくらいの種子ができるか調べたことがあります。1,700個ほどでした。ヤセウツボは40くらいの花をつけますから、1個体では7万個くらい生産していることになります。
他の植物の栄養分を使って、自分の種子をこれだけつくるとは、ビックリですね。
(村田威夫)
 
コゲラの巣穴
これはコゲラの巣穴です。
「おやっ」と思われた方も多いと思いますが、巣の入口の位置が低いですね。地上約120cmの高さです。
大人の目の高さより低いので観察しやすいといえますが、しかし、アオダイショウなどの天敵に狙われやすいですね。
コゲラの巣の特徴は、入口の直径が3〜3.5cmと小さいことです。入口のサイズは、アカゲラ4.4cm、アオゲラ5cm、クマゲラ12cmなど、体が大きくなるほど大きくなります。
また、コゲラでは枯れ木を利用するという特徴があります。アカゲラ以上の大きさでは生木を利用します。コゲラは体が小さいため、体力がないので生木に穴を開けられないようです。
コゲラの営巣木( 印)(写真:唐沢孝一)
コゲラの巣穴。直径約30mm(写真:唐沢孝一)
採餌する雄のコゲラ(写真:石井秀夫)
Bチームでは、タイミングよく、巣穴の解説中にコゲラが飛来して枯れ枝をつつき始めました。その時のコゲラの写真を見ると、頭部に赤い斑紋があり、雄であることが分かりました。
(唐沢孝一)
草原の鳥、ヒバリとセッカ
今、全国的に草原の鳥が減少しています。
その代表のヒバリとセッカは、かつては生息可能な草原が各地にあったのですが、ここ見沼田んぼでも少なくなってきて、徐々に個体数も減少しています。
現在見られるのは放棄された湿田の草丈20〜30cmの草原や畑地であり、植物遷移が進むと見られなくなることでしょう。
越川先生が話をしていると、後ろではセッカが盛んにさえずってくれました。まるでお約束のように…(写真:石井秀夫)
千葉県富津岬では、秋に両者ともに千葉県側から神奈川県側に多くの場合単独で渡っていくのが観察されており、長距離の渡りをしている可能性もあります。
ヒバリのさえずりは、空中でさえずる(揚雲雀)だけでなく、地上でもさえずります。危険な地上に巣を作るため、抱卵期間10日、巣内育雛期間10日と早く、卵の色も目立たない薄茶色をしています。
空中でさえずるヒバリ、揚雲雀(「季節の生きもの観察手帖」より)
畑で繁殖するヒバリ(「季節の生きもの観察手帖」より)
地上でさえずるヒバリ(「季節の生きもの観察手帖」より)

小鳥類のなかでも小さいセッカ(「季節の生きもの観察手帖」より)
富津岬から渡って行くセッカ(写真:越川重治)
セッカは小鳥類のなかでも小さく(10〜11g)、幼鳥がクモの網(ナガコガネグモ)にかかって抜け出せなくなった例もあります。
繁殖システムは一夫多妻で、雄の中には、18巣もの求愛巣を作り、11羽の雌とペアを組んだ例も知られています。しかしながら、危険な草原で繁殖するため、7割が繁殖に失敗してしまいます。
巣立った幼鳥が1か月もしないうちに繁殖する「幼鳥繁殖」という裏技も持っています。
変化しやすい環境で、巧みに子孫を残す作戦を、草原の鳥たちはとっているのですね。
(越川重治)
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謎の落とし物
一週間前の下見の折にこの橋の欄干の上で「謎の落とし物」を発見しました。その時の状況のままここに置きましたので見てください。動物が残したものには違いないのですが、何であるかについては居合わせた講師の間での話し合いでも決着はつきませんでした。この落とし物の正体について、みんなで推理してみましょう。
橋の欄干上に残された「謎の落とし物」
「謎の落とし物」の拡大
推理の手がかり
まず、推理の手がかりとなる情報を整理すると以下の通りです。
<落とし物の特徴>
太さ15mm、長さ50mm。赤紫色を帯びている。臭いはしなかった。植物のたねが数種類(単子葉植物と思われる不明種、クワなど)。赤紫色になっているのはクワの実の色で染まったため。
<落ちていた場所>
埼玉県さいたま市緑区大間木。海抜6m。周辺は水田や水田放棄地など。川にかかる木製橋の欄干(高さ1.2m)の上にあった。
これらの手がかりから「ハクビシンの糞」ではないかという意見と「カラスのペリット」ではないかという意見が出てきました。ペリット(ペレットともいう)とは消化されずに吐き出された塊のことです。それぞれの可能性について検討してみましょう。
「ハクビシンの糞」説
<根拠>
ハクビシンが食べてもおかしくないものが含まれている。太さも同程度である。ハクビシンなら細い欄干の上でも移動路として使える。
このあたりにはサルはおらず、テンもおそらくいない。テンやイタチの糞にしては太すぎる。
<反論・疑問点>
獣の糞なら臭いがするはず。
いや、臭いがしないのは雨水で洗われたせいだろう(そもそも、ハクビシンの糞はあまり臭わない)。
糞の場合にはクワの実の赤紫色がこれほど鮮やかには残らないはず。
橋を渡るのにわざわざ欄干を通るだろうか?
ハクビシンは果実を中心とした雑食性ではあるが、単子葉植物のたねまで食べるだろうか?
「カラスのペリット」説
<根拠>
臭いがしなかった。クワの実の赤紫色がよく残っている。カラスが好んで止まりそうな見晴らしの良い場所にあった。カラスが食べるものが含まれている。
<反論・疑問点>
カラスのペリットにしては大きすぎる(長すぎる)。標準的なサイズは太さ15mm、長さ30〜35mmほど。
<参考> ハクビシンの糞と思われるもの
太さ15mm。クワの種子だけが多数含まれていた。(町田市6月)
<参考>カラスのペリットと思われるもの
17×35mm。サクラの種子とシロテンハナムグリの外骨格が含まれていた。(町田市6月)
決着をつけるには
結論が出なくても、フィールドサインからこんな風にいろいろと推理してみるのも楽しいものですね。
決着をつけるとしたら手がないわけではありません。含まれているDNAを解析してみるのです。近年では動物の糞からDNAを抽出して解析した情報を生態調査に生かす手法が開発されています。
追 記
後日、自宅に帰ってサンプルを崩して内容物を精査してみました。
一番多く含まれていた単子葉植物のたねはオオムギ(六条大麦)でした。そのほかトウモロコシやソバのたね、甲虫(ゴミムシ類?)の残骸も含まれていました。どうやら麦畑で採食した後にここに来て「落とし物」を残していったようです(すぐ近くには麦畑は見当たりませんが)。
「謎の落とし物」に含まれていたもの。オオムギ(六条大麦)の果実(左)、クワの種子(中上)、ソバの果実(右上)、トウモロコシの果実(右中)、不明種子(右下)、甲虫(ゴミムシ類?)の外骨格(中下)
いろいろなものを少しずつ摘まみ食いしていることからも「カラスのペリット」説に分がありそうです。それにしても消化吸収できないようなものをなぜ食べるのかと思ってしまいますが、鳥には食べられそうなものは先ず食べてしまうという性向があるようです。
(中安均 本稿の写真も中安均)
番外:ムナカタハキリバチ
芝川に架かる橋の上で、中安先生と「謎の落とし物」を推理している間のことです。
たくさんのハチが次々に欄干に飛んできました。
よく見るとハキリバチのなかまのようです。
予定外ではありましたが、推理が一段落するのを待って、みなさんに声をかけてハキリバチを観察しました。
欄干にはあちらこちらに割れ目があり、そこをめがけてハチが戻ってきます。
「おなかが黄色いですよ。花粉をおなかにつけて運んでいるようですね」
「あっ、葉っぱをかかえています」
...など、みな興奮気味に声を出しています。
大勢の観客に圧倒され驚いたのか、運んできた葉をとり落としてしまうハキリバチもいました。
切り取った葉を運ぶムナカタハキリバチ雌。体長は15mm内外(写真:石井秀夫)
落としてしまった葉の切片(写真:石井秀夫)
ハキリバチのなかまは巣穴に切り取った葉を運んで巣をつくり、そこに花粉や蜜を蓄えて産卵します。葉は円形や半円形で、巣穴内の壁や育房の境にするわけです。
巣穴は自分で掘るか、または既存の穴を利用しますが、ここでは欄干の木の割れ目を利用しているんですね。割れ目を見ると、ハキリバチが巣作りのためにかじったのでしょう、木くずが見られます。
ハキリバチ科はミツバチ(ハナバチ)上科に属します。
社会生活はせず、単独行動です。多くは花粉と蜜を幼虫の餌として巣穴内に集めます。
花粉は腹部下面の褐色の毛につけて運ぶので、その時は腹面は黄色に見えます。
目の前でハキリバチが頻繁に花粉や葉を運ぶのを見るのは珍しい光景です。貴重なものが観察できました。
※ この日は残念ながらハチが専門の田仲義弘先生がお休みでした。そこで後日、田仲先生に写真を見ていただき、ムナカタハキリバチと同定していただきました。ありがとうございました。
(山崎秀雄)

観察会は、参加者の人数により、A,Bの2チームに分けて実施しますが、まったく同じものが観察できるとは限りません。こうしたフィールドにおける観察会の特殊性を理解していただきますよう、お願いします。自然観察大学としては、よりよい観察会のあり方についても工夫していきたいと思います。
参加いただいたみなさん、講師のみなさん、スタッフとして協力いただいたみなさん、ありがとうございました。
(レポートまとめ 事務局O)
私たちの観察会は、広大な見沼田んぼの南のはずれの、ほんの片隅でやっています。
見沼田んぼの全体は、次からPDFをダウンロードできます。
→https://www.pref.saitama.lg.jp/a0108/minuma/minumagm.html

2018年度 野外観察会
第1回の報告

第2回の報告

第3回の報告  
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