■ツバメ(唐沢先生)
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※東浦和駅に隣接した自転車置き場の中に、ツバメの巣がいくつも作られていました。
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自転車置き場の中にいくつもの巣が作られています |
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この周辺で最初にツバメが巣を造ったのは東浦和駅の半地下部分でしたが、カラスに襲われてしまいそこには巣を造らなくなりました。今は駅の隣の駐輪場に巣を造っていて、ちょうど抱卵しているようです。管理の人が4:30から夜の0:30頃まで窓を開けているので、ツバメたちが活動している間は出入りすることができます。現在この中には20〜30の巣があり、そのうち6つの巣では子育てが行われています。
千葉県市川市で1986年に調査した時には、市内にツバメの巣は250個確認されました。巣のある場所はおもに旧街道沿いや駅商店街でした。その後、同じく市川市で2011年に調査した結果では、巣が248個と、数はほとんど変わりませんでしたが、旧街道沿いや商店街での数が減り、新しい住宅地や郊外に多く見られるようになっていました。
ツバメの巣が昔に比べて減った、と言われることがありますが、ツバメが減ったわけではなく、実際は、巣を作る場所が移動したのだと言えます。(澁谷) |
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■キノコに集まる虫たち(山崎先生)
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アカハバビロオオキノコムシ |
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この切り株には、サルノコシカケの仲間のキノコが生えています。このようなキノコには、菌糸を食べる昆虫が集まってきます。
このキノコの裏には、アカハバビロオオキノコムシがいますね。この種のほか、ゴミムシダマシの仲間もよく観察されます。
これらの種は様々なキノコを食べますが、サルノコシカケの様な硬質菌は一年中見られますので、観察に向いています。また夜になると夜露でキノコがぬれて柔らかくなり食べやすくなるので行動が活発になります。そのため観察するのは夜の方が容易です。(脇本) |
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■カシワとキヅタ(植物)
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※巨大なカシワの樹にキヅタが絡みついているのですが、よく見ると途中で切断されています。
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この大木は柏餅でおなじみのカシワです。この大きな葉で餅を包むのですが、実は日本各地で様々な葉が柏餅を包むのに利用されています。西日本ではサルトリイバラの葉が多く利用されるほか、ニッケイ、シラカシ、ミズナラ、マテバシイなど様々な種が使われています。
そもそもカシワとは「炊葉」のことで食物を盛る葉という意味があります。そのため昔は皿代わりに使える大きな葉のものはカシワと呼ばれることが多かったのです。
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カシワとサルトリイバラの比較 |
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切断されても青々としたキヅタ |
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さて、このカシワの木にはキヅタのつるが絡みついているのですが、根元の方が切られているのに青々としています。なぜ枯れないのかというと、茎の各所から伸びる気根でカシワの樹に絡みつきながら、幹を流れる雨水を吸い上げたり、木肌の割れ目に付着した栄養分を取り入れているのです。このような生育方法を「着生」といいます。よく「寄生」と間違われますが、こちらは木の中に根を入れて師管から直接養分を奪うものを言います。
(西田)
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■ナミテントウ(平井先生)
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ケヤキの木の幹にオレンジ色の卵塊と孵化した幼虫が見られます。
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ナミテントウの交尾 |
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ナミテントウの卵塊 |
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この卵塊は10〜80個位の卵のかたまりで、1匹のナミテントウが生んだものです。ナミテントウの幼虫はアブラムシを食べますが、アブラムシがいなくなると卵、幼虫、蛹を食べたり、お互い共食いすることもあります。また、テントウムシの卵はアリなどに食べられてしまうことがありますが、かたまり全体を食べつくされることはなく、一部が生き残ることが多いです。
ナミテントウは成虫で越冬し、季節によって集まる場所が変わります。代表的なものでは最初はユキヤナギ、次にグミ、その後はケヤキやムクゲなどに集まり、その植物につくアブラムシを食べます。
ナミテントウの成虫の前翅の「星」の数や色は様々ですが、どれも同じ種です。(澁谷) |
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■ケヤキブチアブラムシ(松本先生)
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日本にはアブラムシが約700種類います。そのうち、特定の植物だけに寄生するのは全体の8〜9割で、寄生先にこだわらないのは12〜13種のみです。 |
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アブラムシは食物連鎖の下の方に位置し、口がセミのように針状になっていて、植物の師管液を吸います。
ほとんどの時期でアブラムシはメスだけで、単為生殖でメスの仔虫を産みます。年一回、秋のある一時期だけオスが発生し、メスと交尾します。さらにアブラムシには、同種の中で翅をもつ有翅虫ともたない無翅虫がいます。今ここで見られるのはケヤキブチアブラムシの成虫と幼虫で、成虫は翅のある有翅虫です。体より翅が長く、グライダーのように風に乗って移動・分散します。ケヤキブチアブラムシはこの時期はケヤキの葉にいますが、この後様々な植物に移動し、秋になるとまたケヤキに戻ってきます。翅を持たない無翅虫は、翅をつくらない分、太めで、幼虫を産む数が多いようです。(澁谷) |
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■シュロ(植物)
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このシュロの木はちょうど花が咲いています。幹の頂上に黄色い花の塊がつくのですが、花弁はありません。雌雄異株で、これは雄株です。シュロで特徴的なのが葉柄の形で、断面が三角形になっており、曲げる力に強い作りになっています。
シュロは昔は様々な形で人々に利用されていたため、庭によく植えられました。葉はハエ叩きや草履の材料として、樹皮の繊維は縄や海苔の養殖の際のノリ網、あるいは水の濾過に、そして丈夫な幹は鐘を突くための撞木に利用されてきました。
シュロの実はおもにヒヨドリに好まれ、彼らが果実を食べることによって種子が散布される「腹くぐり植物」の一つとして知られています。また樹皮の繊維はカラスが好んで巣材に使用します。(西田)
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■ネコハグモ(浅間先生)
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この壁には一見汚らしい、ボロボロの網が張られています。これはネコハグモというクモの網です。
背中の模様がネコに似ているということで名づけられました。クモの後ろにある白い丸いものは卵のうです。雌と雄がいますが、触肢が膨らんでいるものが雄です。
ネコハグモの網の糸は粘着力が非常に強く、捕まえた獲物を逃しません。このクモの糸はたくさんの細い糸でできており、それにえさの虫を絡ませて捕獲します。
普通は雨が降るとクモの網の粘着力は落ちますが、この糸は逆にゴミが洗い流され、粘着力が増すのです。まるでモップがゴミをくっ付けるようにえさを捕まえることができます。(深澤)
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ネコハグモの雌成体と卵のう |
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■帰化雑草の話(植物)
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道端の帰化雑草を観察する |
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舗装された道路の端や踏み固められたあぜ道などでは、在来植物が侵入する前に、帰化植物が侵入しているのがよく観察されます。
草丈が高く、うすピンクの花を咲かせているのはおなじみのハルジオンです。株が横に大きく広がり、葉が大きく裂けているのはアメリカフウロ。きれいなピンクの4弁花を咲かせているのがアカバナユウゲショウで、名前と異なり実際は朝早く花が咲き、夕方にはしぼんでしまうことが多いようです。種子のさやは濡れると開き、乾くと閉じます。
カタバミによく似た植物が見られますが、これはオッタチカタバミで、地下で横に伸びる根茎から縦に茎を伸ばし生育します。踏み付けには強くないようです。カタバミは地表面に茎を伸ばして広がっていき、また踏み付けにも強いです。(西田)
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■植物が身を守る知恵(中安先生)
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植物は動物のようには動けません。そのため、様々な方法を用いて食べられないよう身を守っています。
たとえばイタドリは、噛んでみると酸味を感じます。昔からスカンポという名前で呼ばれ、のどの渇きをいやすために使われていたりしたのですが、この酸味はシュウ酸という成分によるものです。シュウ酸はカタバミから初めて発見された物質で、動物にとって有害な成分を含んでおり、食害されるのを防ぐ役割があります。
また、葉柄の付け根のところを注意深く観察すると、アリが徘徊しているのを見ることができます。ここには蜜を出す腺があり、花以外の部分から蜜を出すので花外蜜腺と言われています。これを目当てにアリが動き回ることで、アリを嫌う他の虫たちから食べられるのを防いでいるのではないかと考えられています。(深澤)
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イタドリの花外蜜腺に集まるアリ |
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■見沼田んぼについて(唐沢先生)
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東浦和駅から見沼田んぼに来るときに坂を下りました。この一帯は斜面林に挟まれた低地で、かつてはため池として利用されていましたが、江戸幕府8代将軍の吉宗公によって新田開発が行われ、現在の地形が形作られました。
この見沼田んぼを含む低地には、中央に芝川、東と西に用水(見沼代用水)が流れています。用水から田んぼに引かれた水は、高低差によって芝川へと流れてゆき、やがて荒川に合流、東京湾へと流れてゆきます。その流れを利用した船による江戸、見沼間の往来が盛んに行われました。その名残が「通船堀」で、船運のために東西の用水を結び作られました。これを掘るとき、東西の代用水と中央の芝川との間に3mほどの高低差があったため、当時としてはとても珍しい閘門(こうもん)式運河として開通しました。(脇本) |
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