■ツバメ(唐沢先生)
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※5月の観察会でも話題になった、駐輪場のツバメを別の角度から調べてみます。 |
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「昆虫博士入門」を片手に解説される唐沢先生 |
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ツバメは人とのかかわりが深い鳥で、人家の近くに巣を造ります。人が近くにいる方が天敵に狙われにくいからです。
鳥類の調査で、糞を水洗いして何を食べているのかを見るというものがあります。
7月発売の山崎先生の新刊「昆虫博士入門(書籍紹介にリンク)」に、ツバメのひなの糞の調査結果が掲載されています。
ぜひそちらをご覧いただきたいのですが、要点について記すと 、 |
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主なものは、羽アリであった。 |
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アシナガバチ類が検出されなかった(学習により避けている可能性がある)。
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空を飛び交う昆虫(飛翔昆虫)のみを捕食している。
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などが分ってきました。 |
(深澤) |
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■つる植物(植物)
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※線路沿いのフェンスに絡みつくつる植物。前回にもまして生い茂っています。
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茎が巻きつくツルウメモドキ |
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巻きひげでつかまるヤブガラシ |
(「形とくらしの雑草図鑑」より) |
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植物には、他の植物よりも日光をより多く得るために、なるべく高くなろうとする性質があります。
体を作るエネルギーをなるべく少なくして、より高くなるための工夫の一つとして、他のものに寄りかかって高く登っていくというものがあります。これがつる植物です。 |
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つる植物の巻き方には、大まかに言って4つのタイプがあります。 |
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1. |
茎が巻きつく |
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アケビ・クズ・ツルウメモドキ・ヘクソカズラ・トコロ・ヒルガオ類などがこの仲間です。
蔓には右巻き(アケビ・ツルウメモドキなど)と左巻き(ヘクソカヅラ・クズ・トコロ・ヒルガオなど)がありますが、「右か左か」については議論があります。 |
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2. |
つかんで登る |
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ノブドウ、ヤブガラシなど巻きひげでつかまるものです。 |
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3. |
はりついて登る |
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吸盤や付着根ではりつきます。ツタ・キヅタが代表的なものです。 |
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4. |
引っかかって登る |
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ヤエムグラなどがあります。この仲間は茎に下向きのとげがついており、他のものに引っかかりやすい構造になっています。 |
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(西田、深澤)
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■ユウゲショウ(植物)
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先月の観察会でも少し紹介しましたが、ユウゲショウの花が咲いています。
このユウゲショウですが、名前からすると夕方または夜に咲く花のように思えてきます。しかし実際に観察したところ、朝の4〜5時頃開き、昼の間は開いていて、夕方になると閉じてしまうようでした。
またユウゲショウには面白い特徴があります。カラスノエンドウやゲンノショウコなどいくつかの植物では、果実が乾燥すると果皮が裂け、種子を飛ばします。しかしこのユウゲショウや、近縁種のヒルザキツキミソウは逆に湿ると果皮が裂け種子が散布されます。晴れて乾燥すると、果皮は閉じます。
(深澤)
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ここで、折からの雨が豪雨へと変わり、観察会は途中中止・解散となりました。
この後は有志のみで進めることとなりました。 |
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■ネコハグモとクサグモ(浅間先生)
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※前回の観察会では壁一面にネコハグモが網を張っていたのですが…。 |
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先月の観察会ではたくさん観察されたネコハグモですが、今はほとんどいなくなってしまいました。ボロボロの網は残っているので、外敵に襲われてしまったのだと考えられます。おそらくはヤモリが補食したのでしょう。
このネコハグモですが、幼体の時は真っ赤です。ネコハグモに限らずクモは何度も脱皮しながら成長していきます。その回数は、例えば大型の徘徊性クモであるアシダカグモでは9回以上にもなります。幼生のうちであれば足が取れても、脱皮すると再生します。
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雨の中、クサグモの棚網を観察する |
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棚網に潜むクサグモの幼体 |
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※ツツジの植え込みのところに移動して |
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この植え込みには、たくさんの棚網がありますね。この網はクサグモが張ったもので、粘らないタイプのものです。飛んできた虫が不規則に張り巡らされた網に当たり、棚状になっている部分に落ちたところに素早く襲い掛かります。この棚網は奥に管状の穴があり、今日みたいな豪雨の時や敵が来た時などはそこに逃げ込みます。今いるのはほとんどがまだ幼体のようですね。(深澤)
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■エサキモンキツノカメムシ(山崎先生)
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このミズキの木には、たくさんのエサキモンキツノカメムシがいます。お腹の下に孵化したばかりの幼虫を抱えている個体もいます。先週の下見の時にはまだほとんどが抱卵中でした。卵が孵るまでには10日位かかります。
生まれた幼虫はミズキの汁を吸って育ち、成虫になると他の植物の汁も吸うようになります。越冬は成虫で行います。
30年前はこの辺にはそれほど生息していませんでしたが、近年増えてきているようです。(深澤)
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■朽ち木の昆虫(山崎先生)
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※ドッグランの隣にぽつんと残された小さな雑木林は、昆虫たちの楽園になっていました。そのなかの立ち枯れに、たくさんの甲虫がいます。山崎先生が持ち帰り、詳しく同定して下さいました。 |
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キノコヒゲナガゾウムシ・黒色タイプと模様のあるタイプ |
(山崎秀雄) |
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セマダラナガシンクイ(ナガシンクイムシ科) |
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この科の昆虫はすべて成虫・幼虫ともに木材や竹材を食べます。ラワン材や竹材などから粉が出ていたらこの科の仕業のことが多いです。日本産のものは5mm前後の小型種が多いのですが、本種は例外的な大型種です。
過去の文献を調べてみたのですが、1998年時点では埼玉県の観察記録はありませんでした。千葉県の流山市、我孫子市では記録が残っていますので、関東周辺では人家周辺に生息していると考えられます。 |
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アオツヤキノコゴミムシダマシ(ゴミムシダマシ科) |
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本種はキクラゲなどのキノコ類に集まります。この個体は雄なので上反する角を持ちます。角は個体差が大きいようです。基本的にキノコの上のみで観察されます。体長は4〜6mmほどです。 |
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キノコヒゲナガゾウムシ(ヒゲナガゾウムシ科) |
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この科の昆虫はキノコ食、植物食、カイガラムシなどの動物食などバラエティに富んでいますが、本種はキノコ食です。今回観察されたのは黒色タイプのみでしたが、一般的には鱗片の模様があるタイプがよく観察されます。体長は5.5〜8mmです。 |
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ムツボシテントウ(テントウムシ科) |
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小型で、テントウムシ(ナミテントウ)によく似ています。カイガラムシを捕食する種で、翅の黒紋はそれぞれが独立しているもの、連続しているものなど個体差が大きいです。本種は雄が発見されておらず、単為生殖をすると考えられています。 |
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参加していただいた皆さん、講師の皆さん、本当にありがとうございました。
本年度最後の野外観察会は、9月28日(日)に開催予定です。良い天気になることを祈りましょう…。 |
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ひどい豪雨にもかかわらず、たくさんの方が残って熱心に観察されていました。 |
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(レポートまとめ 自然観察大学事務局 脇本哲朗) |
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