田安門付近で |
田安門の手前で、柵沿いに咲くタンポポを見ました。
花茎がよくのび、花も大きいですね。
くわしく観察すると、総苞外片が内片の約半分、角状突起がはっきりしています。典型的なカントウタンポポでしょう。
これは古くからの雑草、というより野草に近いタンポポといえますね。
田安門を入ると、すぐそばの植え込みに、またカントウタンポポが咲いていました。 |
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セイヨウタンポポ(左)と
カントウタンポポ(右)
カントウタンポポの総苞外片は反り返らず、先端に爪のような角状突起がある。長さは総苞内片の半分くらい
「新・雑草博士入門」より |
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カラスノエンドウとスズメノエンドウ
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ここにはほかにカラスノエンドウと一緒にスズメノエンドウもあります。
街なかでスズメノエンドウは少ないですが、ここでは両方が同時に見られるので、比較しやすいですね。 |
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カラスノエンドウ(左端)とスズメノエンドウ(右の3点)
「新・雑草博士入門」より |
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ニワゼキショウ
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ニワゼキショウが白い花をつけています。なかなかかわいい花ですね。
よく似たオオニワゼキショウというのもありますが、これはニワゼキショウのようです。
芝生の中に生えることが多く、抜くにはやっかいだとされています。
アヤメ科の植物ですが、アヤメやノハナショウブとくらべると、整った形の花です。
「花びら」と「がく片」がほとんど同じ形をしているため、まとめて花被片と呼ばれます。 |
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ニワゼキショウ。花の色には変化がある |
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ニワゼキショウとオオニワゼキショウの花の比較 |
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ルーペで詳しく見てみましょう。
3本のすじのある花被片と、5本すじの花被片がありますね。それぞれが3枚ずつ交互にあって、合計6枚になります。
3本すじが内花被片で「花びら」、5本すじが外花被片で「がく片」に当たるものということです。 |
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「花を下からみると、ルーペを使わなくてもすじがはっきり見えます」との声。なにげなく見ていた花もよく見ると新しい発見がある。 |
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この植え込みでは、ほかにノゲシ、ハルジオン、イヌムギ、ハルガヤ、カモガヤなどがあった。
ほとんどが帰化植物だった。 |
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各部が3を基本にした花式図。
内花被片と外花被片が記されている
(ニワゼキショウの写真も含めて「新・雑草博士入門」より) |
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武道館前の石垣で
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イチョウの巨木を囲むように石垣が積まれていて、その石のすき間にいろいろな草が生えていました。さながら「スキマの植物図鑑」(中公新書)です。 |
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石垣のすき間に生える雑草。コハコベ、オランダミミナグサ、ミチタネツケバナ、キュウリグサ、ホトケノザ、ノボロギク、トラノオシダなど。石垣ならではの、のびのびした形をしていた |
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チミチタネツケバナ
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面白いのはミチタネツケバナでした。
熟した果実に触れると、パッとたねが飛び散ります。果皮が一瞬にしてクルッとめくれ上がり、種子をはじき飛ばすのです。 |
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… 棒でつつくと見事にたねが飛び散った。
そのようすを見て、思わず拍手。 |
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たねを散らすタネツケバナ
ミチタネツケバナも、たねを飛ばすためのつくりは同じ
「新・雑草博士入門」より |
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ノボロギク
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ノボロギクの花は小さいですが、ルーペで見ると総苞のところに三角の小さな斑点があるのが分かります。マニキュアで飾ったようでかわいいですね。
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ノボロギクは明治時代の初めに渡来したといわれていますが、大正時代に目立ってきた草のようで「タイショウグサ」といわれたこともありました。
ほかにも文左衛門さんが増やした「ブンゼムグサ」だとか、唯治さんが使った肥やしから生えたので「タダジグサ」という名前も記録されています。
ノボロギクは季節に関係なく一年中花が咲きます。このことから「トキシラズ」という、ちょっとしゃれた方言名もあります。 |
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ノボロギクの花(花序)。総苞にある三角形の斑点がマニキュアのようでかわいい(写真でピンボケのところ) |
「新・雑草博士入門」より |
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樹林の小径で
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半日陰の小径は外の空き地とようすが変わります。
ムラサキケマン、オヤブジラミなどが目立ちますが、これらは雑草というより野草に近いといえます。
ここにはクサイチゴも多いですね。クサイチゴはキイチゴ属で、「草」という名前ですが低木です。
ここでは近年、フラサバソウがところどころで大繁殖しています。 |
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フラサバソウの群落 |
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シャガ
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樹林内のところどころにシャガの群落が見られますね。白い花はよく目立ちます。
この時期、各地の林内や林縁でよく見られます。
シャガは古い時代に中国から渡ってきた植物といいます。雑草とはいわないので、残念ながら「新・雑草博士入門」には載っていません。 |
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ニワゼキショウと同じアヤメ科の植物ですが、花のようすはかなりちがって見えます。
花を詳しく観察してみましょう。
各部が3を基本にしたつくりですが、以下の点でニワゼキショウと異なります。 |
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外花被片(がく片)3枚は内花被片(花びら)3枚より大きく、先端が細かく切れ込み、紫色と黄色の模様がありよく目立つ。 |
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柱頭は大きく3個に分かれて、先端が切れ込んで花びらのように見える。 |
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雄しべ3個は3個の柱頭の下に隠れているので、外部からは見えない。 |
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「なるほど。これからの時期、アヤメやノハナショウブが見られるので、花をよく見てみよう」
「今度の観察会で話題にしよう」… などと参加者のつぶやきがあった。 |
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スイバ
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この時期はスイバもよく目立ちます。
遠目で見て、穂の感じの違う2つのタイプがあるのが分かりますか?
スイバは、雄花と雌花を別の株につける雌雄異株(しゆういしゅ)です。
全体に赤みの強い穂をつけているほうが開花中の雌株で、緑色に見えるのが雄株です。 |
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スイバ。写真中央は雌花の穂。写真右は雄花の穂
「新・雑草博士入門」より |
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ルーペで見ると、雄花にはぶらさがった状態の葯があります。
開花中の雌花では、鮮やかな赤色のふさ状の柱頭が確認できます。これで穂全体が赤く見えるんですね。 |
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… ルーペで拡大した花の美しさに、驚きの声が上がる。 |
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少し白っぽく見えるのは、実になった雌株の穂です。3枚の翼をもった実が見られますね。
雄株のほうは、花が終わると落ちて軸だけになってしまいます。 |
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スイバは雌雄異株の単性花ですが、同じタデ科でよく似たギシギシ類の花は両性花です。
実にはどちらも翼があって似ていますが、スイバと違ってギシギシには粒体というものがあります。ギシギシ類はこの粒体で見分けることができます。 |
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スカンポ―スイバ派とイタドリ派
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ここには、スイバとイタドリがあります。
みなさんは「スカンポ」というと、スイバとイタドリとどっちのことを指しますか? |
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… みなさんから口々に答えが返る |
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スイバ派とイタドリ派に分かれましたね。
どちらも茎や葉をかむと酸っぱいということでつけられた方言名です。スイバは「酸い葉」とか「酸模」と記すこともあるくらいです。 |
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子どものころ友だちに「塩をつけると甘くなる」といわれて、やってみたら、はじめはなんとなく甘かったのが、そのうち酸っぱくなってかじるのをやめました。それ以来私はスカンポを味わっていません。 |
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千葉県の君津では、イタドリの太い茎は節があってタケのようだというので「タケスカンポ」といいます。それに対してスイバは「ウシスカンポ」とか「ウマスカンポ」といっているようです。 |
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千鳥ヶ淵の土手付近で
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昔の土塁を思わせる地形で、マツやムクノキ、スダジイなどの巨木があります。
ここでは、オドリコソウやカントウタンポポなどの昔ながらの野草が花を咲かせています。
オドリコソウは名前のとおり優雅な花で、街なかではほとんど見ることはなくなりました。皇居内にはあるのでしょうが、外苑の一角にがんばっているのは嬉しいですね。それが衰退しないような公園管理をしてほしいと思います。 |
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オドリコソウ
「新・雑草博士入門」より |
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最近の雑草、古い雑草、昔ながらの野草
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ミチタネツケバナなどは、まさに平成の雑草でしょう。
フラサバソウは昭和の雑草、ハルジオンは大正の雑草、オオイヌノフグリは明治の雑草といえます。
そしてここには、オドリコソウやカントウタンポポのような江戸城以来の野草も同居しています。
北の丸公園は面白いですね。 |
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